『日本の所得、資産の不平等度−80年代後半について』


                         特別研究官(大阪大学助教授) 松浦 克己

 本研究では家計調査、肝蓄動向調査の個票等を用いて86−89年の日本の可処分所得、正味資産
等の分布、不平等度の推移を職業別、年齢階層別に分析する。

 本研究の特徴は、1.ジニ係数、アトキンソンの尺度、対数分散の複数の尺度で不平等度の実状を分
析したこと、2.一般世帯の可処分所得について独自の推計を行ったこと、3.実数資産に借地権を取り
上げた他、土地住宅について詳細な時価評価を試みたこと、4.資産について金融資産、純金融資産等
幅広く取り上げたこと、5.経時的な比較、国際比較、ローレンツ準順序の比較等幅広く行ったことで
ある。

 推計によれば、所得(勤労者世帯)、正味資産(各階層)について80年代後半に不平等度が拡大
し、かつて先進国の中で最も平等と言われた我が国の所得、資産の分布の平等性が揺らいでいること
が示される。