1995年7月:No.1995―4

『システム投資の目的と効果』

                         情報通信システム研究室研究官 渡辺 仁哲
                                    研究官 藤井 啓造
 本年度の研究テーマは「システム投資の目的と効果」であるが、現在の経営環境の変化を考える時、上記テーマをストレートに取り上げても環境要因の影響が大きく、結果を判断することは困難である。逆に結果から考えた時、企業経営にとって最も大切なものは何か、今元気な企業は他とどこが違うのか、元気な企業経営行動からその要因となるものを分析すると共に、情報がそのためにどう生かされているか、何にこれから投資すればよいのか考えてみることも重要である。
調査のフレームワーク
 本調査では、生命力のある企業を“環境対応能力”を継続的に保持している企業と定義づける。必要多様性の法則に従えば、組織の保有する多様性が高ければ高いほど、環境多様性を吸収でき、それだけ生命力のある組織だということになる。
 多様性を次の6つの要素で測定する。これが分析的フレームワークになる。
 (1)独自性・先進性、(2)共有性・浸透性、(3)弾力性・開放性
 (4)異質性・変異性、(5)迅速性・的確性、(6)自律性・自立性
 企業の“たくましさ”は、逆境をはねかえすパワーであるとも言える。そのパワーを情報パワー、ニッチパワー、ヒューマンパワーという3つのパワーの複合的組み合わせで考え、これらのことを総合的に評価すると、次のような仮説の設定が可能となろう。
仮説:情報パワー、ニッチパワー、ヒューマンパワーともに高水準を維持できる企業は生命力のある、たくましい企業である。
 次の3つのパターンが確認された。
  (1)トップ主導型の環境指向行動企業
  (2)メンバー主導型の組織指向行動企業
  (3)トップ・メンバー共に“たくましさ”維持に寄与している企業
 以下に示す行動指針に該当する項目が多い組織であればあるほど、生命力あふれた企業であると位置づけることができよう。
 生命力あふれた企業の行動指針
・誘導・誘発型トップが存在している。
・組織が環境変化動向に対して敏感である。
・環境変化の内容を組織が理解し、行動に迅速に転化している。
・組織成員のそれぞれが独自の、存在感のある思考力・行動力をもっている。
・経営資源の中では、技術・ノウハウ・文化・価値共有などの“見えざる資源”が明確に存在している。
・組織内部に潤沢な経営資源は必ずしもなくてもよい。
・既存の社会通念や価値観などに重きをおかない。 ・経営戦略を構築する時の制約条件が比較的少ない。
・ニッチ市場の探索を恒常的に行い、ある程度の成功を収めている。
情報システムの役割
 情報システムは強力な武器でもあるが、仕組みを変更するリスクは高い。
→中堅・中小企業の強みは、だめなら捨てるリスクは少ないことである。
 情報化投資については、現在インフラ及びハード/ソフトを使う教育投資はあるが、コミュニケーションの基本教育や意思決定者のコーディネーターとしての養成が重要なのではないか。