第一経営経済研究部研究官 丸山 昭治
一般に金融機関の本質的業務は情報の生産であるといわれ、例えば銀行は、日常的な取引において 消費者(個人顧客)に関する様々な情報を収集・生産している。現在、金融業においては、銀行、証 券、保険などに分かれている業態規制の緩和が進行中であり、これらの複数業務を行うことによって 得られる費用節約効果は、一般に「範囲の経済性」と呼ばれる。従って本論文では、金融業における この範囲の経済性に焦点を当て、ある業務で得られた顧客情報を他の業務で活用する利点がどの程度 あるのかを、情報生産の観点から検証する。方法的には、顧客情報を業務量の増加関数としてモデル 化し、費用関数としては一般的であるトランスログ型を採用して計測した。結論的には、費用の補完 性の計量的分析の結果から、ある業務で得られた顧客情報は別の業務の費用を節約する一定の効果が あることをみることができた。