特別研究官(東京工業大学教授) 肥田野 登 東京工業大学大学院 佐々木俊一 第一経営経済研究部主任研究官 稲葉 茂 第一経営経済研究部研究官 足立 聡
オフィスの分散化・分割化を考える上で、コミュニケーションの制約を明らかにすることは極めて 重要である。 日本では、情緒的関係・信頼感といった人間関係が重視され、社内で必要以上の面談コミュニケー ションがとられている。このことが、オフィス分割の障害となっている。 そこで、コミュニケーション手段に関しての意識調査を行い、その選択行動を非集計ロジットモデ ルによって分析した。その結果、社外コミュニケーション、社内コミュニケーションとも、情緒的関 係・信頼感といった人間関係が影響を与えていることが明らかになった。特に社内コミュニケーショ ンでは、情緒的関係が強いときには面談が選択され、逆に、信頼感が強い時にはメディアが選択され る。 現状では、従業員は本社への出張が頻繁であればあるほど、ちょっとしたトラブルでも本社へ出張 する(面談が選択される)。これに対して、就業者が情緒的関係を重視する度合いが低下すると出張 は抑制される。人事評価や業務上の決定から情緒的関係の影響を除くことにより、面談の必要性が減 少する。これによって、東京のオフィスを分割化するための方向の一つが示されたと考える。