郵政研究所月報

2002.4

シリーズ

情報ネットワークシステムの分散化


東京大学大学院工学系研究科教授      
NTTアドバンステクノロジ株式会社 エギュゼキュティブアドバイザ      
(前取締役ネットワークソリューション事業本部長) 吉田 眞
NTTアドバンステクノロジ株式会社      
グローバルインテグレーション推進室長  小林 勉


はじめに

 電子政府・電子自治体は、基本的には利用者へのサービス提供を電子的かつ総合的に行うサービス業であり、物理的にも機能的にも分散した総合システムとなると考えられる。これにより、利用者がどこに行ってもあるいは出かけて行かなくても、本人認証でワンタッチで、さらにはノンタッチで自動的に、その最終目的を達成できる環境を提供することが重要である。
 このため、これを支えるネットワークシステムは、利用者(住民や他団体などの外部、および職員などの内部)への利用支援系、ネットワークやシステムのインフラやアプリケーション等の運用・管理系を含めて、この分野における世界的な動向を勘案の上で、効率が高く、外部環境や要求条件の変化に対する柔軟性に富んだ、(広域)分散制御システムとして構築されることが望ましい。次世代インタネット上で実現されるビジネスとシステムは、多種多様なシステムや機能が相互に緩い結合関係を持つ「要素ベースの分散システム構成」で実現される方向にある。この前提として、利用者が目的とするビジネスやサービスを実現し、実行を支援するために(即ち、最終顧客の最終目的を達成するために)、必要な業務をエンド・エ ンドで実行するプロセスを用意する必要がある。このための適切なプロセス分析と仕様記述が必要となる。

 この分析と記述には、エンド・エンドの提供連鎖(value chain又はservice delivery chain)を構成する全ての構成メンバ(電子政府・自治体の場合には、サービス提供者としての自治体、そのカウンタパート自治体、ネットワーク事業者、付加価値業者、インテグレータ、ベンダ、など)を含んだプロセスとして、最も効率的に目的を達成するという視点から行う必要がある。(参考文献1,2)その上で、これをシステムとして実装し構築するフレームワークを業務プロセスとは切り離して、直接には依存しない形で用意し、今後も急速に進むであろう技術と業務の進展と変化に柔軟に対応できるアーキテクチャとする必要がある。以下では、これらの観点から、電子政府・自治体の実装の基盤となる要素について記述する。



全文 情報ネットワークシステムの分散化 [1/2][2/2]