『放送産業における地域性とネットワーク』


                               通信経済研究室長 武内 信博

 放送産業については、従来経済学的見地からの分析はほとんどなされてこなかった。しかしながら
現在、放送産業を取り巻く環境は目まぐるしく変化してきており、放送産業、特に民間テレビ放送会
社について、経済的観点から分析することの意義は大きいと思われる。

 放送産業の産業組織的特色としてネットワークがあり、放送会社を取り巻く経済環境、経営状況を
分析するに当たっては、地域経済に基盤を置く独立の経営体という側面と、ネットワークの一部とし
て、その各社の経営への影響という側面の両方を併せて考慮しなければならない。ネットワークによ
る番組の流通状況を見てみると、県域を基本として設立されているローカル局では、自主制作番組の
割合は11.6%であり、キー局からの番組供給は70%近く、準キー局分を加えると80%近くに
達する。番組供給面から見たローカル局のネットワーク依存は、極めて深刻な課題である。

 また、ローカル局の県外収入と区域内世帯数(というより県民所得)はかなり高い相関関係がある。
 一方、ローカル局の県内収入は、当該地域の経済力との相関が高い。さらに、県外収入が当該県域
での局数を無視していることや、局数と県内収入が逆相関関係にあることなど、ネットワークへの依
存の側両が検証される。