1994年9月:No.1994―17

『資産価格変動による家計部門への資産効果に関する実証分析―多重共線性の回避と構造変化の検定による消費関数の分析―』

                                主席研究官付研究官 宮原 勝一
 これまで、家計部門への資産効果に関する実証研究では、Keynes型の消費関数から弾性値を求め、消費支出への増減寄与度を推定する方法がとられてきた。この場合、可処分所得や金融資産を説明変数とした消費関数を推計するのが一般的な方法であるが、これらの変数は変数間の相関関係が強いため、多重共線性を考慮した消費関数の推計が必要であると考えられる。本稿では、まず、従来の分析手法で消費関数を推計し、説明変数間の多重共線性の検定を行った。次に、多重共線性の存在を確認し、多重共線性を回避した消費関数から、資産価格の変動が消費支出に与える影響を推定した。

 推計の結果、OLSで推計された消費関数にはいくつかの説明変数と株価との間に多重共線性が存在し、係数推定値が不安定であることが示された。更に、多重共線性を回避する方法として、リッジ回帰による消費関数の推計を行った結果、以下のことが示された。

(1)1980年から93年にかけて、所得の弾性値0.41、株価の弾性値は0.10と安定した推計結果が得られた。

(2)原データを使用した消費関数では、90年4―6月期を境に構造変化があったと判断される。

(3)構造変化の前後における係数推定値の変化をみると、定期性預金、株式の弾力性は資産価格の上昇期に比べ下落期の方が大きい。

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