月例経済概観


日本経済
総合指標でみる景気の現状

〇日銀短観(平成9年12月調査)・・・主要企業・製造業の業況判断は▲11%と9月調査から(+3%)悪化
主要企業・業況判断D.I.の推移
(注)シャドー部分は景気後退気を示す。 (注)括弧内は前回調査時点での予測調査の結果。
《ポイント》

  • 日銀短観(企業短期経済観測調査、12月調査)によると、主要企業・製造業の業況判断は、▲11%と前回9月調査の+3%から悪化した。前回9月調査時の12月予測値(+1%)も大きく下回った。先行き3月にかけても▲15%と一段の悪化が見込まれている。
  • 主要企業・非製造業の業況判断も、▲20%と前回9月調査の▲15%から悪化した。先行き3月にかけても  ▲22%と「悪い」超幅の拡大が見込まれている。
  • 中小企業についても、製造業の業況判断が▲21%、非製造業も▲25%とともに前回9月調査から悪化した。先行き3月にかけては、製造業、非製造業ともに▲33%と一段の悪化を見込んでいる。なお、主要・中小の製造業・非製造業の4分類全てが二桁マイナスとなったのは、平成8年2月調査以来となる。
  • 主要企業・全産業の設備投資計画は前年度比+4.1%と前回9月調査から小幅下方修正となった。
(出所:日本銀行 12月15日発表)

 【解 説】

 日本経済の現状をみると、個人消費は足踏み状態となっており、鉱工業生産は弱含んでいる。また、家計や企業の景況感には厳しさが増しており、景気はこのところ足踏み状態にあるとみられる。

 総合指標でみると、日銀短観(12月調査)においては、主要・中小の製造業・非製造業全ての分類において業況判断は大きく悪化し、先行き3月にかけても一段の悪化を見込んでおり、企業の景況感が急速に悪化していることを示した。また、景気動向指数(10月)をみると、先行D.I.は55.6%と2か月連続で50%を上回ったものの、一致D.I.は生産活動関連指標の落込み等から10.0%と景気判断の節目とされる50%を2か月ぶりに下回っている。

 個々の項目についてみると、消費関連では11月の実質家計消費支出が前年同月比+1.1%と2か月連続で増加したものの、大型小売店販売額(店舗調整済)は同−2.5%と8か月連続で前年水準を下回った。生産面では11月の鉱工業生産指数は、前月比−4.1%と3か月ぶりに低下し、先行きについても予測指数を用いて10−12月の水準を試算すると、7−9月期に引続き2四半期連続の低下となる。輸出入については、輸出の伸びが輸入の伸びを上回る傾向が続いており、11月の貿易黒字は前年同月比で8か月連続で増加した。雇用面では、11月の完全失業率は3.5%と既往最悪水準の10月から横ばいとなり、10月の有効求人倍率は0.69倍と4か月連続で悪化した。物価面では、11月の全国消費者物価指数は前年同月比+2.1%と先月に比べ0.4%ポイント低下したが、生鮮食品を除くと安定基調にある。

家計部門

〇実質家計消費支出・・・10月は前年同月比+1.1%と2か月連続で増加
《ポイント》
  • 10月の実質家計消費支出は、「教育」が前年同月比2桁の伸びとなったのを始め、「教養娯楽」や「住居」等のプラス寄与が大きく、全体で前年同月比+1.1%と2か月連続の増加となった。
  • 大型小売店販売額(店舗調整済)は、全国的に気温が高めに推移し秋冬物衣料の売れ行きが伸びなかったこと等から、同−2.3%と7か月連続の前年割れとなった。
(出所:総 務 庁 12月4日発表 通商産業省 11月28日発表)

企業部門

〇鉱工業生産・・・11月の生産指数は前月比−4.1%と3か月ぶりの低下
《ポイント》
  • 出荷指数は、前月比−5.3%と2か月連続の低下、在庫指数は同+1.4%と3か月ぶりの上昇となった。
  • 生産予測指数は、9年12月が前月比   +1.4%、10年1月が同+4.2%となった。この予測に基づくと、10-12月期は前期比−1.6%と2四半期連続の低下となる。
  • 通産省は、「このところ生産は弱含みで推移」と判断した。「弱含み」と判断したのは平成7年7月〜10月の期間以来となる。
(出所:通商産業省 12月25日発表)

海外部門

〇貿易収支(通関ベース)・・・11月の通関貿易黒字は前年同月比+58.6%増と8か月連続で増加
《ポイント》
  • 輸出は米国、EU向けを中心に自動車やパソコン等の事務用機器が好調な伸びを続けたことから、全体では前年同月比+6.5%の伸びとなった。
  • 輸入は木材、衣料・同付属品等の減少が大きく、同−4.1%減と43か月ぶりに減少に転じた。 <LI>通関貿易黒字は、前年比+58.6%増の1兆627億円と8か月連続で前年水準を上回った。
(出所:大蔵省 1月6日発表)