月例経済概観


日本経済
総合指標でみる景気の現状

〇国民所得統計速報・・・10-12月期の実質GDPは前期比−0.2%と2四半期ぶりのマイナス成長
実質GDP成長率(季調済前期比、%)と需要項目別寄与度

実質GDP需要項目別伸び率(寄与度)の推移


(注)括弧内よ数字は寄与度。年度の伸び率は前年度比。

《ポイント》
  • 「四半期別国民所得統計速報(QE)」によると、平成9年10-12月期の実質GDPは季調済前期比−0.2%(年率−0.7%)と消費税率引上げの影響で大幅に落ち込んだ4-6月期(前期比−2.8%)の反動でプラス成長となった7-9月期(前期比+0.8%)から再びマイナス成長に転じた。
  • 需要項目別の寄与度でみると、「内需」は、民間需要が前期比−0.7%ポイント、また公的需要も同−0.0%ポイントと何れも2四半期ぶりにマイナス寄与となった。一方、「外需」は、同+0.6%ポイントと2四半期ぶりにプラス寄与となったが、内需の大幅な落ち込みを相殺するには至らなかった。
  • 経済企画庁調整局の試算によれば、1-3月期が前期比+1.0%の成長となっても9年度はゼロ成長になる。家計や企業の景況感が厳しい状況にあることを考慮すると、平成9年度は23年ぶりのマイナス成長となる可能性が高い。

(出所:経済企画庁 3月13日発表)



 【解 説】

 日本経済の現状をみると、家計や企業の景況感の悪化が個人消費の低調や設備投資の鈍化という形で実際に悪影響を及ぼし始めており、高水準の在庫を背景に鉱工業生産も弱含むなど、景気は引き続き下降基調で推移している。

 総合指標でみると、10-12月期の実質GDPは季調済前期比−0.2%と4-6月期(同−2.8%)の反動でプラス成長となった7-9月期(同+0.8%)から再びマイナス成長に転じた。この結果、1-3月期に前期比+1.0%以上の成長とならなければ、平成9年度は23年ぶりのマイナス成長となる。

 個々の項目をみると、消費関連では1月の実質家計消費支出が前年同月比−4.0%と3か月連続で前年比マイナスとなった。また1月の大型小売店販売額(店舗調整済)は、前年同月比−2.9%と10か月連続で前年水準を下回った。生産面では、1月の鉱工業生産指数は前月比+2.9%と上昇したが、水準でみると大きく落込んだ昨年11月以前の水準に対し戻りは鈍い。また同時に発表された予測指数が先行きの弱含みを見込んでいる(2月:前月比−2.5%、3月:同+0.2%)ほか、在庫も依然高水準にあり、生産は弱含みで推移している。輸出入については、輸出の伸びが輸入の伸びを上回る傾向が依然続いており、1月の貿易黒字は3,860億円となり、前年1月が245億円の赤字であったため、前年同月差では4,100億円強の黒字拡大となった。雇用面では、1月の完全失業率は3.5%と4か月連続で既往最悪となり、1月の有効求人倍率も5か月連続で悪化の0.64倍と、平成7年12月以来の低水準となっている。雇用情勢は総じて厳しい状況が続いている。物価面では、1月の全国消費者物価指数は前年同月比+1.8%と、先月と同じ伸び率となった。生鮮食品を除いたベースでみても、同+2.0%と前月から0.2%ポイント低下しており、物価は引き続き安定している。

(3月13日記)

家計部門

<○実質家計消費支出・・・・・1月は前年同月比−4.0%と3か月連続で減少
《ポイント》
  • 1月の実質家計消費支出は、設備修繕・維持等が落ち込んだ「住居」や、「教養娯楽」、「被服及び履物」等のマイナス寄与が大きく、前年同月比−4.0%と3か月連続で減少となった。
  • 大型小売店販売額(店舗調整済)は、消費マインドの冷え込みが依然続いているとみられ、同−2.9%と10か月連続の前年割れとなった。
(出所:総 務 庁 3月9日発表       通商産業省 2月27日発表)


企業部門

○鉱工業生産・・・・・1月の鉱工業生産は前月比+2.9%と2か月連続の上昇
《ポイント》
  • 1月の鉱工業生産は前月比+2.9%と2か月連続の上昇となった。ただし、生産指数の水準は101.8と、大きく落込んだ昨年11月以前の水準(10月:102.9)に比べ戻りは鈍く、依然生産は弱い動きが続いている。
  • 生産予測指数は、2月が前月比−2.5%、3月が同+0.2%と弱含みの推移が見込まれている。
  • 通産省は、「生産は引き続き弱含みで推移」と前月の判断を踏襲した。
(出所:通商産業省 2月27日発表)


海外部門

○貿易収支(通関ベース)・・・1月は前年同月の赤字から黒字に転じ、黒字は10か月連続で増加
《ポイント》
  • 輸出は米国、EU向けを中心に自動車や電気機器が好調な伸びを続けたことから、全体で前年同月比+9.0%の増加となった。
  • 輸入は、国内需要の不振を反映して、木材、石油製品等が落ち込み、同−2.6%と2か月ぶりに減少した。
  • 通関貿易収支は、3,860億円となり、前年同月の245億円の赤字から黒字に転じ、貿易黒字は10か月連続で前年同月の水準を上回った。
(出所:大蔵省 3月3日発表)