『世帯主の定期外収入、同居世帯員収入の所得分配に与える影響
−勤労者世帯所得の不平等の要因分解』


                         特別研究官(大阪大学助教授) 松浦 克己

 近年世帯主でない女性の職場進出が進み、それが家計の収入に占める比率も高まり、家計の行動に
重要な影響を与え出している。また世帯主の収入でもボーナスや勤勉手当等の定期外収入が家計の消
費貯蓄行動に大きなインパクトを与えていることはつとに指摘されているところである。

 しかしその重要性にもかかわらず、これらが家計の所得分配に与える影響についてはほとんど分析
がなされていない。税制や社会保障などの所得分配政策等では、どの様な所得要因がどの程度影響す
るかを把握することは、その政策効果を見るための前提ともいえる。

 本研究では家計調査の個票データ(86−89年)を用い、我が国勤労者世帯について、世帯主の
定期外収入と世帯主以外の同居世帯員(配偶者等)の収入が、勤労者世帯所得の分配にどの程度の影
響を与えているかの要因分解を行う。分解の方法により係数に違いがでることに留意してジニ係数と
タイルの尺度の2つの方法で分解を行った。

 推計結果によれば世帯主の定期収入は所得の70%を占めるが、不平等に対する貢献度は55%で
ある。世帯主の定期外収入の不平等に対する貢献度は35%、同居世帯員収入は30%であり、これ
らが勤労者世帯の所得分配に無視できない影響を与えていることが示される。