証券業の生産関数と効率性

松浦 克己

 要旨
 金融資本市場の発達のために,証券業における競争の促進と効率化が求められている。80年代と90年代の証券業の確率的フロンティア生産関数を分析し、各証券会社の効率性を計測した。そこでは証券業でも相当な相対的な効率性の格差があり、かつ拡大している。他方では最大手に伍す中堅証券会社もある。各々の経営資源に応じた経営の推進が、企業の生き残りと市場の活性化につながることが示唆される。


証券業の生産関数と効率性

1 今なぜフロンティア分析が必要か

1.1 市場改革の必要性

 80年代後半以降,日本の証券市場と証券産業は多くの荒波にもまれてきた。

 この期間市場はバブルによる株価高騰からその崩壊,エクィティ・ファイナンスの隆盛からその著しい縮小の道をたどった。証券業も未曾有の好況から大幅な人員の縮小へと波乱に富んだ時期である。その間に勧角証券やユニバーサル証券など複数の証券会社の経営が悪化し,銀行などの支援を受けることとなった。

 このような経緯は日本の資本市場や金融市場,あるいは金融機関の経営に多くの問題があるのではないかという懸念を生んだ。

 懸念の一つは銀行,証券,生保会社等の金融機関の生産がどの程度効率的に行われているのかということである。日本の金融行政や取引慣行が業界内や業際間の利害調整をもっぱらにして金融産業の効率性を阻害し,そのために証券業においても資源配分や生産技術の効率にロスを発生しているのではないかという疑問である。

 今一つの懸念は,国際市場におけるオリジネィティング等の状況をからみて,わが国の金融産業は資産運用や資金供給サービスに革新を生み出すことができず市場のニーズに応えていないのではないかということである。

 このような問題意識から,金融資本市場の改革の必要性が繰り返し指摘されてきた。しかし金融資本市場の改革は経済(産業)の好調期には今は順調であるとしてしばしば閑却され,問題が大きくなって取り上げられることが多かった。しかしその時は,問題の大きさ故に倒産や失業等を恐れて本格的に取り組まれることは少なかった。

 このような問題の先送りが金融資本市場の弱体化のみならず,資金の出し手や取り手のニーズに応えないことで日本経済の低迷をもたらしているのではないかという反省から,金融資本市場の改革に向けてビッグバンが提唱されている。この改革の実現により金融産業の効率化と,金融資本市場の革新による経済の活性化が期待されている。

 金融産業の効率化のためには,金融資本市場の担い手である金融産業(銀行,証券,保険など)の効率性がどうなっているのかを把握することが必要である。その上で非効率が何に起因するのかの分析が望まれる。

1.2 先行研究

 このような分析には,非効率があるかどうかそしてその程度はどのくらいかを検証するフロンティア関数の実証が有益である。しかし,わが国における金融産業のフロンティア関数の分析,あるいは非効率性の検討は意外と少ない。最近では,銀行業に関する粕谷[1989],堀/吉田[1995],生保産業に関する中馬/橘木/高田[1993],米山/宮下[1995],岩本/古家[1996]を挙げることができる程度である。

 粕谷[1989]は都銀・地銀・相銀の各業態毎に75年度上期ー86年度上期のパネルデータをwithin推定量で費用関数の推計を行っている。堀/吉田[1995]は業態毎に費用関数は共通であるという検定を行ったうえで,都銀・地銀・第2地銀について82ー91年についてパネルデータで確率的フロンティア費用関数を推計している(両者はいずれもトランスログ型の費用関数を想定している)。

 中馬/橘木/高田[1993]は90年の生保会社のクロスセクションデータを用いて,決定論的フロンティアモデル,確率的フロンティアモデルおよびDEAの各々の方法を用いて生産関数を推計している。米山/宮下[1993]は75ー89年のパネルデータを用いた確率論的フロンティア生産関数の推計とフィクスド・エフェクド・モデルの推計を併せて行っている。その会社ダミーと時間のダミーで非効率性の相対的な順位を見ている。岩本/古家[1996]も79ー94年度のパネルデータを用い分析している。そこではOLSの歪度が条件を充たさなかったとした上で2ファクターモデルで費用関数を推計している。ただしこれらの生保産業に関する分析では1年分のサンプルが少ないことから,モデルの定式はかなり簡略された形となっている。なお,これらの銀行・生保に関する研究では規模の経済があることが指摘されている。

 しかし証券業に関するフロンティア関数の分析は乏しい2)。費用関数の実証により,規模の経済や範囲の経済を分析した首藤[1987]や村山/渡邊[1989],新美[1994]を挙げることができるにとどまる。

1.3 本論文の概要

 金融資本市場の活性化のためには,証券産業の効率化が必要であることは論をまたない。そこで本稿では,日本の証券業の効率性がどうであったのかをバブル期(86ー88年)とそれ以後(91ー96年)に分けて,上場証券会社を対象として確率的フロンティアモデルによって実証を試みることとする。これが本論文の第一のポイントである。

 その上で各社毎の効率性の比較と,その効率性の程度と企業規模・関連会社の関係を分析する。これが第二のポイントである。

 本論文の構成を簡単に述べる。第2節で分析企業と期間について、第3節でデータの説明と生産要素投入要素などの取り上げ方について触れる。第4節でフロンティア関数の計量方法と生産関数の具体的な定式化について解説する。第5節では推計結果について触れる。第6節で本論文のまとめを行う。

 結論を先取りすれば,わが国の証券業でかなりの非効率がうかがわれる。しかし最大手と伍す中堅企業もあり,経営資源に応じた経営が市場と企業の活性化に望まれることが示唆される。

2 分析の対象企業と期間 

2.1 分析の対象企業

 対象として取り上げたのは,東証上場の25社である。非上場会社は取り上げていない。従って全国約220社の中で代表的な国内証券企業を取り上げたことになる。直接用いたデータは日経財務データである。なおわが国では四大証券,準大手、中堅と証券業界で区分されることが多い。そのため四大証券と他の証券会社を区別して推計することも考えられるであろう。しかし四大証券ではサンプル数が少ないので計量分析や統計的的検定を行うことは実際上困難である。また同一の資本市場で競争している企業間の優劣(効率性の程度)を比較するという本稿の目的からも両者を分けることは好ましくない。このような観点から、ここでは国内証券企業を区分して推計することはしない。

 なお近年の外資系証券会社の市場シェアの拡大と国内証券会社に比べて高いとされる商品開発や運用能力を考えれば,主要な外資系企業も対象に加えることも望ましいと考えられる。データ上の制約で分析からは除外せざるを得なかった3)

2.2 対象期間

 証券会社の決算期は88年までは9月期、89年以降は3月期(89年3月期は半期決算)である。この決算期間の不連続性を避けるためと,後述するようにフロンティア関数の初期値を求める最小自乗法(OLS)の残差の歪度(skewness)の関係で,実証分析は86年9月期ー88年9月期と91年3月期ー96年3月期に分けてそれぞれ行った。これにより本稿では25社によるパネル分析(3期と6期)が行われる。

 周知の通り,この期間はバブルによる株価高騰からその崩壊,証券業の未曾有の好況から証券不祥事・一部証券会社の行詰まりと波乱に富んだ時期である。それは株式売買株数(金額),TOPIXや従業員数等の様々な指標に現れている。このような激しい変動は,生産投入要素の比率や生産要素価格にも大きく影響している。これは本分析の推計にも影響したと考えられる。そのために定式化が両期間で若干異なったものとなっている。

3 証券業の生産物と投入要素

3.1 証券業の生産物

 生産関数を推計する場合,まずその生産物は何かということが問題になる。日本の証券会社の業務は大きく,アンダーライター業務・ブローカー業務・ディーラー業務に区分される。収益という点では委託・引受けによる手数料収入と有価証券の売買・評価損益とからなる。生産物に関しては先行研究では次のような捉え方をしている。

 首藤[1987]は総手数料と有価証券売買損益を加えた営業収益合計(営業収入)を生産物として捉えて,規模の経済を分析している。さらに引受け業務と売買業務に分けて範囲の経済も分析している。

 また村山/渡邊[1989]は委託売買業務とその他の業務(引受け・売出し,募集・売出し,ディーリング,信用取引を含む金利収入獲得業務)を生産物として捉えている。これは首藤と同様の生産物の捉え方である。その上でトランスログなどの各種の指数化を行い規模の経済を分析している。

 新美[1994]も総営業利益を生産物としている。さらに自己売買業務と投信業務,ブローカー業務と投信業務,自己売買業務と運用預かり業務,等に分けて範囲の経済を分析している。

 本研究でも証券会社の生産物としては営業収益合計を取り上げる。それについて若干付言したい。手数料収入(委託,引受・売出手数料)は定義によって非負である。非負の手数料収入を生産物として捉えることには問題はない。

 他方ネットで報告されている自己の計算に基づく有価証券等の売買・評価損益は負となることがある。事実サンプル中43ケース(19・1%)がこの値は負であった。また生産物を受入れ手数料とそれ以外の収益(金融収益,売買・評価損益,その他の収益)に分けた場合でも,それ以外の収益は4ケース(勧角の93,94年度,ナショナルの95年度,ユニバーサルの95年度)において負であった。さらに委託手数料とそれ以外(引受・売出手数料,募集・売出取扱手数料,その他の手数料および金融収益,売買・評価損益,その他の収益)に分けても,勧角の94年度決算で後者は負であった。

 このような負となりうる場合の扱いについては二つの考えかたが有り得る。一つは負の生産物は通常は想定されないので,売買・評価損益を一括して捉えるのではなく,非負の値を理論的にとる売買・評価益を生産物とし,非正の値を取る売買・評価損を投入要素(費用)とする考え方である。一つは売買や評価損益が一体として行われる金融の資産運用では、生産物も負となりうるとする見方である。

 本稿ではデータ上の制約やさらに売買・評価損益が他の生産(ブローキングやアンダーライター業務)や投入要素などと密接に関連していると言われることから,売買・評価損益を一括して取り上げることとする。

 言い換えれば1財の生産を証券会社は行っているとして分析を行うこととする。

3.2 投入要素と環境要素

3.2.1 投入要素

 生産の投入要素としては,労働力(期末従業員数)をまず取り上げる。固定資産を代理するものとして店舗数(国内と海外の合計)を取り上げる。直接に固定資産(有形固定資産と無形固定資産の合計。投資有価証券などの投資等合計は含まない)を取り上げないのは,(自社所有であれば固定資産のかなりの部分を占めると考えられる)店舗の相当数が,村山/渡邊[1989],新美[1994]でも指摘されているように,証券会社には自社所有ではないこと(系列の不動産会社などからの賃貸)が一つの理由である。また証券の営業で重要な地位を占めるシステム関係の設備もリースやレンタルによっていることが多い。これらの投入が固定資産に必ずしも反映されないことによる。この問題は近年の情報化を考えれば無視できないであろう。

 またもう一つの問題は土地建物の時価と簿価の問題である。経営が悪化したとき簿価の低い土地建物を売却し,それを賃借する(買い戻す)ことが行われるが,これらにより各社間の財務諸表の固定資産のデータにバイアスがかかっている可能性がもう一つの理由である4)

3.2.2 環境変数

 投入生産要素以外にも,証券会社の生産に影響した可能性がある環境変数を取り上げる(このように環境変数を取り入れたものにGardner/Grace[1993]がある)。わが国の証券市場では,株価が高いとき企業の増資(引受け業務)が活発であり,また流通市場における取引(ブローキング業務)も増える傾向にあることが指摘されている。本研究では各社毎の1株当たり売買金額(委託分と自己分を含む平均)により,市況の証券会社の生産に与える影響を代理させる。

 金融業においては合併が経営効率に影響する可能性が指摘されている(銀行について松浦[1993],Bauer et al[1993]参照)。事実規模の経済の追求や弱小金融機関の生き残りが合併の理由としてしばしばいわれている。わが国の証券業においても4大証券系の国際(81年),東京(81年),ユニバーサル(84年),太平洋(85年)の各社が80年代に合併を経験している。これをダミー変数の形で取り上げて,その影響を分析する。

 わが国の証券会社の経営については,総合力という言葉がよく使われる。ブローキング,アンダーライター,ディーリングのそれぞれの業務が複合して行われることにより証券会社の経営力が強まるという見方である。他方では得意分野により特化することで経営が効率化するという見方もある。本論文ではサンプル数が1年分について25社と少ないこともあり,範囲の経済を直接分析することはしない。ブローキング,アンダーライター,ディーリング等業務の営業収入に占める比率で,どのような業務がどれだけ証券会社の生産に影響しているかの簡単な検証を行う(これらの比率の合計は1となるので、これらをすべて計測に取り入れれば完全な多重共線関係となる。従ってそれらを適宜組み合わせて推計は行われる)。

 また近年は,一部証券会社の経営悪化や子会社・関連企業の救済のために特別利益・特別損失の計上がなされている。これについては特別利益を取り上げて,その影響をみることとする。

4 フロンティア関数の計量方法と生産関数の定式化

4.1.1 計量方法

 フロンティア関数の分析はFarrell[1957]に始まった。その後分析対象となる産業も計量方法も格段の広がりを見せている(フロンティア関数一般についてはLovell[1993]、計量方法についてはBauer[1990]およびGreene[1993]参照。わが国における展開については堀[1996]を参照されたい)。

 フロンティア関数は生産関数と費用関数とに大別される。その推計方法は数理計画法によるDEA(Data Envelopment Analysis)とパラメトリックな方法とに大別される。後者は更に決定論的関数(deterministic frontier function)と確率的関数(stochastic frontier function)に区分される。本稿では確率的フロンティア関数によって実証が行われる5)。以下その計量方法について概説する(以下の説明はGreene[1993]による)。

4.1.2 クロスセクション・モデル

 を生産物、βを投入物およびその他生産効率に影響する環境変数のベクトルとする。

 データをクロスセクションとして扱う場合は、確率的フロンティア生産関数は次式による。
(1) αβxvu  u≧0
  vは誤差項。正規分布N(0,σ2v)を仮定6)
  uは非効率性を示す指標。半正規分布|N(0,σ2u)|を仮定。

 対数尤度関数は次による。
(2) Logl=ーlnσー1/2ln2π+Σ[lnΦ(ーελ/σ)ー1/2(ーε/σ)
   λσ/σ   σσ2u/σ2vεvu

  Φ(・)標準正規分布関数
 条件付き期待値Euε]は,次式による。
(3) Euε]=(σλ/(1+λ))[φ(ε/σ)/{1ーΦ(ε/σ)ーε/σ

  φ(・)標準正規密度関数
 非効率性はexp(ーEuε])で示される7)

 なおフロンティア生産関数(費用関数)の推計のためには,初期値を求めるOLSの推計でその誤差項の歪度が負(正)である必要がある(Waldman[1982]参照)。

4.1.3 パネル・モデル

 パネルデータによるランダム・イフェクトモデルは
(4) it=α+βxit+vitu u≧0  で示される。

対数尤度関数は,次のようにして求められる。
(5) Logl=Σ{-1/2[Tln2πーln2+Tlnσ2v+(1+λT)ー2lnΦ(μ/σ)]}+Σ(-1/2{-λ/(1+λT)[Σ(εitμ)/σ+[Σ(εitμ)/σ})+ΣlnΦ{(λ/(1+λT)1/2(1/σ)[Σ(εitμ)+Tμ(1ー1/λ)]}
 T ーーー分析対象となった各企業のサンプル数 μーーー誤差項uの平均
 λ=σ2u/σ2v εititβxit

 各グループごとの条件付き期待値Euεit]は時間を通じて一定であると仮定して,Battse/Coelli[1988]により次のように求められる。

(6) Euεit]=μi*σi*[φ(μi*/σi*)/Φ(μi*/σi*)]μi*=γμ+(1ーγ)(ーε)γ=1/(1+λT)σi*σ2uγ ε=(1/Tεit

 各サンプル毎の非効率性の程度はexp(ーEuεit])で判断される。

 なお本研究では説明変数に、各証券会社毎に同一の値を取る合併ダミーを用いるので,フィクスド・イフェクトモデルの推計を行うことはできない。

4.2 定式化

 具体的なフロンティア生産関数の定式化は3節で説明した生産物,投入要素,環境変数を考えた。さらに初期値を求めるOLSの誤差項の歪度や収束の問題,また多重共線関係の問題を考えて以下のような複数のパターンで行った。

 歪度の問題から,固定資産を代理するものとして86ー88年9月期では店舗数,91ー96年3月期ではその対数値を採用した。これはバブル期の店舗数の拡張と90年代の経営効率化のための店舗の縮小・配列を同列では議論できない可能性を示唆している。また説明変数が異なるので,両期間のフロンティア生産関数の推計結果を直接比較するのは必ずしも容易ではなく,その点に留意する必要があるということになる。

(86ー88年9月期)

(7) LnYit=α+βLLABORit+βSENOFCit+γLTANKAit+γMANDAit+γAGRATIOit+γUNRATIOit+γTRRATIOit+γSENICit+vitu u≧0

 なお,SENICを除いた推計も行ったので併せて報告する。

(91ー96年3月期)

(8) LnYit=α+βLLABORit+βSENOFCit+γLTANKAit+γMANDAit+γAGRATIOit+γUNRATIOit+γTRRATIOit+γSERATIOit+γSENICitvituu≧0

 なお,SERATIOSENICを除いた推計も行ったので併せて報告する。

 LnY 営業収益合計(GDPで基準化)

 LLABOR 期末従業員数(対数値)

 SENOFC 店舗数

 LOFFICE 店舗数(対数値)

 LTANKA 各社毎の1株当たり売買単価(GDPで基準化,対数値)

 MANDA 合併ダミー(国際,東京,ユニバーサル,太平洋=1)

 AGRATIO 委託手数料/営業収益合計(%)

 UNRATIO 引受・売出手数料/営業収益合計(%)

 SERATIO 募集・売出しの取扱手数料/営業収益合計(%)

 TRRATIO 売買損益/営業収益合計(%)

 SENIC 特別利益/資産(%)

 vit  正規分布を仮定

 u  半正規分布を仮定

 投入要素であるβLLABOR,SENOFC,LOFFICE)については,理論的に正の符号が期待される。

 LTANKAで代理される市況の活発さも正が期待される(ただしこの変数については手数料規制の効果も有り得るのでその点に留意する必要があることは前述の通りである)。合併ダミーは先験的に符号条件は定まらない。しかし,銀行の例に見られるように合併による人事等の非効率が証券会社にも当てはまっていれば負であろう。逆に時間の経過等によりそれらの負の効果が除去されていれば正であろう。

 ブローキング,アンダーライティング,ディーリング業務等の各々の比率についても符号条件は予め定まらない。ここではどの業務(その比率)が証券会社の経営効率により強く影響したかをみることになる。しかししばしば指摘されるように株式を含む販売力が証券会社の生産を高めているとすれば,委託手数料の比率は正となることが想定される。

 特別利益についても符号条件は予め定まらない。特別利益の計上が,自社の赤字処理や赤字子会社・関連会社の整理のために使われるケースが多いわが国の実状からすれば,負が予想される。

 なお主要な記述統計量は表1ー1,1ー2に示すとおりである。

5 推計結果

 本節では分析期間ごとに,以下の3つの側面から証券業の効率性が分析される。

 @ フロンティア生産関数の推計。

 A Battese/Coelli[1988]の方法を用いた分析期間中の平均的な各社毎の効率性(非効率性)の計測。この方法を用いたということは,分析期間中の各社の効率性はtime invariantと仮定したことを意味している。

 B 各社毎の効率性と企業規模・関連会社との関係の推計

 なおBのような各社毎の効率性(非効率性)が,各企業の属性や規制などの外部要因にどのように影響されるかの先行研究については,米国の生保業についてGardner/Grace[1993],先進国の銀行業についてAllen/Rai[1996]がある。そこでは企業規模の他,販売形態,レントシーキング,広告比率,市場シェア,規制の態様,経費率や利益率など多くの説明変数が用いられている。本研究では1年間のサンプルが25社と少ないこともあり,企業規模とその外縁ともいうべき関連会社との関係に焦点を合わせる。

5.1.1 86ー88年9月期の推計結果

 パネルのランダムモデルによるフロンティア生産関数の推計結果は表2に示す通りである。ケース1,2ともλは10%水準で統計的に有意となっている。

 いずれのケースでも投入要素である労働,店舗数の符号は1%水準で有意に正であり理論的条件を満たしている。

 市況の活発さの代理変数として取り上げた各社毎の1株当たり売買金額も1%水準で有意に正である。その係数から売買金額単価1%の上昇が0・8%の生産の上昇につながっていることがうかがわれる。バブルといわれたこの時期は株価の高騰が証券会社の生産を高めたことを裏付けている8)

 ケース1,2とも合併ダミーは10%水準で有意に負となっている。これは合併後間もない時期(合併は81ー85年に行われた)で、調整に時間を要するという側面もあるのであろう。しかし91ー96年3月期の推計結果と併せると,証券業における合併は必ずしも効率的とは言えないようである。

 委託手数料の比率は符号は正であるものの,統計的に有意な結果は得られていない。これに対し,引受・売出比率はいずれのケースでも10%水準で有意に負である。このことはバブル期には引受け業務が適正な価格でなされたというよりは,他の業務に負担をかける形で行われた可能性を示唆しているのかもしれない。

 逆に売買損益比率は5%水準で有意に正である。この時期はディーリング業務の強さが,証券会社の効率を高めていたことが示唆される。

 ケース1における特別利益比率は統計的に有意な結果は得られていない。

5.1.2 各社毎の効率性

 以上の推計結果に基づきBattese/Coelliの方法に基づき,86ー88年9月期の平均した各社毎の効率性(非効率性)の指標と程度を示したものが表3である。

 Euε]は、その値が小さい(大きい)ほど効率的(非効率的)であることを意味している。また効率性の程度はそれがフロンティアにあれば1となるので,その値が大きい(小さい)ほど無駄が少ない(多い)ということになる。

 ケース1と2の結果は概ね共通している。直感的に意味のとりやすい効率性の程度の指標によりケース2に基づき解説する。最高の0・97から最低の0・60まで約0・36の格差がある(平均は0.83191,標準誤差は0・116である)。この最高と最低の格差の幅は中馬他[1993]による生保産業(単年度のクロスセクション分析)の例に比べれば少ない。それでも0・9以上の会社が10社あるのに,0・8を下回るものが10社あるというのは,証券業が好調とされたこの時期においても相対的な差が証券各社の間にあったことを示唆している

5.1.3 効率性の程度と企業規模・関連会社の関係

 上で得られた効率性(非効率性)の程度と企業規模(資産の対数値)および関連会社との関係(資産に占める関係会社株式と長期貸付金の合計の%)について次に考えてみたい。いわゆる護送船団行政や産業にX-inefficiencyを許すような構造がある場合、そのスラッグは大会社により多く発生している可能性がある(中馬他[1993],岩本/古家[1996]参照)。

 この点については,わが国の証券産業の実状に鑑みれば,単に各社の企業規模だけではなく関連会社との取引を併せて考慮する方が効率性を総合的に判断するうえでふさわしいと見られる。そこで両者をここでは取り上げた(ただし,系列投信会社やノンバンクの株式が余り含まれていないという問題があることは,前述の通りである)。なお高木証券については資産に占める関係会社株式と長期貸付金のデータが得られなかった。そのために24社について推計を行った。

 分散の不均一や誤差項の正規性の問題から、推計はLeast Absolute Deviation(LAD)によって行った(Judge et al[1985]参照)。

 結果を示したのが表4である。資産規模については符号は負であるものの、統計的に有意な結果は得られていない。関連会社に対する出融資は10%水準で有意に正である。このバブルの時期は,自社の規模との関係は明瞭にはみられないが,関連会社との関係が強くなれば効率は高まることが示唆される(ただし,データの性質上本邦企業の海外での増資などを引き受けた効果が主に現れているのかもしれない)。

5.2.1 91ー96年3月期の推計結果

 バブル崩壊後の91ー96年3月期は,証券業にとり86ー88年9月期とは対極をなしている。歪度の問題から定式化も86ー88年9月期とは異にせざるをえなかった。これは時期の差が影響していると考えられる。また推計結果も若干異なっている。

 フロンティア生産関数の推計結果は表5に掲げるとおりである。なおケース1については多重共線関係の問題がみられるようである。λもケース1では有意とはなっていない。これに対しケース2ではλは10%水準で有意である。ここではケース2を中心に解説する。

 生産投入要素の労働,店舗数とも1%水準で有意に正となっており,理論的予想を充たしている。

 各社毎の1株当たり売買金額も1%水準で有意に正である。その係数は約1.2とバブル期の0.8をかなり上回っている。証券市場の低迷期に一層株価に証券会社の生産が依存するようになっていることが注目される。

 他方合併ダミーはなお10%水準で有意に負である。合併後ある程度の期間を経ても負であるということは,証券業における合併が企業の強化に必ずしもつながっていない可能性を示唆している。

 委託手数料比率は1%水準で有意に正となっている。86ー88年9月期では,この変数は統計的には有意ではなかった。証券業全体が不振なこの時期に委託手数料比率が有意となったことは、株式を含む販売力が証券会社の生産を高めるということは,好況期よりは不況期により当てはまるのかもしれない。また売買損益比率も1%水準で有意に正である。これに対し募集・売出し比率については統計的に有意な結果は得られていない。

 販売力とディーリング業務の優劣が、最近の証券会社の経営を左右していることがうかがわれる9)

5.2.2 各社毎の効率性

 各社毎の効率性(非効率性)の程度をみたのが表6である。ここでもケース2に即し解説する。

 最高は0.97で最低は0.46とその格差の幅は約0.51と倍近い格差になっている(平均は0.69002、標準誤差は0.156である)。説明変数が異なるので比較に当たっては慎重さを必要とするが,80年代に比べれば優劣の差がかなりでてきていることが示唆される。0.9以上の会社が5社となった反面,0.6以下の企業は8社にのぼる。さらにこの計算では,80年代に比べて0.2以上低下した会社が8社ある。この面でも相対的な優劣が広がっていることかうかがわれる。

 その中で,野村・大和・日興の大手や準大手の国際に加えて中堅会社の光世が一貫して高い効率性を持っていることが注目される。

 80年代と90年代でこのような差異がみられるのは,生産性の分析が

 @ フロンティア曲線のシフト

 A フロンティア内での各社の分散(相対的な地位)

という2つの要因を合わせ持つことによると考えられる。具体的にはこの時期の特性を考えれば,証券業全体のフロンティア曲線が下方にシフトするとともに,その分散も大きくなったことが考えられる。

5.2.3 効率性の程度と企業規模・関連会社の関係

  効率性の程度と企業規模および関連会社との関係をみると,86ー88年9月期と91ー96年3月期とでは逆転していることが分かる(表7参照)。

 この時期は企業規模が大きいほど効率性が高くなっている。反面,関連会社との関係については統計的な有意な関係はみられない(ただし,90年代に本邦企業の海外でのエクイティ・ファイナンスが不活発になったことを反映しているのかもしれない)。少なくともこの結果からは,大手証券会社本体はいわゆる経営の効率化を図っていることが示唆される。

6 まとめ

 フロンティア生産関数の推計によれば,証券業の上場25社の間である程度の格差が開いていることが見られた。全体としてみた場合,90年代でその格差は開きつつあるように見える。特に一部については相対的にみて効率性の程度がかなり低下して,野村,日興,大和,国際,光世のトップグループと0.5-0.4と倍近い格差のついた証券会社がみられるようになっている。

 これほどの格差がついてなお存続しうるというのは,証券業自体にスラッグがある,あるいは証券市場に歪みがあることを示唆している。スラッグや歪みは好況期には隠すことができた問題かもしれない。あるいは規制が広範囲に許容されるときは大きな格差も認められたのかもしれない(逆に大きな格差があっても存続し得るように広範囲な規制がとられたともいえよう)。

 しかし資金供給者や調達者の利便を図り,国際市場間での競争を通じて生き残りを図るビッグバンの下で,大きな産業の歪みや企業のスラッグは許されない。それは資本市場の衰退のみならず日本経済全体の低迷につながりかねない問題をはらんでいる。

 各社毎の1株当たりの売買金額に代表される市況の活発さに証券会社の生産が依存することは,ある意味で当然とも言える。しかし株価の高騰時期に流通市場のみならず発行市場も取引が増える(逆は逆)傾向のあるわが国資本市場では,株価の低迷時期には一部の証券会社の効率を大きく低下させることも明らかになった。言い換えれば市場の低迷は一部非効率な企業の退出をうながしている。

 また90年代の非効率の程度の要因分析は,関連会社にテコ入れすることが必ずしも容易ではないことも示唆している(データ上海外現法のウエイトが高いことに留意する必要があるが)。このような証券業の弱い環が,予想されるビッグバンの展開の中で強化されるのかあるいは整理されるのかは,現段階で判断することは困難である。しかし,一部の弱い環については,一層の効率化が必要であることは疑いを入れないといえよう。

 そのとき一部中堅証券会社が最大手に伍した経営効率の高さを示していることは,各々の特徴を生かした経営にこそ証券会社の生き残りと市場の発展の途があることを示唆しているように思われる。


1)確率的生産関数の推移では、半正規分布の他exponential分布とtruncated no rmal分布も行っている。しかし、かなりのケースで労働が有意に負となっており、定式化に問題があるように見受けられる。

2)米国の場合は、インベストメント・バンクとして扱われることも研究の乏しさの一因であろう。

3)外資系証券会社はデリバティブ取引が主体で、国内証券会社とは構造が異なるということも指摘されている。

4)有利子負債残高を証券業の投入要素として取り上げるかどうかは議論が分かれるであろう。銀行の預金とは意味が異なることからここでは取り上げない。この取り扱いについては引き続き検討を必要としよう。

5)確率的フロンティア関数も、一つのフロンティアを想定する伝統的な方法の他、最近では規模によっていくつかのグループに分けて分析するThick frontier approachが用いられることもある。

6)exponential normal分布、truncated normal分布さらにgamma normal分布が仮定されることがある。本稿では、最も一般的に用いられるhalfnormalモデルにより推計する。

7)確率的費用フロンティア関数は、
i=α+βxi+vi+ui ui≧0 E[u|vi+ui]で示される。

8)この点については手数料の規制が行われていること、生産物として売買株数ではなく手数料収入や売買・評価損益を取り上げていることに留意する必要があろう。

9)フローからストック重視ということがいわれる。預かり資産/資産を説明変数に入れた推計も行った。労働が非有意となる問題があった。しかし、各社毎の効率性の程度については大きな変化はみられなかった。


表1-1 主要変数の記述統計量(86-88年9月期)
変数
平均
標準偏差
歪度
尖度
最小
最大
LLABOR
SENOFC
LTANKA
AGRATIO
UNRATIO
TRRATIO
SENIC
TASSET
KANREN
   7.670
  60.280
   6.787
  61.268
   4.265
   8.593
   0.061
  12.948
   0.645
   0.919
  38.071
   0.144
   5.588
   2.922
   6.370
   0.124
   1.011
   0.741
  -0.1
   0.9
  -0.6
  -0.4
   1.6
   0.2
   2.6
   0.8
   2.0
   2.5
   2.9
   2.3
   2.5
   5.5
   3.8
  10.2
   2.7
   6.7
   5.342
   8
   6.388
  46.255
   0.983
  -5.901
   0
  11.310
   0
   9.318
 163
   7.001
  73.088
  15.258
  29.141
   0.661
  15.273
   3.540

表1-2 主要変数の記述統計量(91-96年3月期)
変数
平均
標準偏差
歪度
尖度
最小
最大
LLABOR
LOFFICE
LTANKA
AGRATIO
UNRATIO
TRRATIO
SERATIO
SENIC
TASSET
KANREN
   7.671
   4.034
   7.004
  53.943
   4.650
   0.937
   9.420
   0.783
  12.822
   2.1767
   0.928
   0.702
   0.187
  37.544
   5.872
  61.469
   7.604
   1.002
   1.203
   1.642
   0.0
   0.0
   0.4
  10.7
   7.5
 -11.4
   8.9
   3.3
   0.8
   1.0
   2.6
   2.9
   2.6
 125.4
  76.6
 136.7
  98.3
  17.9
   2.7
   3.3
   5.142
   1.946
   6.573
  27.176
   0.382
-733.447
   1.013
   0
  10.746
   0
   9.341
   5.447
   7.517
 492.891
  65.280
  41.815
  93.049
   7.312
  15.900
   7.097

表2 フロンティア生産関数の推移(86-88年9月期)
説明変数
係数(t値)

ケース1
係数(t値)

ケース2
Cons
LLABOR
SENOFC
LTANKA
MANDA
AGRATIO
UNRATIO
TRRATIO
SENIC
  -5.703(-6.118)
   0.731(11.566)
   0.013( 5.676)
   9.852( 7.160)
  -0.324(-1.860)
   0.008( 1.140)
  -0.028(-1.924)
   0.016( 2.315)
  -0.014(-0.063)
  -5.692(-6.300)
   0.732(12.163)
   0.013( 5.959)
   0.849( 7.190)
  -0.324(-1.948)
   0.008( 1.148)
  -0.027(-1.922)
   0.016(2.432)
 
γ
σ2V
LL(対数尤度)
  16.320(1.700)
   0.378E-02(3.392)
  59.75
  16.241(1.709)
   0.379E-2(3.524)
  59.74

表3 証券会社の効率性の程度(86-88年9月期)
証券会社名
E[u|ε]

ケース1     ケース2
効率性の程度

ケース1     ケース2
大和
山一
日興
野村
三洋
新日本
勧角
和光
岡三
山種
コスモ
第一
丸三
東洋
国際
東京
光世
太平洋
ナショナル
東海丸万
ユニバーサル
水戸
明光
一吉
高木
   0.1064
   0.0357
   0.0368
   0.0449
   0.4660
   0.2944
   0.2053
   0.2744
   0.3541
   0.3926
   0.0880
   0.2904
   0.0400
   0.3720
   0.0482
   0.1101
   0.0258
   0.0998
   0.5054
   0.2389
   0.1852
   0.1035
   0.1327
   0.2093
   0.3534
   0.1049
   0.0356
   0.0372
   0.0446
   0.4640
   0.2929
   0.2045
   0.2745
   0.3531
   0.3939
   0.0897
   0.2903
   0.0397
   0.3727
   0.0482
   0.1100
   0.0258
   0.0991
   0.5042
   0.2407
   0.1851
   0.1016
   0.1320
   0.2086
   0.3525
   0.8991
   0.9649
   0.9639
   0.9561
   0.6275
   0.7450
   0.8144
   0.7600
   0.7018
   0.6753
   0.9158
   0.7480
   0.9608
   0.6894
   0.9530
   0.8957
   0.9745
   0.9050
   0.6033
   0.7875
   0.8309
   0.9017
   0.8757
   0.8112
   0.7023
   0.9004
   0.9650
   0.9635
   0.9564
   0.6288
   0.7461
   0.8151
   0.7580
   0.7025
   0.6744
   0.9142
   0.7480
   0.9611
   0.6889
   0.9530
   0.8958
   0.9745
   0.9057
   0.6040
   0.7861
   0.8310
   0.9034
   0.8763
   0.8117
   0.7029

表3 非効率性の要因(86-88年9月期)
説明変数
係数(t値)

ケース1
係数(t値)

ケース2
Cons
TASSET
KANREN
 
AdjR2
Var(res)
Mean(abs)
   1.104( 4.684)
  -0.041(-1.263)
   0.121( 2.043)
 
   0.057
   0.013
   0.086
   1.098( 4.658)
  -0.040(-1.237)
   0.120( 2.022)
 
   0.0569
   0.0127
   0.086
注)被説明変数は各社の効率性の程度。                              
TASSETは各社のサンプル期間中の総資産(対数値、GDPで基準化)の平均。         
KANRENは各社のサンプル期間中の関係会社株式と長期貸付金の資産に占める%の平均。

表5 フロンティア生産関数の推移(91-96年3月期)
説明変数
係数(t値)

ケース1
係数(t値)

ケース2
Cons
LLABOR
LOFFICE
LTANKA
MANDA
AGRATIO
UNRATIO
SERATIO
SERATIO
SENIC
 
□γσ2V
LL(対数尤度)
  -6.463(-9.098)
   0.920( 6.367)
   0.464( 2.749)
   1.229(10.868)
  -0.310(-1.531)
   0.018( 4.393)
  -0.003(-0.210)
   0.013( 5.422)
   0.004(-0.663)
  -0.015(-1.097)
 
  11.079( 1.569)
   0.018( 5.840)
  42.59
  -6.479(-9.064)
   0.905( 6.188)
   0.482( 2.923)
   1.246(13.140)
  -0.347(-1.905)
   0.018( 4.276)
  -0.005(-0.348)
   0.014( 5.854)
 
 
 
  11.605( 1.756)
   0.018( 6.735)
  41.80

表6 証券会社の効率性の程度(91-96年3月期)
証券会社名
E[u|ε]

ケース1     ケース2
効率性の程度

ケース1     ケース2
大和
山一
日興
野村
三洋
新日本
勧角
和光
岡三
山種
コスモ
第一
丸三
東洋
国際
東京
光世
太平洋
ナショナル
東海丸万
ユニバーサル
水戸
明光
一吉
高木
   0.0721
   0.1578
   0.1024
   0.0342
   0.5156
   0.4230
   0.5021
   0.5915
   0.5018
   0.7498
   0.4099
   0.7497
   0.3311
   0.6144
   0.0678
   0.3653
   0.0426
   0.3164
   0.7625
   0.5038
   0.3856
   0.3661
   0.4303
   0.3299
   0.3411
   0.0773
   0.1545
   0.0981
   0.0343
   0.5287
   0.4253
   0.5151
   0.6032
   0.5222
   0.7842
   0.4247
   0.7835
   0.3399
   0.6303
   0.0695
   0.3604
   0.0433
   0.3043
   0.7722
   0.5097
   0.3817
   0.3812
   0.4373
   0.3479
   0.3608
   0.9305
   0.8540
   0.9027
   0.9664
   0.5971
   0.6558
   0.6053
   0.5535
   0.6054
   0.4725
   0.6637
   0.4725
   0.7181
   0.5410
   0.9344
   0.6940
   0.9582
   0.7288
   0.4665
   0.6042
   0.6800
   0.6934

   0.6503
   0.7190
   0.7110
   0.9256
   0.8568
   0.9066
   0.9663
   0.5894
   0.6536
   0.5974
   0.5471
   0.5932
   0.4565
   0.6540
   0.4568
   0.7118
   0.5324
   0.9329
   0.6974
   0.9576
   0.7376
   0.4620
   0.6007
   0.6827
   0.6830
   0.6458
   0.7062
   0.6971

表7 非効率性の要因(91-96年3月期)
説明変数
係数(t値)

ケース1
係数(t値)

ケース2
Cons
TASSET
KANREN
 
AdjR2
Var(res)
Mean(abs)
   0.187(1.174)
   0.064(2.438)
   0.004(0.141)
 
   0.184
   0.020
   0.101
   0.199(1.229)
   0.061(2.287)
   0.008(0.290)
 
   0.185
   0.021
   0.103


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