月例経済概観


欧州経済
総合指標でみる景気の現状

○ドイツ:回復から拡大へ、フランス:拡大、イギリス:拡大テンポが鈍化傾向




 《ポイント》

【ドイツ】
 98年1−3月期のドイツ実質GDP成長率は、8四半期連続プラスの前期比+1.0%と、景気が回復から拡大に転じたことを示唆した(前年同期比+3.0%)。需要項目別にみると、在庫投資が3四半期ぶりに減少したが、建設投資と政府消費が2四半期ぶりに拡大に転じ、機械設備投資が9四半期連続で、個人消費も2四半期連続で拡大したため、内需の寄与度は2四半期連続プラスの+1.5%となった。 他方、外需は、輸入の伸びが高まり、輸出の伸びを上回ったため、寄与度−0.5%と2四半期連続のマイナスとなった。
【フランス】
98年1−3月期の実質GDP成長率は、7四半期連続プラスの前期比+0.6%と、景気拡大の持続を示唆した(前年同期比+3.5%)。需要項目別では、個人消費の5四半期連続の拡大(寄与度+0.4%)や在庫投資の2四半期ぶりの拡大(同+0.5%)等から、内需が寄与度+1.2%と4四半期連続のプラスとなった。他方、外需は、輸入の伸びの拡大等から同−0.6%と7四半期ぶりにマイナス寄与となった。
【イギリス】
98年1−3月期の実質GDP成長率(要素価格ベース)は、24四半期連続プラスの前期比+0.5%となり、景気拡大の持続を示した(前年同期比+2.9%)が、伸びは前期よりも鈍化した。需要項目別では、景気拡大を主導する個人消費が寄与度+0.7%と好調を続け、在庫投資が同+0.7%となるなど、内需の寄与度が+1.5%に達した(1−3月期の外需の内訳は未発表)。なお、英中銀は6月4日に政策金利のレポ金利(市場金利の主要調節手段として用いられているもの)を約7か月ぶりに0.25%引上げ、7.5%とした。 

(出所:独連邦統計庁、仏国立経済統計研究所、英中央統計局)



【解説:ドイツ経済】

 ドイツ経済は回復から拡大に転じ、失業率も昨年末の11.8%(統一後最悪)から5月の11.2%に低下した。
4月の生産関連の指標をみると、鉱工業生産が105.8(91年平均=100)と既往最高の前月を−0.4%下回り、IFO景況指数(旧西独地域)も98.7と前月より0.2ポイント低下したものの、ともに高水準を持続した。製造業新規受注も、前月比+0.6%の108.4と2か月ぶりに増加し、既往最高水準を更新した。
 需要関連の指標を内外需別にみると、内需では、4月の国内資本財新規受注が前年同月比+6.6%と4か月連続で前年を上回り、設備投資の回復傾向を示唆したが、個人消費面では、1−3月期の小売売上数量が前年同期比−0.1%とほぼ前年と同水準にとどまるなど、なお盛り上がりに欠けている。これに対し、好調の続く外需では、3月の貿易黒字が134億マルクと5か月連続で前年を上回ったほか、4月の国外向け製造業新規受注も前年同月比+7.3%と26か月連続で前年を上回った。
 他方、物価面では、付加価値税率引上げ(15→16%)もあって4月には消費者物価が前年同月比+1.4%と若干伸びを高めたが、生産者物価が同+0.3%と伸びを低め、落ち着いた動きを示した。

(6月12日記)