『生命保険業のフロンティア生産関数の推計』


                          特別研究官(一橋大学教授) 中馬 宏之
                          特別研究官(京都大学教授) 橘木 俊詔
                          第二経営経済研究部研究官  高田 聖治

 本稿の目的は、フロンティア生産関数という概念を用いて我が国の生命保険会社の生産効率性を推
計し、それによっていわゆる「護送船団方式」が実効的に行われてきたかを検証することである。こ
こでは、deterministicフロンティア関数・stochasticフロンティア関数・Data Envelopment analy-
sis・パネル分析の4つの方法を用いて生命保険会社の効率性を推計し、その結果、得られた効率性
と会社規模等の変数との関係を調べた。

 その結果、

 1.効率性は会社間で大きな開きがある。

 2.規模の小さい数社は効率性が低く計測される。

   しかし、それらを除くと、規模の大きい会社ほどかえって非効率的な経営を行っている。

 3.効率性と会社形態(相互会社か株式会社か)はあまり関係がない。

 4.生命保険業には規模の経済性が存在する。

   ということが分かった。

 以上の推計結果から判断すると、護送船団式の公的規制が実効的に行われてきたと判断される。効
率性の低い小規模会社をつぶさないように保険料や配当の規制が行われてきたため、規模の大きい会
社はかえって非効率的な経営をしてきたのである。