郵政研究所ディスカッションペーパーシリーズ No.2001-01

 

 

   銀行の中小企業向け貸出供給と担保、信用保証、不良債権

 

       松浦 克己*  郵政研究所特別研究官(横浜市立大学商学部教授)

       竹澤 康子**  郵政研究所客員研究官(東洋大学経済学部助教授)

 

 

(要旨)

 未曾有の金融危機の中で金融機関は安全資産への移行や不良債権の償却で自行の経営健全化を図り、ひいては金融システム全体を安定化させることが求められている。他方で政府はいわゆる「貸し渋り」対策として事故率10%を想定した特別信用保証制度を創設し、中小企業向け貸出の促進を図っている。しかしながら中小企業では「過剰債務」は依然として深刻であり、担保となる土地価格の下落は続いている。銀行は担保や不良債権など信用リスクを考慮して中小企業向け貸出供給を行ったのであろうか。政府の中小企業向け貸出促進策は効果を上げたのであろうか。98,99年度の都道府県別データを用い、貸出金利、地価、信用保証協会の債務保証、不良債権(信用保証協会の代位弁済比率)を考慮して銀行の貸出供給曲線をパネルで推計することにより、この問題の解明に努める。結果によれば貸出金利と地価は有意に正、不良債権比率は有意に負であるが、信用協会の債務保証は統計的に有意な影響は与えていない。このことは銀行が合理的な貸出行動を行っていることを示すものである。他方で特別保証などで代位弁済比率が1%ポイント増加すれば、中小企業向け貸出は約11兆円減少する。これは経済合理性を欠く特別信用保証などでは、政策目的を達成できないことを示すものである。

 

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