『オフィスにおけるコミュニケーション行動の実態分析』


                         第一経管経済研究部主任研究官 稲葉  茂
                        特別研究官(東京工業大学教授) 肥田野 登

 オフィスのコミュニケーション行動は、企業組織そしてオフィスの立地に大きな影響を与える要因
である。既存研究においては、その実態について研究されたものがみられず、そのため企業立地論等
の実証的研究についても多くの問題点を指摘できる。

 そこで、本論では、東京一極集中問題への有効な対応策であるオフィス分散化の糸口を見いだすた
め、特にある意味では分散オフィスの形と考えられる東京支社オフィスのコミュニケーションの実態
を把握し、コミュニケーション手段の選択について分析を行い、コミュニケーションとオフィス立地
について検討した。

 コミュニケーションの実態については、実際の業務上の外出、業務上の電話・郵便・ファクス、出
張について、社内・社外ある上司・部下などの相手、Face to Faceあるいはメディアという手段、商
談・情報収集などの内容について調査し、その量・相手・目的・空間的関係を把握し、さらに個人の
行動、都市内・都市間コミュニケーションに分析するとともに、非集計ロジットモデルを用いてコミ
ュニケーション手段選択モデルを推定した。

 このような結果から、人間関係がある程度形成されていれば、社内コミュニケーションは、メディ
アによって代替可能であり、オフィス分割化の可能性が指摘できる。また、社外コミュニケーション
については近接性の利点があるが、手段選択モデルの推定などから、立地点の移動はコミュニケーシ
ョン行動の変化をもたらすことが指摘でき、オフィス分散化の可能性が窺える。