ディスカッションペーパー・シリーズ 2000-05

 

退職予定年齢を考慮した消費関数の推計

 

郵政研究所第二経営経済研究部リサーチ・アソシエート

奥井 めぐみ

 

2000.6.27

 

<要約>

1 ライフ・サイクル/恒常所得仮説に従うと、個人は貯蓄と借入により消費経路を平準化するため、現在の消費は、将来得られる所得の割引現在価値に依存することになる。本研究では、今後生涯にわたって得られると予想される勤労所得の累積や、金融資産、実物資産などが消費にどのような影響を与えるのかを調べ、ライフ・サイクル仮説の検証を行うことを目的としている。また、ライフ・サイクル仮説の対立仮説として、遺産動機と予備的貯蓄動機を取り上げ、これらの動機が消費行動に与える影響についても検討した。

2 本研究では、1996年に実施されたアンケート調査の個票データより消費関数を推計した。消費関数を推計する同様の先行研究は数多くなされているが、本研究で特徴的なことは、退職予定年齢や年金期待など将来の期待についての情報が得られるデータを利用している点である。今後生涯に渡って得られると予想される労働所得は、賃金関数の推計結果から得られる賃金プロファイルを利用して求めることができる。同じ年齢で同じ賃金プロファイルを持つ個人であっても、予定している退職年齢が異なると期待される生涯勤労所得が異なってくる。今回、退職予定年齢がわかるデータを利用することで、各家計の生涯勤労所得を予想することが可能になる。

3 消費関数の推計は、世帯主の年齢層が25-34歳、35-44歳、45-54歳で世帯主が常勤労働者である3つのグループと、世帯主年齢60-69歳のグループでそれぞれで行い、家計のライフステージによって、消費行動が異なる可能性を配慮した。

4 分析結果より、1)実物資産や年金受給総額が消費に対してプラスに有意な影響を与える、2)世帯主生涯勤労所得が消費に与えるプラスの効果は年齢層が高くなるほど大きくなる、3)遺産動機の有無は世帯主年齢60-69歳の消費行動に影響を与える、4)予備的貯蓄動機が消費に与える影響は顕著ではない、の4点が示された。

 


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