月例経済概観


日本経済
総合指標でみる景気の現状

〇日銀短観(平成10年3月調査)・・・主要企業・製造業の業況判断は▲31%と12月調査(▲11%)から悪化
主要企業・業況判断D.I.の推移


(注)シャドー部分は景気後退期を示す。
業況判断D.I.(「良い」-「悪い」、%ポイント)の前回との比較

(注)括弧内は前回調査時点での予測調査の結果

《ポイント》
  • 日銀短観(企業短期経済観測調査、3月調査)によると、主要企業・製造業の業況判断は、▲31%と前回12月調査の▲11%から大きく悪化した。前回12月調査時の3月予測値では▲15%が見込まれていたが、実際はこれを大きく下回った。先行き6月にかけても▲31%と改善は見込まれていない。
  • 主要企業・非製造業の業況判断も、▲30%と前回12月調査の▲20%から大きく悪化した。先行き6月にかけては、▲24%と「悪い」超幅が若干縮小するに留まると見込まれている。
  • 中小企業についても、製造業の業況判断が▲38%、非製造業も▲37%とともに前回12月調査から大幅に悪化した。製造業の▲38%は平成6年2月調査以来、また非製造業の▲37%は中小企業・非製造業の統計開始(昭和58年5月)以来最悪の水準となる。先行き6月にかけては、製造業が▲44%、非製造業が▲41%と、ともに一段の悪化が見込まれている。

(出所:日本銀行 4月2日発表)



 【解 説】

日本経済の現状をみると、昨年来厳しさを増した家計や企業の景況感が個人消費の低調や設備投資の頭打ち傾向という形で実際に悪影響を及ぼしており、高水準の在庫を背景に鉱工業生産も減少するなど、景気は引き続き下降傾向で推移している。

総合指標でみると、日銀短観(3月調査)は、昨年末から企業の景況感が一段と悪化していることを示す内容となった。また、景気動向指数は、1月の一致D.I.が20.0%と、景気判断の節目とされる50%を4か月連続で下回った。次回2月の一致D.I.も現時点では50%割れが続く可能性が高いとみられる。

個々の項目をみると、消費関連では2月の実質家計消費支出が前年同月比−4.5%と4か月連続でマイナスとなった。2月の大型小売店販売額(店舗調整済み)も前年同月比−5.5%と11か月連続で前年水準を下回っている。生産面では、2月の鉱工業生産指数は季節調整済み前月比−3.3%と3か月ぶりに低下し、在庫も高水準になっている。同時に発表された生産予測指数では、3月は前月比−2.5%、4月も同−2.5%と先行き低下が見込まれており、この予測に基づくと1-3月期は前期比−1.2%と、3四半期連続の低下となる。輸出入については、アジア経済減速の影響を受けて輸出の伸びが鈍化しているものの、国内需要の不振を受けて輸入の伸びが前年同月比マイナスとなっており、2月の貿易黒字は1兆2,784億円、前年同月比では+87.8%と11か月連続で前年同月の水準を上回った。雇用面では、2月の完全失業率は3.6%と既往最悪水準となり、2月の有効求人倍率も6か月連続で悪化の0.61倍と、昭和62年1月以来の低水準となるなど、雇用情勢は厳しさが増している。この間、物価面では、2月の全国消費者物価(生鮮食品を除く総合)は前年同月比+1.8%と、1月から0.2%ポイント低下しており、引き続き安定している。また、3月の国内卸売物価は前年同月比−0.1%と、2月から0.4%ポイント低下しており、弱含みで推移している。                           (4月9日記)



家計部門

<○実質家計消費支出・・・・・2月は前年同月比−4.5%と4か月連続で減少
(注)シャドー部分は景気後退期を示す。
《ポイント》
  • 2月の実質家計消費支出は、10費目中、設備修繕・維持等が落ち込んだ「住居」や、「被服及び履物」、「家具・家事用品」等の8費目がマイナス寄与となり、前年同月比−4.5%と4か月連続で減少となった。
  • 大型小売店販売額(店舗調整済み)は、消費マインドの冷え込みが依然続いているとみられ、同−5.5%と減少幅が再び拡大し、11か月連続の減少となった。
(出所:総 務 庁 4月2日発表 通商産業省 3月27日発表)


企業部門

○鉱工業生産・・・・・2月の鉱工業生産指数は前月比−3.3%と3か月ぶりの低下

(注)シャドー部分は景気後退期を示す。
《ポイント》
  • 出荷指数は前月比−3.6%と3か月ぶりの低下、在庫指数は同+0.5%と4か月連続の上昇となった。
  • 生産予測指数は、3月が前月比−2.5%、4月も同−2.5%と低下が続くと見込まれており、この予測に基づくと1-3月期は前期比−1.2%と3四半期連続の低下となる。
  • 通産省は、前月の「生産は引き続き弱含みで推移」との判断を、「生産は弱含み基調で推移」との表現に変えている。
(出所:通商産業省 3月30日発表)


海外部門

○通関貿易収支・・・・・・2月の通関貿易黒字は前年同月比+87.8%と11か月連続で増加
《ポイント》
  • 輸出は景気堅調な米国、EU向けが好調な伸びを維持したものの、景気減速の影響が顕著なアジア向けが減少したことから、前年同月比+2.6%と伸びが鈍化した。
  • 輸入は、国内需要の不振を反映して、木材、石油製品を始め主要品目が軒並み落ち込み、同−14.9%と大幅な減少となった。
  • この結果、通関貿易収支は、1兆2,784億円となり、前年同月比では+87.8%と11か月連続で前年同月の水準を上回った。
(出所:大蔵省 3月30日発表)