月例経済概観


日本経済
総合指標でみる景気の現状



《ポイント》
  • 景気と一致して動き、景気の方向感を示す一致D.I.(ディフュージョン・インデックス)は、2月に25.0%と景気判断の節目とされる50%を5か月連続で下回り、景気が下降方向にあることを確認する内容となった。また、次回3月についても現時点では50%を下回るとみられるが、50%を6か月以上連続して下回るのは、前回の景気後退期(平成3年2月〜平成5年10月)中以来のこととなる。
  • 景気に先行して動き、景気の方向感を示す先行D.I.は、2月に22.2%と5か月連続で50%を下回った。
  • 2月の結果を受け経済企画庁は、「一致指数が昨年10月以降連続して50%を割っており、生産関連の指標がこのところ減少していること、消費関連の指標が低調な動きを続けていること、雇用情勢が厳しさを増していることの影響がみられる。」との見解を示した。

(出所:経済企画庁 4月21日発表)



 【解 説】

日本経済の現状をみると、昨年来厳しさを増した家計や企業の景況感が個人消費の低調や設備投資の弱含みという形で実際に悪影響を及ぼしており、鉱工業生産も高水準の在庫を背景に減少し、雇用情勢も急速に厳しさを増すなど、景気は引き続き下降傾向で推移している。

総合指標でみると、景気動向指数は、2月の一致D.I.が25.0%と、景気判断の節目とされる50%を5か月連続で下回った。次回3月の一致D.I.も現時点では50%割れが続く可能性が高いとみられる。また、3月に実施された「消費動向調査」では、消費者態度指数が若干改善したものの依然低水準で推移しており、「法人企業動向調査」においても、国内景気見通しの悪化が続くなど、家計や企業の景況感が冷え込んでいることが示された。

個々の項目をみると、消費関連では3月の実質家計消費支出が前年同月比−5.7%と5か月連続でマイナスとなった。3月の大型小売店販売額(店舗調整済み)も前年同月比−14.9%と12か月連続で前年水準を下回っている。生産面では、3月の鉱工業生産指数は季節調整済み前月比−1.9%と2か月連続で低下し、在庫も高水準が続いている。同時に発表された生産予測指数では、4月は前月比−2.5%、5月は同+1.2%と先行き低下傾向の推移が見込まれている。輸出入については、アジア経済減速の影響を受けて輸出が頭打ちとなっているものの、国内需要の不振を受けて輸入の伸びが前年同月比二桁減となっており、3月の貿易黒字は1兆2,416億円、前年同月比では+55.2%と12か月連続で前年同月の水準を上回った。雇用面では、3月の完全失業率は2月から0.3%ポイント悪化の3.9%と既往最悪水準を更新し、3月の有効求人倍率も7か月連続で悪化の0.58倍と昭和58年7月以来の低水準となるなど、雇用情勢は急速に厳しさが増している。この間、物価面では、3月の全国消費者物価(生鮮食品を除く総合)は前年同月比+1.8%と引き続き安定している。また、4月の国内卸売物価は前年同月比−2.3%と、消費税率引上げの影響が剥落し3月から2.2%ポイント低下しており、弱含みで推移している。(5月12日記)



家計部門

○実質家計消費支出・・・・・3月は前年同月比−5.7%と5か月連続で減少<
《ポイント》
  • 3月の実質家計消費支出は、消費マインドの低迷に加えて、前年3月に生じた駆込み需要の反動減もあって、10費目中「家具・家事用品」、「被服及び履物」等の7費目がマイナス寄与となり、前年同月比−5.7%と5か月連続で減少となった。
  • 大型小売店販売額(店舗調整済み)も、家計消費と同じ要因により、同−14.9%と、大幅でかつ12か月連続の減少となった。
(出所:総 務 庁 5月1日発表 通商産業省 4月28日発表)


企業部門

○鉱工業生産・・・・・3月の鉱工業生産指数は前月比−1.9%と2か月連続の低下

《ポイント》
  • 生産を四半期でみると、1−3月期は前期比−1.4%と3四半期連続低下となった。
  • 生産予測指数は、4月が前月比−2.5%、5月が同+1.2%と低下傾向の推移が見込まれている。
  • 3月の在庫指数は、前月比−0.4%と低下したものの、113.1と依然水準は高い。
  • 通産省は、前月の「生産は弱含み基調で推移」との判断を、「生産は低下傾向」との表現に変えている。
(出所:通商産業省 4月28日発表)


海外部門

○通関貿易収支・・・・・・3月の通関貿易黒字は前年同月比+55.2%と12か月連続で増加
《ポイント》
  • 輸出は景気堅調な米国、EU向けが好調な伸びを維持したものの、景気減速の影響が顕著なアジア向けが減少したことから、前年同月比+1.1%と頭打ち傾向を示した。
  • 輸入は、内需の不振を反映して、木材、石油製品、自動車、食料などが落込み、同−10.5%と2か月連続の二桁減となった。
  • この結果、通関貿易収支は、1兆2,416億円となり、前年同月比では+55.2%と12か月連続で前年同月の水準を上回った。
(出所:大蔵省 5月1日発表)