月例経済概観


米国経済
総合指標でみる景気の現状

〇雇用者数の伸び・・・3月の非農業部門雇用者数は、前月比−3.6万人の減少

(注)シャドー部分は景気後退期を示す。
 《ポイント》
  • 3月の非農業部門雇用者数は、前月比−3.6万人と96年1月以来2年2か月ぶりの減少となった。但し、雇用者数の落ち込みは、@年末年始にかけて暖冬のため高水準で推移していた建設業の雇用が反動で減少したこと、A例年3月末から始まるイースターセールが4月にずれたことにより小売業の雇用が減少しサービス生産部門の雇用が一時的に鈍化したこと、などの特殊要因によるものと考えられ特殊要因を除くとそれ程弱い結果ではなかった。1−3月平均では、20万人台の増加が持続しており、雇用の基調は依然堅調に推移していると思われる。失業率は4.7%と2月の4.6%から0.1%ポイント上昇したものの、依然5%を下回る低水準が続いている。
  • インフレ関連指標とされる時間当り平均賃金は、前月比+0.3%の12.63ドルと3か月連続で上昇した。前年同月比でみると+4.0%と2か月連続で4%台に乗せた。    

(出所:労働省 4月3日発表)



 【解 説】

米国経済は拡大している。97年10−12月期の実質GDP(確定値、季節調整値)は前期比年率+3.7%と、96年10−12月期以降5四半期連続で年率3%を上回る景気拡大が続いている。 。

3月の製造業の景気実態を表すNAPM(全米購買部協会)景気総合指数は、54.8と22か月連続で景気拡大・縮小の分岐点である50を超えており製造業の景気拡大の持続を示唆している。

需要面では、2月の小売売上高は、住宅関連消費を中心に好調で季節調整済み前月比+0.5%と4か月連続で増加した。設備投資の先行指標とされる2月の非軍需資本財受注(除く航空機)は、季節調整済み前月比+1.9%と3か月連続で増加した。2月の住宅着工件数は季節調整済み前月比+6.0%の年率換算163.6万戸と87年11月(165.6万戸)以来の高い水準を記録した。生産面では、2月の鉱工業生産指数は季節調整済み前月比+0.0%となったものの、前年同月比では+4.9%と依然高水準にある。  

1月の貿易・サービス収支(国際収支ベース、季節調整値)の赤字幅は、前月比+10.5%の120.4億ドルと2か月連続で増加した。地域別貿易収支(通関ベース、原計数)では、対日貿易赤字が43.6億ドルとなり、貿易赤字全体に占める比率は28.0%と4か月連続で国別赤字トップとなった。

この間、物価面では、2月の消費者物価が季節調整済み前月比+0.1%と落着いた動きを示し、3月の生産者物価は同−0.3%と5か月連続のマイナスとなった。

なお、3月31日のFOMC(連邦公開市場委員会)では政策金利の変更が見送られた。米国の政策金利は97年3月25日のFOMCで引上げられた後、8回連続で据え置きが続いている。

(4月9日記)

消  費

〇小売売上高…2月は、季節調整済み前月比+0.5%と4か月連続で増加

《ポイント》
  • 2月の小売売上高は、季節調整済み前月比+0.5%と4か月連続で増加した。
  • 内訳をみると、耐久財は住宅関連消費が好調で同+0.5%と4か月連続で増加した。
  • 食品、アパレルなどの非耐久財は同  +0.5%と2か月連続で増加した。
  • 3月の消費者信頼感指数は134.3と前月から3.1ポイント低下したものの、依然高水準で推移している。
(出所:商務省 3月12日発表)
コンファレンスボード 3月31日発表)



生  産

〇鉱工業生産指数…2月は、季節調整済み前月比+0.0%
(注)シャドー部分は景気後退期を示す。
《ポイント》
  • 2月の鉱工業生産指数は、季節調整済み前月比+0.0%と1月の同+0.1%に続き低い伸びとなった。但し、水準でみると2月は128.1と1月の128.0から小幅上昇している。1月と2月は低い伸びになったが、その要因には10−12月期の反動という面もあると考えられる。
  • 鉱工業設備稼働率は、前月に比べて0.3%ポイント下落の82.7%と3か月連続で低下した
(出所:FRB 3月17日発表)



住  宅

〇住宅着工件数…2月は、季節調整済み前月比+6.0%の年率換算163.6万戸
《ポイント》
  • 2月の住宅着工件数は、金利低下や暖冬の影響を受けて季節調整済み前月比+6.0%の年率換算163.6万戸と87年11月(165.6万戸)以来の高水準となった。
  • 種別にみると、全体の約8割を占める一戸建が同+4.3%の127.0万戸と2か月連続で増加し、2〜4戸の集合住宅が同+30.8%の6.8万戸と2か月ぶりに、5戸以上の集合住宅も同+9.2%の29.8万戸と2か月ぶりにそれぞれ増加した。
(出所:商務省 3月17日発表)