1994年6月:No.1994―12

『家庭用ファクシミリの需要分析』

                            客員研究官(東北大学教授) 栗山 規矩
                            客員研究官(中京大学教授) 鬼木  甫
                               通信経済研究部研究官 太田耕史郎
                                      研究官 大村 真一 
 近年、ファクシミリの国内における販売台数は顕著な増加を示している。また、その利用は企業から世帯に伝播し始めており、世帯のファクシミリ需要は飽和に差し掛かった企業のそれに代わり、市場の新たな担い手として大いに期待されている。そこで、本稿では、この家庭用ファクシミリの需要関数を推定し、そこから価格弾力性・所得弾力性を計算すると共に、1994〜2000年の需要予測を行うことにする。

 我々は分析にロジットモデルを援用することにする。つまり、世帯は所得とファクシミリ価格に応じたファクシミリ購入確率を持ち、これがロジスティック曲線に従うとされる。そして、ファクシミリの需要関数は各所得階層の購入確率に当該所得階層の世帯数を掛け、これを全所得階層について集計することで得られる。また、将来の需要はファクシミリ価格、世帯所得および総世帯数の予測値より導出される。データは郵政省『通信利用動向調査』が利用される。この調査では、世帯におけるファクシミリ保有および保有意向と回答世帯の所得階層等が明示されることから、世帯所得、ファクシミリ価格がその需要に与える影響に関する詳細な研究が可能となる。

 本稿の分析では、以下の結論が得られた。まず、1992年には、家庭用ファクシミリの価格弾力性は2.5369、所得弾力性は0.5390であった。これより、家庭用ファクシミリは価格が低下すれば、保有者数は急速に増加することが予測される。次に、高位・中位・低位の3ケースの価格を設定し、需要の将来予測を行ったが、保有世帯数は2000年には高位価格(44,152円)で約1,239万世帯、中位価格(38,092円)で約1,395万世帯、低位価格(10,199円)で約2,215万世帯となる。これを普及率で表すと、それぞれ、26.6%、30.0%、47.6%である。

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