月例経済概観


金融市場
国内金利
  • 5月の無担保コール翌日物金利は、0.4%台前半を中心に安定的に推移した。上旬は、レジャー資金の還流などから低下した。中旬は、日銀が朝方の調節としては1年8か月ぶりのきつめ調節を行うなど積み上を圧縮したが、積み進捗が順調だったため波乱はなかった。下旬は日銀が再び積み上を多めに維持し、月末にやや強含んだ他は安定的に推移した。
     (無担保コール翌日物加重平均金利:0.47% 5月29日現在)
  • 5月上旬のCD3か月物金利は、日銀副総裁の「利下げはそれなりの効果がある」との発言から金融緩和強化観測に火がついて、昨年11月以来の0.5%台まで急低下した。中下旬は0.55-0.56%で安定的に推移した。
     (CD3か月物金利:0.56% 5月29日現在)
  • 5月の国債指標銘柄利回り(業者間)は、要人発言や日銀金融政策決定会合議事要旨を受けた金融緩和強化観測や、デフレ懸念など悲観的景況感による金利先高感の後退、資金運用難・信用リスク敬遠や6月の国債大量償還などを背景とした根強い投資家の需要などから、連日史上最低利回りを更新して大幅に低下した。上旬は、前月末に国債入札の好調などを受け低下した流れを受けて急速に低下して1.4%を割り込み、さらに日銀副総裁の「利下げはそれなりの効果がある」との発言から金融緩和強化観測に火がついて、一段と低下ペースを早めた。中下旬はやや低下ペースも落着き、利食いや株価の上昇、ムーディーズによる邦銀格下げなどから数度の反発もあったが、卸売物価の低下、日銀総裁の発言、日銀金融政策決定会合議事要旨の公表、失業率の悪化などから、月末には一時1.2%を割り込むなど、低下を続けた。
    (国債指標銘柄業者間利回り終値:1.205% 5月29日現在)


国内株式


  • 5月上旬の株価は、企業の3月期決算発表のピークを控え見送りムードが広がった上に、恒久減税に消極的な要人発言や上場企業の債務超過、アジア危機再燃懸念等が加わって15,100円台まで下落した。
  • 中旬は、サミットを見極めるムードが広がった一方、大手企業の買収や合弁会社設立の報道や自社株買い企業の増加等を受け、個別銘柄が買われ15,300円前後でもみ合い底堅い展開となった。その後、インドネシアの混乱が終息に向かうとの観測から上昇に転じた。
  • 下旬は、3月期決算結果が極端に悪化しなかったことやインドネシアのスハルト大統領の辞任等を受け15,800円台まで上昇した。その後、円安の進行や国債金利の低下等から弱含む場面もあったが、概ね15,700円前後でもみ合った。  (日経平均株価終値:15,670.78円 5月29日現在)


為  替
  • 5月上旬のドル・円相場は、日本の連休で小動きで始まったが、その後米財務長官の発言で131円台に弱含み、投信設定や日経平均の下落から133円台まで反発した。
  • 中旬は、インドネシアの暴動激化や日本の長期金利低下から134円台まで上昇し、さらにサミットで為替水準についての言及がなかったことなどから136円台まで上昇した。
  • 下旬は、インドネシア情勢が小康をみたことなどから134円台まで反落したものの、米財務長官が円安容認との報道で137円台に反発し、さらにパキスタンの核実験で「有事のドル買い」が出るなどして139円台まで上昇した。

      (ドル・円レート東京終値:138.70/73円 5月29日)



米国金融
  • 5月上旬の長期金利(30年物国債利回り)は、雇用統計で失業率が約28年ぶりの低水準になったことからインフレ懸念が台頭し上昇した。中旬は物価の落着き等から低水準で安定的に推移した。下旬はドル相場の上昇やアジア株の下落等を受けた「質への逃避買い」が入り4月3日以来約2か月ぶりに5.8%を下回った。
    (30年物国債利回り終値:5.798% 5月29日現在)
  • 5月上旬のNYダウは、インフレなき成長が続いているとの見方から上昇した後、利上げ懸念が再燃し低下した。その後、物価の落着き等を背景に13日には終値で初の9,200ドル台に乗せた。下旬はアジア経済の先行き不透明感や企業業績に対する懸念等から利食い売りが膨らみ9,000ドル割れとなった。
    (NYダウ終値:8,899.95ドル 5月29日現在)


原  油


  • 5月上旬のWTI原油先物価格は、サウジアラビア、ベネズエラ、メキシコの3カ国が原油の追加減産について協議するのではとの噂から16.13ドルまで上昇した。しかし、この期待がはずれたことや、ベネズエラの油田スト回避などから15.13ドルまで下落した。
  • 中旬は、OPEC諸国による追加減産の可能性などから15.00ドル付近でもみ合っていたが、米国の原油在庫過剰から期近6月限は19日の納会に向けて売られ、12.96ドルと88年10月以来の安値をつけた。20日に新たに期近となった7月限は14.18ドルであった。
  • 下旬は、中旬の下げに対する買い戻しから上昇し、月末には、産油国が追加減産に向けた協議を開始したとの報道や、米国の製油所火災の噂などから15ドル台を回復した。
    (WTI原油期近物終値:15.20ドル 5月29日現在)