筑波大学助教授 米沢 康博 第三経営経済研究部主任研究官 河原 伸一
株式先物取引が現物市場に対して様々な悪影響を及ぼしているなどの議論が盛んになされ、その結 果、日経平均株価指数先物取引の廃止が決まった。 本ペーパーは、これら議論や政策決定上の正否を判断する一助となるよう、先物市場の意義および 機能について再検討を行ったものである。先物取引のニーズの源泉は、やはり現物市場の不完全性に 求めるべきであろう。我々もこの側面から、先物取引の機能をまず理論的に明らかにし、その下で、 我が国の株式先物取引導入が現物株価に与えた効果を実証的に分析することによって理論仮説を検証 する。 我々の主要な結論では、現物株式市場に逓増的な取引コストが存在する場合にも、先物取引が可能 となるならば、各投資家は現物での売買をゼロにすることによって、そのコストを負担せずに最適な ポジションを達成することができ、経済効率が高まることが理論的に立証でき、実際のデータからも このことが確認された。