特別研究官(明治学院大学助教授) 三井 清 第二経営経済研究部研究官 河内 繁
我が国の中小企業は、産業構造の中できわめて重要な地位を占めている。しかし、中小企業には金 融面において信用割当を受けたり、大企業に比べ高い金利でなければ借りられないなどさまざまなハ ンディがあるといわれている。こうした状況に対応するため政策的に中小企業専門の政府系金融機関 が設けられている。本稿の目的は、こうした中小企業の資金調達の問題を次の2つの観点から検討す ることである。 1.中小企業の資金市場における情報の非対称性に着目し、資金調達面に注目しながら設備投資行動 について実証的に分析すること 2.政府系金融機関の融資が、情報の非対称性から生じるさまざまな問題に直面している中小企業の 資金市場でいかなる機能を発揮しているかを検討すること である。実際の分析は、資金供給方程式と投資需要方程式の連立方程式の解として設備投資や外 部資金コストが決定されるという浅子な(1991)の問題意識に従い、連立方程式モデルの同時 推定を行う。 推定から得られた結果は以下のとおりである。 1.限界資金コスト関数において内部資金の係数が有意にプラスであること、借入金利の係数が有意 にブラスとなっていることから、中小企業の資金市場において情報の非対称性が存在していること が確認された。また、政府系金融機関の融資が限界資金コストを引き下げ、中小企業への設備投資 を誘発していることが確認された。 2.投資の限界効率関数においては、内部資金の係数が有意にプラスとなっていることから、内部資 金が将来の収益性の代理変数となり設備投資を誘発していることがうかがえる。 3.過去の政府系金融機関の融資を考慮した設備投資関数の計測においては、政府系金融機関の融資 が中小企業の設備投資にプラスの効果をもつことが間接的ながら確認された。