郵政研究所ディスカッションペーパーシリーズ No.2002-02
黄昏の幸せ
−高齢者の幸せ感を支えるもの
横浜市立大学商学部 松浦 克己
(要旨)
人生の黄昏−高齢期−において自分が幸せであると感じられることは人生にとり至福である。そのように評価できる人々が多い社会の厚生は高いであろう。従来幸福感は効用の比較はできないとして経済学で取り上げられることは少なかった。しかし経済的な出来事は人々を幸せにする限りにおいて重要なのであり、政策の究極の目的もそこにある。我々は「横浜市民の消費行動・生活意識に関するアンケート調査」(2001年9月)により、60歳以上の高齢者の幸せ感を支えるものが何であるかを検証する。
そこでは高齢者の幸福感を支える経済的指標は消費と資産(貯蓄残高)であり、収入ではないことが明らかにされる。また女性、持ち家、子供と同居せず、家族と食事を一緒にする人々がより幸せであり、男性、賃貸、子供と同居、家族と一緒に食事にしない人々が余り幸せではないことが示される。
社会保障政策の対象としての高齢者は、賃貸住宅に住む人を重点にする事が妥当であること、子供と独立した高齢者世帯という家族類型を前提とした政策の展開が望まれる事が明らかにされる。