郵政研究所月報

2002.2

トピックス

郵便のユニバーサルサービス・コスト:
考え方と諸外国の計測1


第一経営経済研究部 主任研究官  丸山 昭治


[要約]
 郵便事業は国の内外で新規参入事業者との競争、独占留保分野の縮小・廃止等の変革期を迎えている。既存事業体が郵便のユニバーサルサービスを提供するために必要な金銭的負担を計測することは将来におけるより自由化された市場を考える上で有益であり、本稿では郵便のユニバーサルサービス・コスト(USOコスト)の考え方を整理した上で諸外国における計測事例をサーベイする。USOコストは均一料金およびユニバーサルサービスを構成要素とする「義務」にかかるネットの費用概念であり、均一料金制約を課せられている郵便事業体がユニバーサルサービスの提供を要請されることにより発生する金銭的負担と捉えられている。
 USOコストの把握にあたっては、郵便ネットワークをいくつかの経路に分けたとき各経路において「回避可能費用マイナス均一料金からの収入」を計算し、これがプラスの場合にはUSO経路とみなすNAC(純回避可能費用)法とUSOコスト算定の基礎を新規参入業者の参入価格設定および既存事業体が内部相互補助を実施する能力の潜在的な喪失に求めるEP(参入価格設定)法が用いられている。USOコストの計測結果は各国事業体レベルで異なるものであり、採用される手法とUSOコストの水準に関する統一的な見解を導くことはできない。NAC法についてはコスト算定の基礎となるデータを十分整備した上で市場環境変化後も継続的な計測作業が求められるほか、EP法についても精度の高い前提条件の予測を行うための厳密な調査研究が必要であろう。

1  本稿は筆者の個人的研究を取りまとめたものであり、本文中の意見に関する記述は総務省および郵政事業庁の見解ではないことをお断りしておく。



全文 郵便のユニバーサルサービス・コスト:考え方と諸外国の計測