特別研究官(東京工業大学教授) 肥田野 登 東京工業大学大学院 佐々木俊一
既存のオフィス立地研究では、コミュニケーションの要因をコスト面でしかとらえていない。この ため、立地点の変化に伴うコミュニケーションのあり方や意思決定のあり方の変化をほとんど考慮し ていない。この点に着目して、本研究では、管理者・従業員双方のオフィス立地−勤務形態に対する 選好を立地都市・人事形態・勤務形態の効用から推定し、都市規模といった要因以上に、人事異動・ 人事評価という人事形態が効用に影響を与えていることを明らかにした。また、個別の要因に対する 構造を明らかにし、社内でのコミュニケーション欲求度が低い勤務者は東京勤務を選好すること、本 社勤務選好が人事評価の方法の影響を強く受けることといったことを明らかにした。 次に、オフィス立地−勤務形態選好の構造と、事前研究であるコミュニケーションの手段選択の構 造を用いて、オフィス立地のシミュレーション分析を行った。その結果、人事形態を東京本社と地方 支社で変化させることによって、支社オフィスの地方都市立地が可能となることを明らかにした。特 に、従業員の選好を重視した場合、20万都市にも支社オフィスが立地することができることを示し た。