月例経済概観


日本経済
総合指標でみる景気の現状

〇11月の景気動向指数(一致D.I.(ディフュージョン・インデックス))は0.0%と2か月連続で50%割れ
先行・一致D.I.の推移

(注)シャドー部分は景気後退期を示す。97年12月は郵政研究所の予測値

 《ポイント》
  • 景気と一致して動き、景気の方向感を示す一致D.I.(ディフュージョン・インデックス)は、11月に0.0%と景気判断の節目とされる50%を2か月連続で下回った。一致D.I.が0.0%となったのは、92年12月以来4年11か月ぶりとなる。また、12月についても現時点では50%を下回るとみられ、3か月連続の50%割れとなる可能性が高いと判断される。
  • 景気に先行して動き、景気の方向性を示す先行D.I.は、11月に16.7%と3か月ぶりで50%を下回った。
  • 11月の結果を受け経済企画庁は、「一致指数が4月以降50%越えと50%割れを繰り返した後、11月は10月に引き続き50%を割っており、生産関連、消費関連の指標が弱含んでいることや雇用情勢が厳しい状況にあることの影響がみられる。」との判断を示した。

(出所:日本銀行 1月27日発表)



 【解 説】

 日本経済の現状をみると、家計や企業の景況感の悪化が個人消費の低調や設備投資の鈍化という形で実際に悪影響を及ぼし始めており、高水準の在庫を背景に鉱工業生産も弱含むなど、景気はこのところ下降基調で推移している。

 総合指標でみると、景気動向指数は、11月の一致D.I.が0.0%と、景気判断の節目とされる50%を2か月連続で下回った。12月についても現時点では50%割れが続く可能性が高いとみられる。また、12月実施の「消費動向調査」、「法人企業動向調査」はともに大幅な悪化となり、足元の家計や企業の景況感が大きく悪化していることを示す内容となった。

 個々の項目をみると、消費関連では12月の実質家計消費支出が前年同月比−5.0%と2か月連続で前年比マイナスとなり、減少幅も消費税率引上げ後で最大となった。また12月の大型小売店販売額(店舗調整済)は、前年同月比−4.3%と9か月連続で前年水準を下回った。生産面では12月の鉱工業生産指数は、前月比+0.8%と上昇したが、11月の大幅減(同−5.0%)からの戻りは鈍く、10−12月期でみても前期比−2.3%と2四半期連続の低下となっている。在庫は高水準にあり、生産は弱含みで推移している。輸出入については、輸出の伸びが輸入の伸びを上回る傾向が依然続いており、12月の貿易黒字は前年同月比で+40.9%と9か月連続で増加した。雇用面では、12月の完全失業率は3.4%と3か月ぶりに改善したものの、四半期でみると10−12月期は3.5%と既往最悪水準となっている。また、12月の有効求人倍率は0.68倍と5か月連続で悪化しており、雇用情勢は総じて厳しい状況が続いている。物価面では、12月の全国消費者物価指数は前年同月比+1.8%と、生鮮果物の値下がり等から上昇率が先月に比べて0.3%ポイント低下した。生鮮食品を除いたベースでみても、同+2.2%と前月と変わらず安定している。


家計部門

〇実質家計消費支出・・・・・12月は前年同月比−5.0%と2か月連続で減少
《ポイント》
  • 12月の実質家計消費支出は、自動車購入費等が落ち込んだ「交通・通信」をはじめ、「住居」、「教養娯楽」等がマイナス寄与となり、前年同月比−5.0%と2か月連続で減少となった。
  • 大型小売店販売額(店舗調整済)は、消費マインドが悪化した影響が表れたとみられ、同−4.3%と9か月連続の前年割れとなった。   
(出所:総 務 庁 2月13日発表       通商産業省 1月29日発表)


企業部門

〇鉱工業生産・・・・・10-12月期の生産指数は前月比−2.3%と2四半期連続の低下
《ポイント》
  • 12月の出荷指数は前月比+0.8%と上昇したが、11月の大幅減(同−5.0%)からの戻りは鈍かった。
  • 四半期でみると10-12月期は、生産が前月比−2.3%と2四半期連続で低下し、在庫率は同+3.2%と3四半期連続で上昇した。
  • 通産省は、「生産は引き続き弱含みで推移」との判断を示した。
(出所:通商産業省 1月29日発表)



海外部門

〇貿易収支(通関ベース)・・・12月の通関貿易黒字は前年同月比+40.9%増と9か月連続で増加
《ポイント》
  • 輸出は米国、EU向けを中心に自動車やパソコン等の事務用機器が好調な伸びを続けたことから、全体では前年同月比+12.9%の伸びとなった。
  • 輸入は+5.6%と2か月ぶりに増加したものの、木材、石油製品等の落ち込みから、1けたの伸びに留まった。
  • 通関貿易黒字は、前年同月比+40.9%増の1兆2,383億円と9か月連続で前年水準を上回った。
(出所:大蔵省 1月22日発表)