通信経済研究部主任研究官 木村 順吾
本稿は、次のとおりの二部構成となっている。 第一部においては、1984年のAT&T分割以降の米国通信政策を照顧することにより、長短分 離・地域分割型業態区分がその当初の政策意図を超えて成果を顕してきたこと、1984年には独占 保持した地域通信分野にあっても競争促進的政策を推進しつつあり、米国通信産業は一層のダウンサ イジングと合従連衡を志向しつつあること、そして米国通信政策が市場構造変革といった直接目的以 上に自由の必要条件としての市場秩序が回復することによりもたらされる「意図されざる帰結」を期 待して新しい市場構造政策(市場秩序政策)を積極的に推進している様を見ている。 第二部においては、第一部において行った米国動向の再考を踏まえ、また、英米の経済法土壌の中 での通信政策実績や経済規制に関する諸学派の見解の動向をも見据えた上で、独占企業の効率化、規 制緩和、技術開発、次世代網構築及び地方分散をも考慮に入れた我が国の新しい通信政策のデザイン を提案している。