3 計量方法と実証モデルの導出 1) 計量方法
クロスセクションデータによる消費関数の分析では分散不均一の問題がしばしば起こる。特に消費・所得や資産に関する変数の分布は裾が長いことが指摘されている。そのために通常のOLSによる場合は分析結果にバイアスが生じる可能性がある。 回帰式を yi=xiβ+εi とするとき、次式を最小にする。 minΣi=1N|yi−xiβ| 1) β ここで
分布の裾が広い場合やサンプルに異常値がある場合、最小二乗法で推計されたパラメ−タの値はその異常値等に左右されやすいが、LADではその影響が少ないという利点がある。そこで本稿ではLADにより推計する。
CONS=F(INCOME,WEALTH,AGE,Z)という標準的な消費関数を考える。 CONS=α 0C+β 1INCOME+Σβ2kINCOMEDUMMY+Σβ 3kLABOR +Σγ1lEACHMONEY+Σγ2lEACHDEBT+γ 3REAL+Σδ1mHOME +Σδ 2mAGE+Σδ 3mFAMILY+ζIIP+ε 2) CONS=α 0C+β 1INCOME+Σβ 2kINCOMEDUMMY+Σβ 3kLABOR +γ1MONEY+γ 2DEBT+γ 3REAL+Σδ 1mHOME+Σδ 2mAGE +Σδ 3mFAMILY+ζIIP+ε 3) CONS=α 0C+β 1INCOME+Σβ 2kINCOMEDUMMY+Σβ 3kLABOR +γ 4NETWEALTH+Σδ 1mHOME+Σδ 2mAGE+Σδ 3mFAMILY+ζIIP+ε 4) CONS------(サ−ビス+非耐久消費財)支出額+帰属家賃+現物給付(万円) INCOME---可処分所得+帰属家賃+現物収入(万円)。以下この値を所得ということがある。
INCOMEDUMMY---可処分所得階層ダミ−(可処分所得ダミ−2は20万円未満,可処分所得ダミ−3は20万円以上30万円未満,可処分所得ダミ−9は80万円以上)、または所得の二乗項。および所得の構成に関する変数(所得に占める定期収入比率(%)と夫婦以外の世帯員収入の家計所得に占める比率(%)) EACHNONEY---前期預金残高(r11)、前期保険残高(r12)、前期有価証券残高(r13)(万円) MONEY---前期金融資産残高(万円) EACHDEBT---前期住宅ロ−ン残高(r21)、前期消費者ロ−ン残高(r22)(万円) DEBT------負債残高(万円) REAL------土地、住宅等実物資産の評価額(万円)11) NETWEALTH---純資産(万円) HOME----住宅に関する変数(持ち家ダミ−、社宅ダミ−と住居面積(m2))12)。 AGE--------年齢、年齢の二乗項 FAMILY---家族構成に関する変数(世帯人員、就業者数、夫(妻)の有無、親との同居の有無、高校生数、大学生数) IIP------ 都道府県別鉱工業生産指数 ε---誤差項 Laplace分布を仮定 なお消費、所得、資産にかかる金額は都道府県別物価指数で実質化した。
符号条件としては、最低消費額としての定数項であるα 0>0,所得のβ 1>0が期待される。所得の効果が線形であればΣβ 2k=0である。他方非線形の効果を持つならば高可処分所得ダミ−で<0、低可処分所得ダミ−で>0(基準は40万円以上50万円未満)、あるいは所得の二乗項は負が期待される。
r11=r12=r13 , r21=r22 の制約が成立していれば3)式を推計すればよい。さらに r11=r12=r13=r21=r22 の制約が成立していれば4)式を推計すればよい。
なお異常値の問題を避けるために消費、所得、金融資産、住宅ロ−ン、消費者ロ−ンおよび実物資産評価額について、その値が各サンプル平均から±4*標準偏差の範囲外となるものは分析から除いた。その結果用いたサンプル数は42,703である。
|