『日本の資産の不平等の要因分析−土地保有の有無による2つの階層分化』


                         特別研究官(大阪大学助教授) 松浦 克己
                          特別研究官(京都大学教授) 橘木 俊詔

 86−89年の家計調査・貯蓄動向調査を用い我が国の家計資産の分布とその不平等の要因分解を
行うと共に、遺産の家計資産に占める割合の推計を行った。考察の対象とした資産は、土地・借地権、
住宅、3つの金融資産と住宅のための負債及びその他の目的のための負債の7種である。

 それによれば、89年において土地・借地権を保有する世帯の正味資産は約1億円であるが非保有
世帯は7百万円にとどまり、両者は隔絶していることが示された。資産の不平等の要因の90%が土
地・借地権によって説明される。土地・借地権の保有と住宅ローンの有無を併せて分析することで遺
産の家計資産に占める比率の推計を行い、家計資産の約40%が遺産であるという試算を得た。また、
土地・借地椎の取得が遺産によるか否かで家計の資産分配に大きな差がでることも示される。

 これらの推計結果を基に今後の政策課題を示す。