1994年12月:No.1994―22
特別研究官(明治学院大学助教授) 三井 清 第二経営経済研究部研究官 竹澤 康子 研究官 河内 繁長期的な効率性の観点から社会資本の水準をどのように選択すべきかを考える際には、社会資本の民間部門の生産性に与える影響を検討することが重要である。しかしながら、長期的な効率性の観点から社会資本の問題を検討する場合にも、短期的な観点からの社会資本と民間資本との関係を無視することはできない。
本稿では日本のマクロ・データを用いて実証分析をおこない、短期的には公共投資が民間投資をクラウド・アウトするものの長期的には社会資本の蓄積が民間資本の限界生産性を高めることを通じて民間資本をクラウド・インするというAschauer(1989)とほぼ同様の結果が得られた。また、高度成長期においてはクラウド・アウトがほとんど生じていなかったのに対して、低成長期になるにしたがってクウラド・アウトの程度が強まっているという結果が得られた。