特別研究官(学習院大学教授) 南部 鶴彦
アメリカでは1978年のairline Deregtulation Act以来、国内航空市場の完全な自由化がなさ れたが、その結果として規制時代に主流をなしていたメッシュ型(M型と略す)ネットワークから、 ハブ・アンド・スポーク型(HS型と略す)ネットワークへの移行がなされた。このHS型ネットワ ークはネットワークの構造という点から見ると航空だけでなく通信やその他のネットワーク産業に供 通のものである。したがってM型からHS型への移行によって、どのような社会的効率性の変化があ るかを分析することは理論的にも興味ある課題である。それだけでなく、1980年代後半からこの HS型ネットワークを「てこ」とする航空市場の独占という問題がしばしば取りあげられるようにな ってきた。このような政策的課題を論ずるにあたっても、HS型ネットワークの構造を企業の価格形 成という視点から分析することが必要である。ここではM型とHS型ネットワークのトラヒックの発 生構造をモデル化した後に、企業の利潤最大化行動を中心とした価格決定に焦点をあて、そして部分 均衡分析の下で、社会的余剰と消費者余剰の概念を用いて、経済的厚生の比較を行った。