月例経済概観


米国経済
総合指標でみる景気の現状

〇実質GDP成長率・・・10-12月期は前年比年率+4.3%
実質GDP需要項目別寄与度
実質GDP需要項目別伸び率の推移

(注)上段は実数、下段の伸び率(四半期)は前年比年率。

 《ポイント》
  • 米国の10−12月期の実質GDPは、前期比年率+4.3%と、年率4%を上回る高い伸びを記録した。一方、GDP価格指数は同+1.5%の低い伸びとなり物価の安定を示唆した。
  • 10−12月期の伸びを需要項目別にみると、設備投資は前期まで2四半期連続で急増した反動から前期比年率−3.6%と24四半期ぶりにマイナスとなったものの、最大の需要項目である個人消費が、前期比年率+3.2%と堅調な伸びを記録したほか、住宅投資が住宅抵当金利の低下等を反映して前期比年率+10.4%の高い伸びとなり、政府支出と在庫投資も各々プラス寄与となった。純輸出については、輸出の伸びが2けたの伸びを記録した一方、輸入の伸びがこれまでの高い伸びから一服したことから4四半期ぶりにプラス寄与となった。

(出所:商務省 1月30日発表)



 【解 説】

 米国経済は拡大している。97年10-12月期の実質GDP(暫定値、季節調整値)は、前期比年率+4.3%と、年率4%を上回る高い伸びを記録した。

 1月の製造業の景気実態を表すNAPM(全米購買部協会)景気総合指数は、52.4と前月比0.7ポイント低下したものの、20か月連続で景気拡大・縮小の分岐点である50を超えており、製造業の景気拡大の持続を示唆した。

 需要面では、12月の小売売上高は、季調済み前月比+0.7%と2か月連続で増加した。設備投資の先行指標とされる12月の非軍需資本財受注(航空機を除く)も、季調済み前月比+1.8%と3か月ぶりに増加した。12月の住宅着工件数は季調済み前月比−0.8%と4か月ぶり減少したものの、戸数では年率換算151.9万戸と4か月連続で150万戸を超える水準で推移している。一方生産面では、12月の鉱工業生産指数は季調済み前月比+0.5%と堅調に推移している。

 11月の貿易・サービス収支(国際収支ベース、季調値)の赤字幅は、前月比−11.6%の80.4億ドルと2か月連続で減少した。地域別貿易収支(通関ベース、原計数)では、対日貿易赤字が42.1億ドルとなり、貿易赤字全体に占める比率は31.8%と、2か月連続で国別赤字トップとなった。

 雇用面では、1月の非農業部門雇用者数は、サービス業を中心に前月比+35.8万人と24か月連続で増加し、増加のペースをみても、97年平均の+26.7万人を上回り堅調に推移している。失業率は4.7%と前月と同水準となり7か月連続で5%台を下回った。

 この間、物価面では、12月の消費者物価は季調済み前月比+0.1%の上昇を記録し、前年同月比でみても+1.7%と11月に続き2か月連続で2%割れとなった。


消  費

〇個人消費(実質GDPベース)・・・・・10-12月期は、前年比年率+3.2%
《ポイント》
  • 最大の需要項目である個人消費は、前期比年率+3.2%と堅調な伸びを記録し、成長寄与度でみても同+2.2%ポイントと最大の成長押し上げ要因となった。
  • 項目別にみると、耐久財が自動車等の増加から前期比年率+2.6%と2か月連続でプラス寄与となったが、非耐久財は食品・衣料の減少で同−0.4%と2か月ぶりにマイナス寄与となった。
  • サービス消費は住宅関連消費や医療の増加から同+5.1%と高い伸びとなった。


設備投資

〇施設投資(実質GDPベース)・・・・・10-12月期は、前期比年率−3.6%
《ポイント》
  • 設備投資は、前期まで2四半期連続で急増した反動から前期比年率−3.6%と91年10-12月期(−4.1%)以来24四半期ぶりにマイナスに転じた。
  • 項目別にみると、全体の約4分の1を占める建設投資が前期比年率−2.7%、約4分の3を占める機械設備投資が同−3.9%と共にマイナスとなった。機械設備投資の中では、コンピューター関連投資は増加したが、産業用機械投資や輸送機械投資は減少した。



外  需

〇輸出(実質GDPベース)・・・10-12月期は、前年比年率+11.3%
《ポイント》
  • 輸出は、財輸出の拡大などで前期比年率+11.3%と2四半期ぶりに2けたの高い伸びとなった。
  • 一方、輸入は、消費財の増加などで同+1.3%と増加したものの4四半期ぶりに1けたの低い伸びとなった。
  • この結果、純輸出は、年率換算−1,414億ドル(92年価格)と赤字幅が縮小し、成長寄与度は+1.3%と4四半期ぶりにプラス寄与となった。