郵政研究所月報
2002.2
地域経済見通し
第三経営経済研究部 主任研究官 佐々木文之
研究官 荒田 健次
研究官 岡田 晴之
研究官 佐藤 孝則
(この見通しは、郵政研究所の調査研究の成果をとりまとめたものであり、総務省の公式見解を示すものではありません。)
[要約]
今次地域経済見通しでは、当郵政研究所月報2001年12月号、及び1月号で公表した「日本経済中期見通し」において予測した我が国の実質経済成長率をベースとして、郵政局12管内毎の実質経済成長率(最終需要項目毎)について、2001〜2003年度の3ケ年度の予測を行った(尚、県民経済計算は1998年度が直近判明分であるため、1999〜2000年度については推計を施している)。
各地域毎の経済見通しの概要は以下の通りである。
1.北海道
設備投資は、北海道外企業の工場新設というプラス要因もあるが一時的なものに止まる一方、小売業による新規出店等の非製造業の大型投資も一巡しつつある。民間住宅投資についても息切れ傾向にある。管内経済で大きなウェイトを占める公共事業も削減傾向にあることから2003年度までマイナス成長で推移することが予測される。
実質GDP成長率は、2001年度-0.3%、2002年度+0.3%、2003年度+1.3%といずれも全国を下回る伸びで推移すると予測される。
2.東北
足元で情報関連機器需要が弱含みに転じているため、民間企業設備投資も99〜2000年度のような高い伸びが期待できない。加えて、米国を中心として海外経済の減速が鮮明化しつつあるため、純移輸出も2002年度までは実質GDPに対してマイナス寄与になるものと予想される。北海道同様、大きなウェイトを占める公共事業は削減傾向にあることから2003年度までマイナスの伸びとなろう。
実質GDP成長率は、2001年度-1.4%、2002年度-1.2%、2003年度+1.0%といずれも全国を下回る伸びで推移し、特に海外経済減速の影響から2002年度まではマイナス成長が続くものと予測される。
3.関東
2001年度は、民間住宅投資が首都圏の分譲住宅を中心に伸びたことから、プラス成長と全国のマイナスと対照的な動向を示すことになろう(但し、反動減から2002年度はマイナスの伸びとなる見込みである)。公共事業の削減幅についても、地域別シェアの最近の傾向からみて他地域に比べてやや大きいことが推察される。民間企業設備投資は、産業構成が製造業中心であることから、海外経済が回復に向かう2002年度以降やや先行して回復してゆくものと想定される。
実質GDP成長率は、2001年度+1.4%、2002年度+0.4%、2003年度+1.2%と概ね全国と同程度の伸びが予測される。
4.東京
2001年度は民間住宅投資が他の地域に比べて堅調であり、また、管内に集積する金融機関による情報関連投資が伸びたものと推定され民間企業設備投資も堅調推移になるものと予想される。2002年度以降についても、民間住宅投資と民間企業設備投資は他地域に比べて底固い動きが予想される。但し、公的固定資本形成の減少幅は全国を大きく下回ることが想定される。
実質GDP成長率は、2001年度-0.8%、2002年度+1.1%、2003年度+3.1%と2002年度以降は相対的に民間需要の堅調さを背景に全国を上回ることが予測される。
5.信越
2001年度以降、特に2002年度まで情報関連機器需要の落ち込みから民間企業設備投資がマイナスの伸びで推移し、管内経済全体を押し下げるものと予想される。但し、公的固定資本形成は他地域に比べてやや上回る伸びが予想される。
実質GDP成長率は、2001年度-0.6%、2002年度+0.0%、2003年度+2.0%と、2002年度までは全国を下回るものと予測される。
6.北陸
2001年度以降、公的固定資本形成が管内経済に対して下押し圧力となることが想定される。また、素材関連需要が全国的に後退すること等の要因から、民間企業設備投資は2002年度までマイナス成長が続くことが予想される。
実質GDP成長率は、2001年度-0.3%、2002年度-0.9%、2003年度+0.9%と、予測期間中全国を下回る伸びで推移するものと予測される。
7.東海
2001年度は、国内、及び輸出とも自動車販売が比較的堅調に推移するとものみられることから、自動車産業を中心として民間企業設備投資が相対的に高い成長となろう。2002年度以降についても自動車産業は電気機械業等と比較すれば相対的に堅調であると想定されることから、民間企業設備投資と純移輸出は管内実質GDPの押し上げ要因として働くものと予想される。
実質GDP成長率は、2001年度+1.3%、2002年度+1.2%、2003年度+1.5%と、特に2002年度までは全国を上回る伸びが予測される。
8.近畿
2001年度以降、民間企業設備投資、公的固定資本形成、民間住宅投資などが依然弱含みで推移するものと予想され、中小製造業のウェイトが高いという産業構造から、2002年度以降の海外経済の回復によるプラスの影響も他地域に比べてやや遅れて発現することが予想される。但し、1999〜2000年度の成長率がさほど高まらなかった分、反動減のリスクは他地域よりも低いものと思われる。
実質GDP成長率は、2001年度+0.4%、2002年度+0.3%、2003年度+0.3%と2002年度までは全国と同程度、2003年度は下回る伸びになると予測する。
9.中国
2001年度以降、公的固定資本形成の下押し圧力が高まるものの、その影響は全国と比較すれば小さく、製造業における更新投資を中心として民間企業設備投資も弱含みながらもプラス成長を維持するものと予想される。
実質GDP成長率は2001年度+0.7%、2002年度+0.6%、2003年度+1.4%と、ほぼ全国並みの成長を遂げるものと予測される。
10.四国
電気機械の落ち込みを中心として民間企業設備投資が弱含みで推移する他、ウェイトの大きい公的固定資本形成のマイナスの伸びが見込まれる。但し、近畿と同様、1999〜2000年度の成長率がさほど高まらなかった分、反動減の影響は他地域よりも低いとみられる。
実質GDP成長率は、2001年度-0.9%、2002年度+0.2%、2003年度+0.6%と予測期間中、概ね全国を下回る伸びになるものと予測する。
11.九州
2001年度は管内製造業の中で構成ウェイトの大きい電気機械や一般機械の落ち込みから民間企業設備投資がマイナス成長に転じることが想定される。また、2001年度は民間住宅投資の落ち込みが大きい。公的固定資本形成の減少幅も拡大していく中、2002年度以降は海外経済の回復に伴って民間企業設備投資が回復してくるものとみられ、全体としても比較的堅調な成長を遂げることが予想される。
実質GDP成長率は、2001年度+0.5%、2002年度+1.6%、2003年度+1.6%と、概ね全国を上回る伸びとなることが予測される。
12.沖縄
2001年度は住宅着工が好調であることから民間住宅投資は高いプラス成長となることが予想されるが、民間企業設備投資のマイナスの伸びは続こう。2002年度以降は民間住宅投資の反動減など押し下げ要因もあるが、県外からの情報関連企業などによる民間企業設備投資(コールセンターの設置)がプラスの伸びに転じよう。
実質GDP成長率は、2001年度-0.6%、2002年度-1.6%、2003年度+1.1%と、全国を下回る伸びが予測される。
<地域別実質GDP成長率見通し>
|
2001年度 |
2002年度 |
2003年度 |
北海道 |
-0.3% |
0.3% |
1.3% |
東 北 |
-1.4% |
-1.2% |
1.0% |
関 東 |
1.4% |
0.4% |
1.2% |
東 京 |
-0.8% |
1.1% |
3.1% |
信 越 |
-0.6% |
0.0% |
2.0% |
北 陸 |
-0.3% |
-0.9% |
0.9% |
東 海 |
1.3% |
1.2% |
1.5% |
近 畿 |
0.4% |
0.3% |
0.3% |
中 国 |
0.7% |
0.6% |
1.4% |
四 国 |
-0.9% |
0.2% |
0.6% |
九 州 |
0.5% |
1.6% |
1.6% |
沖 縄 |
-0.6% |
-1.6% |
1.1% |
全 国 |
0.3% |
0.5% |
1.5% |
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