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行動経済学と金融リテラシー:「冷静な投資判断」へ向けて

 

立命館大学 経済学部 教授

井澤 裕司

要旨



金融リテラシーとは、金融に関する知識や情報を正しく理解し自らが主体的に判断できる能力である。金融リテラシー教育はその獲得を目指すのに対して、行動経済学は、現実の人間には限定合理性があるために、そのような能力の獲得には限界があることを前提としている。本稿ではまず、「資産配分パズル」を例として、両者の関係をどのように理解すべきかを議論する。続いて、その関係の理解のもとに、Kahnemanのシステム1によりもたらされるバイアスを適切にコントロールした「冷静な投資判断」が求めるのが現実的であることを論じる。さらに、システム1によってもたらされる主要な金融投資に関わるバイアスを展望したのち、行動経済学の成果の応用は、単にバイアスの存在を認識しそれを矯正するに止まらず、投資の目的や、金融業務のあり方、金融制度の設計、あるいは金融リテラシー教育のより良い手法開発にまで及ぶことを説明する。