『銀行の規制体系−金融システムの安定政策とその限界−補論:公的金融と効率性の追求、経済システムの安定』


                         特別研究官(大阪大学助教授) 松浦 克己

 本稿では、戦後日本の金融システムの安定=信用秩序の維持という観点を中心にした規制体系を分
析し、その構造と問題をとりあげる。具体的には、戦後銀行行政は個別銀行の defalut を防ぐこと
による金融システムの安定政策が中心におかれたが、1.そのために参入(企業数の制約)、生産能力
(店舗数の規制)、生産技術(新規サービスの開発規制、業際規制)について広範囲な規制政策がと
られてきたこと、2.銀行・規制当局(大蔵省・日本銀行)と預金者・投資家の著しい情報の非対称性、
ディスクロージャーの少なさは、預金者等に対して大蔵省の銀行監督行政が銀行の支払能力の保証す
る意味をもたざるを得なかったこと、3.個別銀行の default を必ず防ぐという行政とディスクロー
ジャーに対する消極性が、銀行経営に対するモラルハザードと非効率性を生み出す要因であること、
4.経済構造の変化や技術革新さらに銀行の国際進出などにより、従来型の銀行行政に限界をもたらし
つつあること、5.競争制限的規制行政が競争手段としての公的金融を生み出したこと、について論じ
ている。