第二経営経済研究部長 原田 泰 研究官 上岡 孝一
1920年代の日本経済が困難な状況にあったことはよく知られている。その重要な要因として取 り上げられるのは、第1次世界大戦の活況からの調整が困難であったことと関東大震災による被害が 大きかったことである。以上の困難は、実物的なものである。本稿の目的は、これに加えて、金融政 策の混乱が20年代をさらに困難なものにしたことを示すことである。 本稿は、第1に名目GNPの成長率をマクロ的な利潤率ととらえ、マクロ的な利潤率が低かったに もかかわらず、利子率が高止まっていたことを示す。第2に、利子率の高止まりが、金融政策の誤り によって生じていたことを示唆する。すなわち、このような高い利子率は、日銀の中途半端な引締め 政策とリスクを恐れる銀行の貸し渋りと危ない銀行が無理やり高い金利で預金を掻き集めたことの相 乗的な効果である。この商い利子率が、20年代の経済をますます困難にした。