郵政研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ No.1996−10

女性の雇用と家計の貯蓄行動:直接効果と間接効果
滋野由紀子*
松浦 克己**

1996.10.25

* 郵政省郵政研究所客員研究官(大阪大学経済学部助手)
** 郵政省郵政大臣官房専門調査官兼郵政研究所



女性の雇用と家計の貯蓄行動:直接効果と間接効果

滋野由紀子
松浦克己

要旨
 女性の雇用が家計の貯蓄率や貯蓄額とどのような関連にたつかの実証分析は乏しい。
 本論文では女性の雇用労働者の選択という二値的な選択と家計の貯蓄率や貯蓄という連続変数の決定がどのようになされているかを、treatment effectモデルで分析する。その際ライフステージごとに家計の選好が異なることに配慮して、年齢階層別に実証する。
 推計によれば、女性の雇用と家計の貯蓄行動は同時に決定されていることが明らかにされる。また貯蓄方程式に含まれる雇用に関する変数の直接効果より、雇用関数と貯蓄関数の関係から間接的に生み出される効果が大きく、両者は正の相関関係を持つことが明らかにされる。

Female Labpr Supply and Saving Behavior:
Direct and Indirect Effects

Yukiko Shigeno
Katsumi Matsuura

Abstract
 There are few empirical studies which have analyzed the relationship between female labor supply and the household savings rate/amount of savings. Using the treatment effect model this paper examines how the continuous variables of the household savings rate and the amount of savings and the binary variable of female labor supply are determined. Given that household choices will be different depending on the stage of the life cycle we estimate the model by age brackets.
 Our results establish that female labor supply and household saving behavior are determined simultaneously. Further, the indirect effect, which is caused by the relationship between the labor supply and saving functions, is greater than the direct effect, which is caused by the labor variables in the saving equation.



女性の雇用と家計の貯蓄行動:直接効果と間接効果

96年10月
大阪大学経済学部

郵政省

滋野由紀子

松浦 克己

1 目的

 高齢化・少子化の進展や経済の低成長の中で、日本経済は様々な課題を抱えるようになっている。その一つは公的年金制度の設計の歪みから現役世代の老後生活が、年金に余り期待できなくなったことである。そのため、家計は老後生活を支えるために一層の貯蓄を行う必要に迫られている1)
 第二の課題は女性の雇用労働力の増加の必要である。この女性の社会進出とそれによる雇用労働力率の長期的上昇は、労働力不足を解消すると共に女性の能力活用という点で期待されている。
 近年の経済成長率の低下や長期継続雇用の不安定化という雇用慣行の変化、あるいは男性(世帯主)の失業増加は、家計の恒常所得の低下や収入に占める恒常所得比率の低下につながる可能性がある。その場合配偶者(妻)は恒常所得の低下を補うために、就業することも予想される(付加的労働効果)。
 このように既婚女性の就業は、家計の貯蓄率と相互に関連する可能性がある(小野[1985]参照)。たとえば夫の所得の低下で、子供の教育資金のための貯蓄や老後生活保障の目標貯蓄額の達成が困難になったとすれば、妻が就業することでそれを補おうとするかもしれない。逆に妻が就業すればその所得の一部は家計にとり恒常所得と認識され、その相当部分は消費に回ることがあろう。あるいは妻の所得が変動所得と認識されれば、そのかなりの部分は貯蓄に回るであろう。
 金融資産(それによる非勤労所得)の増加は、余暇が正常財であれば所得効果によって余暇需要を増大させ労働供給が削減される(妻の就業確率が低下する)ことが指摘されている。他方、樋口[1980]が1974年の全国消費実態調査の統計的検定を通じて明らかにしたように、貯蓄目的(持ち家取得計画)がある場合は金融資産に対する選好が強くなり、それが所得に対する選好度を高めて妻の就業確率を増加させることもある。
 女性の就業と家計の貯蓄にはこのように密接な関係があるが、その本格的な分析はまだ少ない2)。そこで本論文では、女性の就業と家計の金融貯蓄率や貯蓄額との関連がどうなっているかを実証することとしたい。それによって高齢化社会に急速に向かいつつある中で、今後の女性の就業の増加や貯蓄に関する問題を考えてみたい。
 就業と貯蓄の関係を考えるとき、妻の就業による所得が貯蓄に直接与える効果と何らかの生活目的が就業に影響しそれがさらに貯蓄行動にも影響する間接効果の二つの効果を考慮する必要がある。この二つの効果を取り上げたのが本論文の第一の特徴である。
 金融貯蓄を考えるときそれは貯蓄率と貯蓄額の二つがある。現在の消費に対し一定割合の将来消費を考えれば貯蓄率が重要である。将来の消費水準を考えれば将来の消費に充当される貯蓄額が重要であろう。このように将来の消費との関係を考えれば両者はともに意味を持つであろう。それで本論文でも両者について実証を試みる。これが本論文の第二の特徴である3)
 本論文の構成を簡単に述べる。第2節で本論文で用いるデータと分析対象家計について説明する。第3節で計量分析の方法について触れる。第4節で実証モデルの導出と具体的な定式化を行うこととする。そこでは年齢階層別に分析する意味についても触れる。第5節では推定結果とそこから導かれる間接効果と直接効果について解説する。第6節では簡単なまとめと課題について触れる。


2 データと分析対象について

 本論文で主に用いるデータは、家計調査と貯蓄動向調査の個票(1987〜1989年)である4)
 (既婚女性の就業)
 家計調査でいう「世帯」は生計を一にするものを指している。「世帯主」は主たる稼得者である。世帯主又は配偶者が女性である家計を取り上げる。世帯主に関しては性別は問われていないので、女性が世帯主である場合も含まれている。配偶者がない場合(母子家庭等)も含まれている。本分析ではこれらの既婚女性が対象となる5)
 家計調査では各世帯員の就業の有無や就業している場合の職種等を知ることができる。また各々の性別、年齢、世帯主との続柄等の属性を知ることができる。これにより既婚女性の雇用状況をある程度把握することができる。本論文では既婚女性が常用労働者、民間職員、官公職員である場合を雇用形態での就業者として捉えることとした(同居する母親あるいは同居する子供の女性が就業していることもあるが、該当サンプルが極めて少ないこともあり捨象した)。
 (所得・資産など)
 世帯の年収、可処分所得、および世帯員毎の収入については家計調査で報告されている金額を用いた。
 資産は貯蓄動向調査から得られる金融資産、負債を考慮した。金融資産、負債については貯蓄動向調査の報告額をそのまま用いた。これに加えて住居が持ち家の場合はその敷地面積に公示価格を乗じて得られる土地価格、および建物面積に建築価格を乗じてそれに減価償却を行ったうえでデフレータをかけた建物の時価を実物資産として考慮した6)。なお、所得や資産にかかる金額については85年基準の都道県別物価指数で実質化してある。
 貯蓄行動と密接に関するものとして住宅問題がしばしば指摘される。家計調査では住居については持家、借家、公団等借家、給与住宅、借間に分けられている。その情報も用いた。
 (勤労者世帯への限定)
 家計調査で、世帯の可処分所得や世帯員毎に世帯主の所得と配偶者の所得の別を知ることができるのは、勤労者世帯に限られる。自営業等の世帯については世帯の粗収入を知りうるのみである。本研究では女性の就業関数を取り上げることおよび既婚女性の収入が貯蓄に与える影響を考察することから、各々の所得を知りうる勤労者世帯に分析対象は限られる(自営業世帯の場合は、実際問題として、世帯主と配偶者は共に働いて所得を上げていることが多いであろう。また労働時間の裁量という点で雇用者と自営業世帯はかなり異なるであろう)。


3 計量分析方法について

 本論文では、既婚女性が就業するかどうかという二値選択モデルと、家計の貯蓄率や貯蓄額という連続変数を被説明変数としかつ就業に関する変数を説明変数とするモデルを同時に分析する。それにより両者の誤差項の検定を通じて相互関連を分析する。その点について計量分析上の配慮が支払われる。
 ある行為を選択するかしないかを

で表したとする。他方、Ciを説明変数に含む連続変数の方程式が

で表されたとする。
 両者の関係を書き換えると

であり、両辺を引くと

となる。明らかにuiとεiは相関を持つことになる。したがって
 1)式をprobitで推計し、2)式をOLSでそれぞれ推計する場合、2)式の推計はバイアスを持つことになる(Willis and Rosen[1979]、Barnow et al[1981]、Maddala[1983]、Greene[1993])。
 ここで貯蓄率・貯蓄額のようなyは全てのサンプルについて観察されるので、yの推計に当たっては全てのサンプルを用いることになる(MaddalaはC=1のグループをtreatment group、C=0のグループをcontrol groupとしている。全てのサンプルを用いて分析することをGreeneはtreatment effectとしている)。
 このようなときの計量分析としては、誤差項が二変量正規分布に従う最尤法によるsample selectionモデルと、1)式の推計から得られる累積密度確率を2)式の操作変数に用いる操作変数法とが知られている。本実証では、誤差項の相関を通じた間接効果を検証するために、sample selectionモデルによった7)


4 実証モデルの導出について

 ここでは実証モデルの考え方と年齢階層別の取り上げ方について触れることとする。

1) 就業関数と貯蓄率関数・貯蓄額関数のとらえ方

 女性の就業(労働市場への参加)についてはkillingsworth and Heckman[1986]、樋口[1991]、大沢[1993]が包括的なサーベイを行っている。
 就業と貯蓄の関係については、樋口[1980]が既婚女性の就業を金融資産・実物資産(持家)保有と住宅取得のための貯蓄目的と関連づけて分析している。さらに住宅取得目的のための貯蓄との関係でYoshikawa and Ohtake[1989]が女性の就業と貯蓄にHeckmanの2段階推計法を用いて検証している。本研究のモデルもこれらを参照している。
 特に本論文では、女性の就業と貯蓄率・貯蓄額、資産の関連に焦点を合わせる。金融資産については余暇を正常財と仮定して、非勤労所得の増加(金融資産の増加)は所得効果を通じて女性の就業確率を低下させると議論されることが多い。あるいは貯蓄目的から就業への因果関係も明示的に考慮されないことがある。しかし、金融資産に関してはそのように先験的に仮定することは、先行研究に示されるように必ずしも観察される事実と相いれないことがある8)。また樋口[1980]が示唆するように、理論的にも貯蓄目的が金融資産への選好を高め就業確率と所得の増加につながるように家計が行動することも考えられるからである。

 (就業関数)

 女性の就業は、就業と非就業、就業する場合でも雇用者と自営業、さらに雇用形態についてもフルタイムとパートタイムに分けられる。本論文では雇用者であるかどうかという基準によって分析している。前述の通り世帯員毎の収入を得るために分析対象を勤労者家計に限定しているので、勤労者家計であって雇用形態の女性の就業を取り上げることになる(具体的には常用労務者、民間職員、官公職員を取り上げている。臨時日雇い労務者は除いてある)。フルタイムかパートタイムかは区別していない。
 女性が雇用労働者となるかどうかの決定に関しては、先行研究が示すように夫の所得がまず影響するであろう(ダグラス・有沢の法則)9)
 資産(金融資産、負債、実物資産)についても影響することが考えられる。家計の金融資産(その生み出す収益)は女性の労働市場への参入については多くの議論が想定するように、女性の側からみて夫の固定収入の増加と同様に所得効果を通じてその就業確率を低下させるかもしれない。あるいは貯蓄目的等(持ち家取得計画等)により金融資産に対する選好が強ければ、逆に妻の就業確率を増加させる可能性も考えられる。
 負債は可処分所得の低下により、妻の就業確率を高めるであろう。実物資産(土地、建物)は家賃負担がないので所得を上げる必要性が相対的に低下し、妻の就業確率を低下させるかもしれない。しかし逆に買換え計画等があれば妻の就業確率は高まるかもしれない。
 樋口[1980]、Yoshikawa and Ohtake[1989]が示唆するように、貯蓄目的、とりわけ住宅取得計画が女性の就業に影響する可能性がある。計画を持つ家計では、所得に対する選好が強くなり女性の就業確率を高めることが予想されるからである。
 育児が女性の就業に大きく影響することも知られている。特に末子が幼児の場合はその影響が大きいであろう。
 わが国の家計は三世代同居(extended family)の多いことが一つの特色である。それは女性の家事負担の軽減による就業の促進効果を持つ反面、逆に介護負担等で抑制効果を持つこともある。世帯人員数も家族内の分業や家事負担で女性の就業に影響することが予想される。

 (貯蓄率関数・貯蓄額関数)

 本論文では金融貯蓄に関する貯蓄率関数と貯蓄額関数を取り上げる10)
 女性の就業との関係を考えるとき、女性が就業していればそのための支出額(外食や被服等)は増加するであろう。それは貯蓄額に影響する可能性がある。また現在の消費のために就業したりあるいは女性の収入が不安定であればそれは貯蓄額だけでなく貯蓄率にも影響するであろう。そこで本論文ではこれらの点から貯蓄率関数と貯蓄額関数の二つを取り上げる。ただし以下の説明は主に貯蓄率関数について行う。
 貯蓄率関数では、世帯の可処分所得と妻の就業がまず考慮される。世帯の可処分所得は逆数で取り上げる。
 妻の就業を取り上げるのは、男性の就業と女性の就業とでは家計にとって恒常所得の位置付けやライフタイム・インカムの程度が異なることがあり得るからである。たとえば男女では退職年齢や賃金カーブが異なるので、その年の収入に男女のライフタイム・インカムは比例しないであろう。言い換えればこれは、男性の収入と女性の収入とで家計の貯蓄行動に差をもたらすかどうかを把握し、女性の就業と貯蓄率との相互関係を分析しようというものである11)。
 具体的には女性の雇用ダミーと世帯員の勤労収入に占める妻の収入比率(に雇用ダミーを乗じた)の二つの形を別々に取り上げることとする。
 貯蓄目的は、貯蓄動向調査では住宅取得計画の有無しか調査されていないこともあり、それで代表させる。なお貯蓄目的としてはこれ以外に予備的動機や老後生活保障等がある。これはデータ上は知りえないので直接取り上げることはできない。しかしこれらの貯蓄目的が女性の就業に影響しているならば、3)、4)式あるいは3)、5)式の誤差項は相関するであろう。これが間接効果をみる一つの意味である。
 家計が目標とする金融資産所得比率を持っているならば、純金融資産の所得に占める比率も考慮する必要がある。貯蓄率に影響する可能性がある世帯人員数等の家計の属性も考慮される。

2) 具体的な定式化

 以上みてきた理論的な要請とデータ上からの制約から、具体的な定式化は以下によることとした。

 3)式と4)式、3)式と5)式をSample selection modelで推計する(貯蓄率関数)。貯蓄額(save)関数についても説明変数は4),5)式と同様である。

3) 年齢階層別の違いをみる意味

 家計が生涯を通じた効用を最大化するとしても、そのライフステージ毎の選好は異なることがある。そのライフステージによる選好の違いをみる方法としては大きく2つある。1つはライフステージに関するダミー(たとえば年齢階層ダミー)を説明変数に加えることである。この場合は他の説明変数の係数は、年齢階層を通じて一定と仮定することとなる。
 もう1つの方法はライフステージ毎(年齢階層毎)に推計することである。この場合は他の説明変数の効果が、年齢階層によって異なることがあることを認めるものである。いずれの方法がより妥当であるかはアプリオリに定まるものではない。しかし女性の就業に関しては、年齢階層でかなり異なる動きが示されることは観察される事実である。
 たとえば次に示すようなケース・選択肢はかなり一般的であろう。

@ 学校卒業時 フルタイムで働く
A 結婚・出産時 現勤務先での就業を継続
現勤務先を退職 パートタイム労働者となる
労働市場から撤退(専業主婦)
B 子育てが一段落したとき 従来よりの勤務先での就業を継続
労働市場に復帰する フルタイム労働者となる
パートタイム労働者となる
労働市場に復帰しない

 この各段階において夫の所得や家計の資産、あるいは親の同居などの家計の属性等の影響の度合いが一定であるとは、考えづらい。たとえば子供が幼児であれば育児に対する選好は高いであろう(就業の機会費用は高い)。中高年になれば子供の教育費や老後資金の確保のために所得に対する選好が高くなるかもしれない。そこで本研究では年齢階層毎に分析を行うこととした。
 また年齢階層別の分析は、女性の就業促進の政策効果を考える上でライフステージによって異なる手段が必要かどうかをみるためにも有益であろう。たとえば20歳代の女性では育児支援策が重要であるが、40歳代の女性では職業復帰の訓練がより有益であるというようなケースである。


5 推計結果について

 1) 概要

 推計結果は表1〜表5に掲げるとおりである。
 貯蓄率関数と貯蓄額関数の各々についてkoyouを取る場合(関数T)とkoywavrを取る場合(関数U)が報告してある。
 貯蓄率関数についてはρのt値から、45〜49歳の年齢階層を除き、両者は相関関係に立つことがうかがわれる。貯蓄額関数については全ての年齢階層についてρは1%水準で正の値をとり、正の相関関係にある。この二つの結果は女性の就業と家計の貯蓄行動が関連していること、特に明示的に定式に含まれていない予備的動機や老後生活保障等の貯蓄目的等が誤差項の相関に現れていることを示唆している。
 貯蓄率関数と貯蓄額関数、あるいは各々のTとUについて有意に符号が逆転しているケースはない。その意味で結果は一応安定しているといえよう。
 また各変数の符号や有意性は、年齢階層によってかなりのばらつきが見られる。これはライフサイクルによる選好の違いが現れたと理解することができる。

2) 年齢階層ごとの動き

 ここでは主に就業関数と貯蓄率関数の推計について説明する。就業関数と貯蓄額関数については、前者の推計との違いを中心に解説する。

 (25〜29歳の階層)

 就業関数で、末子年齢ダミー(3歳以下)が1%水準で有意に負というのは先行研究とも一致する(表1参照)。給与住宅ダミーが1%水準で負というのは、付加給付による世帯所得の事実上の増加を反映しているのであろう。この年齢階層で注目されるのは、住宅取得計画ダミーが概ね10%水準で有意に正となることである。この年代ではいわゆる住宅の一次所得であろうから、それが就業確率を高める方向に働いたと考えられる。他の年齢階層ではこの貯蓄目的に関しては統計的に有意な結果は得られておらず、この階層の特徴として注目される。
 貯蓄率関数で、世帯所得の逆数が1%水準で負ということは理論予想と整合的である。貯蓄率関数のkoyou、koywavrは1%水準で負である。雇用形態での就業の直接効果は負であり、誤差項の相関を通じた間接効果とは逆に働いていることが示唆される。給与住宅ダミーが有意に正ということは、所得の高まりを反映していよう。
 就業関数と貯蓄額関数の推計でパターンUでは、就業関数の(男性)世帯主収入が10%水準で有意に負というのは意外である。これはこの階層の結婚経過年数が短いことを反映しているのかもしれない。また貯蓄額関数では実物資産が5%水準で有意に正となっている。

 (30〜34歳の階層)

 就業関数と貯蓄率関数の推計では、就業関数における男性世帯主の所得は1%水準で負であり、理論予想とも整合的である(表2参照)。金融資産額が5%水準で有意に正ということは、樋口[1980]が示唆したように何らかの貯蓄目的のために金融資産(所得)を余暇より選好する層があることを示すものである。
 世帯人員が1%水準で有意に負である反面、母親の同居ダミーは1%水準で正である。これは母親以外の世帯人員は既婚女性の家事負担となるが、母親の同居は家事の分担を通じ女性の就業を促進していることを示唆している。
 貯蓄率関数では二つのパターンの推計結果は共通している。koyou、koywavr何れも有意に負であり、ここでも直接効果はマイナスである。純金融資産の収入に対する比率も有意に負である。これは純金融資産比率が増加すれば、目標を達成する(近づく)ことで貯蓄率が低下することを示唆している。
 就業関数と貯蓄額関数の推計も大きく変わるところはないが、ただし就業関数の金融資産額は符号は正であるものの、統計的に有意な結果は得られなくなっている。貯蓄額関数のパターンUではkoywavrは統計的には有意ではなく、このケースではマイナスの直接効果はみられない。

 (35〜39歳の階層)

 就業関数と貯蓄率関数による推計では、就業関数における(男性)世帯主の収入は1%水準で負である(表3参照)。負債額は10%水準で負である。この階層で注目されるのは世帯人員数が10%水準で正であることである。この項目が統計的に有意に正というのはこの年齢階層のみであり、その点で注目される。他方で母親の同居ダミーは有意な結果は得られていない。末子の年齢ダミーは、3,6,9歳で有意に負であり、育児の機会費用の高さが示唆されている。
 貯蓄率関数で注目されるのは、koyouが10%水準で有意に負、他方koywavrが5%水準で有意に正となることである。この年齢階層では直接効果をみた場合、単に女性の就業だけを見ると家計の貯蓄率は低下するように見えるが、しかし女性の収入比率まで考慮するとそれが高い(多くはフルタイムや長時間パートであろう)ほど家計の貯蓄率も高められることがうかがわれる。
 就業関数と貯蓄額関数の推計では、就業関数について負債は統計的に有意な結果は得られていない。貯蓄額関数ではkoyou(パターンT)ダミーは統計的に有意ではない。反面koywavr(パターンU)は1%水準で有意に正である。貯蓄額を考えた場合は負の直接効果はうかがえず、正の効果がみられることが注目される。また純金融資産比率は符号は負であるもの統計的に有意な結果は得られていない。

 (40〜44歳の階層)

 就業関数と貯蓄率関数の推計では、就業関数で有意な変数は(男性)世帯主・負債額・末子(3歳)ダミー・母親同居ダミーである。給与住宅ダミーについて有意な結果は得られていない(表4参照)。この変数が非有意というのはこの年齢階層のみであり、その点で注目される。
 貯蓄率関数ではkoyou、koywavrはいずれも統計的に有意な結果は得られていない。これから直接効果はうかがえない。またこの階層でも純金融資産比率は有意に負となっている。
 就業関数と貯蓄額関数の推計では、就業関数で末子の年齢階層が全て統計的に有意ではないことが示されている。貯蓄額関数ではkoyou(パターンT)は非有意であるがkoywavr(パターンU)は1%水準で正であり、就業と貯蓄額に正の直接効果があることが示される。

 (45〜49歳の階層)

 この年齢階層の推計結果は、他の年齢階層に比べてやや傾向に差があるようである(表5参照)。就業関数と貯蓄率関数(パターンT)と就業関数と貯蓄額関数(パターンT)は、多重共線関係等により計算が収束しなかった。ここではパターンUについて報告する。
 就業関数と貯蓄率関数Uの推計では、ρのt値から両者の相関はみられない。これに対し、就業関数と貯蓄額関数Uでは両者は関連している。
 就業関数と貯蓄額関数Uの推計結果をみると、就業関数では(男性)世帯主収入が有意に正の値をとっている。この点はなお解明を要するかもしれない。また末子の年齢ダミーは何れも有意な結果は得られていない。これはこの年齢階層では子供の育児が女性の就業の主たる障害ではないことを示唆している。
 貯蓄額関数Uについては、koywavrは1%水準で有意に正である。ここでも直接効果が正であることが示されている。

 (年齢階層ごとの異同点)

 以上年齢階層ごとに見てきたが、若干の異同点についてまとめてみたい。
 就業関数では、末子(特に幼児)は30歳代までの女性の就業確率を抑制するが、40代後半ではうかがえない。母親の同居は概ね女性の就業を促進する方向に働く。フリンジベネフイットの性格を持つ社宅等の給与住宅は女性の就業確率を低下させる傾向にある。男性世帯主の収入や金融資産額は年齢階層によって異なる方向に働いている。金融資産については、妻の側から見て固定収入の増加であり余暇が正常財ならば労働供給を減少させるという仮説が、一律には当てはまっていないことである。この点も家計の選好がライフサイクルで異なることがあることを示唆している。
 貯蓄率・貯蓄額関数では、世帯の可処分所得(逆数)は何れも有意に負である。純金融資産比率や給与住宅も概ねマイナスであり、これらは予想と合致する。純金融資産比率が多くのケースで有意に負ということは目標貯蓄水準があるということなのかもしれない。他方koyouやkoywavrはその符号や統計的有意性は年齢階層によってかなり異なっている。この点でもライフサイクルによる差を考慮する必要があることが示唆されている。

 3) 直接効果と間接効果

 女性の就業と家計の貯蓄行動の間には、貯蓄関数(貯蓄率,貯蓄額)に含まれる就業に関する変数を通じた直接効果と、就業関数の誤差項と貯蓄関数の誤差項が相関を持つことから生じる間接効果の二つのルートが関連する。就業と貯蓄の関係の総合的な判断には直接効果と間接効果を併せて考慮する必要がある12)
 具体的には何らかの外生的なショックにより、女性の雇用就業率が変化したとき、家計の貯蓄率や貯蓄額がどのくらい変化するかを判断するには、この二つの効果を考慮しなければならない。これにより将来の女性の就業と家計の貯蓄の変動の効果を捉えることができよう。ここでは45−49歳の階層について貯蓄率関数Tと貯蓄額関数Tが収束しなかったこともあり、各々パターンUについてみてみる(koywavrが統計的に有意でないケースや45−49歳の貯蓄率関数についてρが統計的に有意ではないケースもあるが、比較の意味で併せて報告する)。
 外生的なショックによっても家計の属性が変更しないと仮定する。そのとき外生的なショックは方程式1)の撹乱項uの期待値の変化に現れる。その変化を凾浮ニする。誤差項間に正の相関があることから生じる間接効果は、ρσ凾浮ノよって計算される。
 たとえば25−29歳の階層のサンプルの就業率は19.8%であった。これが何らかの外生的なショックで10%(20%)上昇したとする。そのときの凾浮ヘ、当初の雇用就業率19.8%と上昇後の29.8%、39.8%に対応する正規分布の確率変数の差で示される。19.8%に対応するその値は−0.85である。これが雇用就業率が29.8%に上昇したときは−0.53である。39.8%に上昇したときは−0.26である。これから各々の差は0.32と0.59となる。
 直接効果は、β’koywavr・凾汲盾凾盾浮ナ求められる。ここで凾汲盾凾盾浮ヘkoyou就業率の変化幅である。
 これから直接効果と間接効果の合計である平均貯蓄率の変化は

となる。このようにして求めた結果が表6に掲げてある。
 いずれのケースも間接的効果が直接的効果より大きく、雇用就業率が10%(20%)上昇したとき平均貯蓄率は4−5%(8−10%)上昇することがうかがわれる。平均貯蓄額では12−27万円(22−57万円)増加することがうかがわれる。外生的ショックによって家計の属性が変化しないと仮定していることに留意する必要はあるが、就業と貯蓄の間の間接効果の考慮の必要性の大きさをこれは示している。


6 結語

 本実証では、既婚女性の雇用形態での就業と家計の貯蓄率の関連を分析した。多くのケースで両者が関連すること、特に間接効果の重要性を示した。また就業、貯蓄の各々について年齢階層別に異なる動きがみられることを示した。
 長期的に見た少子化の中での労働力不足や、年金制度の歪みからくる老後生活保障の緊要性を考えれば、女性の就業促進と家計の貯蓄率の上昇はわが国にとって大きな課題である。その際就業と貯蓄率の上昇には、その直接の効果の他に両者が関連することからくる間接効果を促進するような政策が望ましいといえよう。その意味で、女性の就業や所得に対する選好を抑制する配偶者控除や扶養者手当のあり方は再考を迫られているといえよう。またライフサイクルに応じた政策の展開も求められる。
 しかし、本論文に残された課題も多い。
 第一は、女性の就業形態をより厳密にとらえることである。というのは雇用者でもフルタイムとパートタイムあるいは大企業・公務員と中小企業とでは、所得の安定性や、家計にとって恒常所得と認識される割合に違いがあることも想定されるからである。そのためにはmulti logit modelのsample selection modelの採用を考える必要があろう。
 第二は、金融貯蓄率にとどまらず、帰属家賃等を考慮した総貯蓄率にモデルを拡張することである。貯蓄目的が家計の就業や貯蓄行動に影響するときは、金融貯蓄(金融資産)だけではなく、総貯蓄にも影響する可能性があるからである。
 第三は、女性の賃金率を考えることである。これは第一の問題とも関連するが、女性が働くかどうかの選択には単に市場賃金・留保賃金が影響するだけではなく、それと併せて労働供給時間の選択(パートで何時間働くか等)も女性の就業形態の選択に影響することが予想されるからである。


1) 年金制度の問題についてはたとえば小口他[1994]参照。貯蓄の目的についてのサーベイはHorioka[1990]参照。
2) 松浦,滋野[1996]は妻の就業と家計の貯蓄率の関係を分析しているが、そこでは貯蓄率から就業への影響に焦点が合わされていた。高山他[1996]は貯蓄関数に就業ダミーを入れてOLSで推計を行っている。樋口[1980]は74年の全国消費実態調査を用い分散分析を行っている。
 なお老後生活目的の貯蓄の推計についてはHorioka[1988]がある。
3) 金融貯蓄を取り上げた分析として、たとえば石川[1987]がある。
4) 家計調査や貯蓄動向調査の特色と問題点については松浦,滋野[1996]参照。
5) 女性の就業と家計の貯蓄行動の相互関連をみるという本論文の目的から、既婚女性のいない家計は分析から除かれる。
6) 借地やマンションの扱いについては松浦,滋野[1996]参照。
7) このような例としてIshikawa[1988]がある。
8) 高齢者世帯に関する分析であるが、Ishikawa[1988]は就業状態が貯蓄率の内生変数であることを報告している。
9) 夫の所得の安定性や恒常所得比率も影響するであろう。たとえば夫の所得が景気循環等で不安定であれば、妻は家計所得のリスクを低減させるために働きにでるかもしれない。それを職業の種類や勤務先の企業規模で代理することも考えられるが、本稿では直接は取り上げない。
10) 貯蓄としては実物投資(土地や住宅の売買)と金融貯蓄を加味した総貯蓄率の推計がある。本論文では直接は取り上げない。なおIshikawa[1988]は高齢者についてであるが、総貯蓄率と金融貯蓄率の分析で大きな差はなかったと報告している。
11) ただし、本研究ではフルタイム就業とパートタイム就業を区別していないので、女性の勤労所得の安定性を十分には捉えきれていない可能性があることには留意する必要がある。
12) 以下の間接効果の計算方法等についてはIshikawa[1988]参照。


表1 年齢階層別就業率関数と貯蓄率関数(1)

25〜29歳
妻の就業関数
Cons −0.878E−1
(−0.45)
0.610E−1
(0.30)
−0.679E−1
(−0.35)
0.399E−1
(0.19)
setai 0.589E−3
(1.04)
0.816E−3
(1.39)
0.890E−3
(1.46)
0.121E−2
(1.84)
money −0.108E−3
(−0.60)
−0.827E−4
(−0.44)
−0.872E−4
(−0.49)
−0.839E−4
(−0.43)
loanabs 0.174E−3
(1.38)
0.183E−3
(1.51)
0.109
(0.72)
0.130E−3
(0.93)
real 0.571E−5
(0.39)
0.318E−5
(0.21)
0.860E−5
(0.65)
0.875E−5
(0.62)
shataku −0.329***
(−2.75)
−0.467***
(−3.38)
−0.386***
(−3.39)
−0.562***
(−4.00)
child3 −0.364***
(−3.10)
−0.507***
(−4.12)
−0.349***
(−3.06)
−0.519***
(−4.14)
child6
child9
child12
child15
number −0.838E−1
(−1.25)
−0.856E−1
(−1.24)
−0.987
(−1.52)
−0.989E−1
(−1.41)
chichi −0.790E−3
(−0.003)
0.988E−1
(0.41)
−0.572E−3
(−0.002)
0.657E−1
(0.27)
haha 0.305E−1
(0.13)
0.516E−1
(0.24)
−0.704E−1
(−0.31)
−0.625E−1
(−0.27)
hkeikaku 0.363*
(1.77)
0.381
(1.72)
0.337
(1.61)
0.408
(1.78)
貯蓄率関数 貯蓄額関数
T U T U
Cons 43.93***
(13.6)
41.73***
(12.3)
129.3***
(17.3)
125.8***
(15.9)
indisp −0.438***
(−13.1)
−0.437***
(−12.3)
−1.740***
(−25.9)
−1.758***
(−26.4)
koyou −14.02***
(−6.22)
−29.66***
(−6.36)
koywavr −15.59***
(−3.53)
−20.51***
(−2.07)
nfty −0.529
(−0.94)
−0.466
(−0.87)
−1.310
(−0.85)
−1.145
(−0.78)
real 0.234E−3
(0.97)
0.171E−3
(0.72)
0.939E−3**
(2.33)
0.890E−3**
(2.41)
shataku 2.983
(1.73)
4.551***
(2.59)
10.52**
(2.42)
14.67***
(3.32)
hkeikaku 1.906
(0.54)
1.790
(0.50)
3.369
(0.37)
2.608
(0.29)
number −0.370
(−0.55)
−0.159
(−0.23)
0.211
(0.13)
0.748
(0.45)
ρ 0.879***
(29.6)
0.790***
(20.1)
0.887***
(37.0)
0.779***
(19.9)
σ 20.94***
(24.2)
19.86***
(26.9)
51.93***
(40.7)
48.48***
(43.8)
log−likelihood −2962.4 −2981.4 −3507.3 −3522.3

注:( )内は漸近的t値。***は1%水準、**は5%水準、*は10%水準で有意。
  N=701、positive=139。

表2 年齢階層別就業率関数と貯蓄率関数(2)

30〜34歳
妻の就業関数
Cons 0.632**
(2.48)
0.778***
(3.02)
0.740***
(2.93)
0.934***
(3.55)
setai −0.283E−2***
(−3.88)
−0.278E−2***
(3.83)
−0.297E−2***
(−3.85)
−0.316E−2***
(−3.97)
money 0.179E−3**
(1.98)
0.186E−3**
(2.02)
0.106E−3
(1.17)
0.942E−4
(0.98)
loanabs 0.641E−4
(0.81)
0.853E−4
(1.11)
0.367E−4
(0.44)
0.795E−4
(0.89)
real −0.250E−6
(−0.03)
−0.983E−5
(−0.37)
−0.108E−6
(−0.01)
−0.327E−5
(−0.33)
shataku −0.240**
(−2.02)
−0.285**
(−2.27)
−0.219
(−1.90)
−0.248**
(−2.03)
child3 −0.243
(−1.82)
−0.348***
(−2.64)
−0.211
(−1.64)
−0.304**
(−2.38)
child6 −0.442E−1
(−0.35)
−0.139
(−1.03)
0.211E−1
(0.17)
−0.567E−1
(−0.44)
child9
child12
child15
number −0.143**
(−2.50)
−0.153**
(−2.57)
−0.146***
(−2.66)
−0.158***
(−2.76)
chichi −0.163
(−0.79)
−0.164
(−0.75)
−0.972E−1
(−0.51)
−0.111
(−0.54)
haha 0.634***
(4.46)
0.728***
(4.79)
0.578***
(4.11)
0.682***
(4.50)
hkeikaku −0.164E−1
(−0.09)
−0.841E−1
(−0.42)
−0.102
(−0.56)
−0.186
(−0.94)
貯蓄率関数 貯蓄額関数
T U T U
Cons 45.67***
(14.3)
44.60***
(13.7)
154.5***
(16.0)
146.6***
(14.7)
indisp −0.424***
(−12.5)
−0.417***
(−11.9)
−2.134***
(−22.6)
−2.062***
(−21.0)
koyou −11.84***
(−5.67)
−25.91***
(−4.22)
koywavr −14.51***
(−3.33)
0.721
(0.06)
nfty −1.322***
(−3.64)
−1.311***
(−3.51)
−2.999***
(−2.83)
−2.593**
(−2.43)
real 0.998E−4
(0.95)
0.138E−3
(1.34)
0.208E−3
(0.54)
0.343E−3
(0.88)
shataku 3.121
(1.86)
3.930**
(2.33)
9.650
(1.78)
12.06**
(2.22)
hkeikaku 0.466
(0.17)
1.535
(0.55)
8.646
(1.02)
12.30
(1.45)
number −1.422**
(−2.53)
−1.455**
(−2.54)
−2.876
(−1.61)
−2.732
(−1.48)
ρ 0.866***
(31.3)
0.778***
(23.5)
0.891***
(40.3)
0.811***
(27.0)
σ 20.26***
(25.3)
19.21***
(28.0)
61.89***
(43.5)
58.20***
(45.5)
log−likelihood −3259.2 −3272.8 −3993.8 −4003.7

注:( )内は漸近的t値。***は1%水準、**は5%水準、*は10%水準で有意。
  N=780、positive=151。

表3 年齢階層別就業率関数と貯蓄率関数(3)

35〜39歳
妻の就業関数
Cons 0.718***
(3.55)
0.801***
(3.93)
0.552***
(2.95)
0.708***
(3.64)
setai −0.300E−2***
(−7.67)
−0.302E−2***
(−7.59)
−0.265E−2***
(−6.76)
−0.276E−2***
(−6.92)
money 0.184E−4
(0.66)
0.186E−4
(0.67)
0.137E−4
(0.65)
0.133E−4
(0.61)
loanabs 0.110E−3
(1.71)
0.126E−3
(1.95)
0.471E−4
(0.86)
0.780E−4
(1.38)
real −0.138E−4**
(−2.03)
−0.137E−4**
(−2.12)
−0.161E−4***
(−2.98)
−0.162E−4***
(−3.22)
shataku −0.230**
(−2.17)
−0.246**
(−2.32)
−0.197**
(−2.10)
−0.225**(−2.37)
child3 −0.985***
(−6.25)
−1.003***
(−6.36)
−0.913***
(−6.12)
−0.966***(−6.44)
child6 −0.557***
(−4.20)
−0.574***
(−4.28)
−0.502***
(−4.22)
−0.550***(−4.44)
child9 −0.454***
(−3.47)
−0.470***
(−3.54)
−0.397***
(−3.31)
−0.441***(−3.55)
child12 −0.162
(−1.29)
−0.171
(−1.34)
−0.162
(−1.44)
−0.189
(−1.63)
child15
number 0.969E−1
(1.81)
0.957E−1
(1.78)
0.105**
(2.15)
0.107**
(−2.15)
chichi 0.415E−1
(0.27)
0.414E−1
(0.27)
0.284E−1
(0.22)
−0.275E−1
(0.21)
haha 0.107
(0.88)
0.118
(0.97)
0.375E−1
(0.35)
0.509E−1

(0.48)

hkeikaku −0.203E−1
(−0.13)
−0.156E−1
(−0.10)
−0.195E−1
(−0.14)
−0.252E−1
(−0.17)
貯蓄率関数 貯蓄額関数
T U T U
Cons 46.02***
(16.1)
43.13***
(15.1)
156.3***
(17.4)
143.4***
(16.4)
indisp −0.484***
(−17.0)
−0.464***
(−16.0)
−2.402***
(−30.8)
−2.285***
(−28.9)
koyou −2.742
(−1.92)
−6.502
(−1.34)
koywavr 7.083**
(2.09)
55.88***
(5.74)
nfty −0.418**
(−2.12)
−0.338
(−1.71)
−0.847
(−1.10)
−0.346
(−0.44)
real 0.289E−3***
(3.98)
0.302E−3***
(4.33)
0.122E−2***
(5.80)
0.126E−2***
(6.37)
shataku 2.232
(1.33)
3.242
(1.95)
9.055
(1.71)
13.81***
(2.68)
hkeikaku 0.801
(0.32)
1.102
(0.44)
5.535
(0.69)
7.488
(0.94)
number −1.811***
(−3.69)
−1.747**
(−3.56)
−4.158***
(−2.66)
−3.831***
(−2.47)
ρ 0.768***
(20.9)
0.755***
(19.9)
0.847***
(34.0)
0.825***
(29.9)
σ 20.28***
(27.5)
20.00***
(27.7)
69.25***
(36.8)
66.83***
(35.6)
log−likelihood −4422.3 −4422.5 −5451.1 −5440.8

注:( )内は漸近的t値。***は1%水準、**は5%水準、*は10%水準で有意。
  N=1010、positive=418。

表4 年齢階層別就業率関数と貯蓄率関数(4)

40〜44歳
妻の就業関数
Cons 0.792***
(3.79)
0.844***
(4.08)
0.597***
(2.80)
0.710***
(3.35)
setai −0.215E−2***
(−5.45)
−0.211E−2***
(−5.38)
−0.176E−2***
(−4.29)
−0.179E−2***
(−4.45)
money 0.439E−4
(0.88)
0.431E−4
(0.88)
0.296E−4
(0.63)
0.318E−4
(0.70)
loanabs 0.163E−3**
(2.51)
0.161E−3**
(2.43)
0.144E−3**
(2.53)
0.136E−3**
(2.26)
real −0.555E−5
(−1.13)
−0.576E−5
(−1.18)
−0.393E−5
(−0.91)
−0.446E−5
(−1.04)
shataku −0.475E−1
(−0.33)
−0.488E−1
(−0.34)
−0.437E−1
(−0.32)
−0.499E−1
(−0.37)
child3 −0.782
(−1.74)
−0.777
(−1.76)
−0.755
(−1.27)
−0.767
(−1.39)
child6 −0.249
(−1.42)
−0.252
(−1.44)
−0.208
(−1.28)
−0.230
(−1.42)
child9 −0.157
(−1.09)
−0.156
(−1.07)
−0.126
(−0.93)
−0.147
(−1.03)
child12 −0.516E−1
(−0.49)
−0.459E−1
(−0.43)
−0.379E−1
(−0.39)
−0.377E−1
(−0.38)
child15 0.831E−1
(0.88)
0.819E−1
(0.87)
0.829E−1
(1.00)
0.739E−1
(0.87)
number −0.281E−1
(−0.59)
−0.317E−1
(−0.66)
−0.148E−1
(−0.32)
−0.212E−1
(−0.45)
chichi 0.384E−1
(0.33)
0.494E−1
(0.42)
0.157E−1
(0.16)
−0.299E−1
(0.29)
haha 0.202
(1.83)
0.208
(1.89)
0.176
(1.73)
0.193
(1.89)
hkeikaku −0.669E−1
(−0.27)
−0.737E−1
(−0.30)
−0.522E−1
(−0.21)
−0.777E−1
(−0.31)
貯蓄率関数 貯蓄額関数
T U T U
Cons 40.09***
(11.2)
37.63***
(10.5)
162.3***
(12.9)
148.8***
(12.1)
indisp −0.483***
(−11.9)
−0.465***
(−11.3)
−2.781***
(−20.0)
−2.656***
(−18.9)
koyou −1.945
(−1.13)
−5.217
(−0.80)
koywavr 5.144
(1.28)
47.74***
(3.78)
nfty −0.199E−2***
(−4.25)
−0.194E−2***
(−4.20)
−0.516E−2***
(−3.15)
−0.503E−2***
(−3.13)
real −0.203E−4
(−0.26)
−0.556E−5
(−0.07)
0.876E−4
(0.31)
0.167E−3
(0.59)
shataku −1.342
(−0.52)
−0.744
(−0.30)
−2.093
(−0.23)
1.087
(0.13)
hkeikaku 3.229
(0.67)
3.293
(0.67)
8.915
(0.48)
10.46
(0.55)
number −1.636***
(−2.61)
−1.600**
(−2.54)
−5.584**
(−2.50)
−5.291**
(−2.35)
ρ 0.863***
(29.5)
0.864***
(29.3)
0.909***
(50.5)
0.908***
(50.3)
σ 22.37***
(22.4)
22.35***
(22.2)
82.95***
(33.1)
82.05***
(32.6)
log−likelihood −4422.3 −4422.5 −4300.6 −4295.4

注:( )内は漸近的t値。***は1%水準、**は5%水準、*は10%水準で有意。
N=807、positive=390。

表5 年齢階層別就業率関数と貯蓄率関数(5)

45〜49歳

    妻の就業関数

Cons 0.348
(1.61)
0.359
(1.75)
setai 0.434E−3**
(2.49)
0.541E−3***
(3.66)
money −0.145E−3***
(−2.76)
−0.167E−3***
(−3.29)
loanabs −0.119E−4
(−0.16)
−0.418E−4
(−0.66)
real −0.313E−5
(−0.71)
−0.225E−5
(−0.47)
shataku −1.115***
(−4.99)
−1.063***
(−4.98)
child3
child6 −4.405
(0.00)
−4.434
(0.00)
child9 −0.359
(−1.08)
−0.296
(−0.93)
child12 −0.200
(−0.99)
−0.252
(−1.40)
child15 −0.679E−1
(−0.54)
0.873E−4
(0.001)
number −0.679E−1
(−1.17)
−0.878E−1
(−1.58)
chichi 0.156
(0.63)
0.300
(1.49)
haha 0.249E−1
(0.17)
0.191E−1
(0.16)
hkeikaku 0.326
(0.84)
0.316
(0.83)
貯蓄率関数 貯蓄額関数
T U T U
Cons 36.96***
(5.55)
128.6***
(5.44)
indisp −0.333***
(−7.42)
−2.173***
(−13.3)
koyou
koywavr 15.97**
(2.46)
79.71***
(3.43)
nfty −0.588
(−0.66)
−1.654
(−0.43)
real −0.431E−4
(−0.30)
0.455E−4
(0.09)
shataku −18.34
(−1.74)
−96.57***
(−3.22)
hkeikaku −0.559
(−0.06)
2.173
(0.05)
number −1.882
(−1.56)
−8.837
(−1.76)
ρ 0.577
(1.60)
0.928***
(25.0)
σ 22.06***
(6.17)
110.9***
(15.9)
log−likelihood −1812.8 −2225.8

注:( )内は漸近的t値。***は1%水準、**は5%水準、*は10%水準で有意。
N=642、positive=344。

表6 就業行動に対する外生的ショックの貯蓄率及び貯蓄額に与える効果

年齢階層 対応する凾 直接的効果
=β2’koywavr
×凾汲盾凾盾
間接的効果
=ρσ×凾
平均貯蓄率
(平均貯蓄額)の変化
10%上昇 20%上昇 10%上昇 20%上昇 10%上昇 20%上昇 10%上昇 20%上昇
貯蓄率に与える効果
25〜29歳 0.32 0.59 −0.083 −0.166 5.022 9.251 5.014 9.234
30〜34歳 0.32 0.59 −0.082 −0.164 4.780 8.813 4.698 8.649
35〜39歳 0.26 0.51 0.060 0.121 3.924 7.697 3.984 7.818
40〜44歳 0.25 0.52 0.054 0.108 4.826 10.038 4.880 10.146
45〜49歳 0.26 0.54 0.170 0.340 3.309 6.872 3.479 7.212
貯蓄額に与える効果
25〜29歳 0.32 0.59 −0.109 −0.218 12.079 22.271 11.970 22.053
30〜34歳 0.32 0.59 0.004 0.008 15.111 27.860 15.115 27.868
35〜39歳 0.26 0.51 0.124 0.247 17.633 28.103 17.757 28.350
40〜44歳 0.25 0.52 0.502 1.003 18.617 38.723 19.119 39.726
45〜49歳 0.26 0.54 0.849 1.697 26.759 55.577 27.608 57.274


参考文献