月例経済概観


日本経済
総合指標でみる景気の現状

○国民所得統計速報・・・1-3月期の実質GDPは前期比−1.3%と2四半期連続のマイナス成長


《ポイント》
  • 「四半期別国民所得統計速報」によると、平成10年1-3月期の実質GDPは季調済み前期比−1.3%(年率−5.3%)と昨年10-12月期(前期比−0.4%)に続き2四半期連続のマイナス成長となった。
  • 1-3月期の実質経済成長率前期比−1.3%を需要項目別の寄与度でみると、「内需」は、消費と住宅投資が前期比プラスに転じたものの、設備投資の落ち込みから民間需要は前期比−0.8%ポイントとなったほか、公的需要も同−0.2%ポイントとなり、全体で−1.0%ポイントのマイナス寄与となった。一方、「外需」も、輸出の落ち込みなどから同−0.4%ポイントと2四半期ぶりにマイナス寄与となった。
  • この結果、平成9年度の実質GDPは前年度比−0.7%と、昭和49年度(同−0.5%)以来23年ぶりのマイナス成長となった。

(出所:経済企画庁 6月12日発表)



 【解 説】

日本経済の現状をみると、個人消費が低調に推移し、設備投資が弱含み、住宅投資も低水準で推移するなど最終需要の停滞が続いている。また、その影響により、鉱工業生産が減少しているほか、雇用情勢も更に厳しさを増しており、景気は引き続き下降傾向で推移している。

総合指標でみると、平成10年1-3月期の実質GDPは、季節調整済み前期比−1.3%と平成9年10-12月期に引き続き2四半期連続で前期比マイナスとなった。この結果、平成9年度の実質GDPは前年度比−0.7%と、昭和49年度以来23年ぶりのマイナス成長となった。

個々の項目をみると、需要面では4月の実質家計消費支出が前年同月比−2.1%と6か月連続でマイナスとなり、駆込み需要の反動で落ち込んだとみられる前年4月の水準を更に下回ったほか、4月の新設住宅着工戸数が季節調整済み年率換算値で123.8万戸と、昭和60年9月以来の低水準となっている。一方、生産面では、4月の鉱工業生産指数が、高水準の在庫を背景に、季節調整済み前月比−1.1%と3か月連続で低下した。輸出入については、輸出がアジア経済減速の影響を受けて前年同月比−1.8%と33か月ぶりに前年比マイナスとなった一方、輸入も国内需要の不振から前年比二桁減が続いており、この結果4月の貿易黒字は、前年同月比+51.7%と13か月連続で前年同月の水準を上回った。雇用面では、4月の完全失業率が3月から0.2%ポイント悪化の4.1%と3か月連続で既往最悪水準を更新し、昭和28年の現行統計開始以降初めて4%台となるなど、雇用情勢は更に厳しさが増している。この間、物価面では、4月の全国消費者物価(生鮮食品を除く総合)は、消費税率引上げの影響が一巡したこと等により3月から1.6%ポイント低下し、前年同月比+0.2%と引き続き安定している。また、5月の国内卸売物価は前年同月比−2.3%と、弱含みで推移している。 (6月12日記)



家計部門

○実質家計消費支出・・・・・4月は前年同月比−2.1%と6か月連続で減少

《ポイント》
  • 4月の実質家計消費支出は、10費目中5費目がプラス寄与となったものの、「住居」、「被服及び履物」等5費目のマイナス寄与が大きく、前年同月比−2.1%と6か月連続で減少となった。
  • 大型小売店販売額(店舗調整済み)は、昨年4月が駆込み需要の反動で大きく落ち込んだことの反動等から、同+3.9%と、13か月ぶりに増加した。
(出所:総 務 庁 6月4日発表       通商産業省 5月28日発表)


企業部門

○鉱工業生産・・・・・4月の鉱工業生産指数は前月比−1.1%と3か月連続の低下

《ポイント》
  • 出荷指数は前月比−2.8%と3か月連続で低下し、在庫指数は前月比+0.5%と2か月ぶりに上昇した。
  • 生産予測指数は、5月が前月比+0.4%、6月が同+1.5%と、このところの低下が一服すると見込まれている。
  • 通産省は、「生産はこのところ低下傾向にあり、在庫、在庫率も高水準にあることから、今後の動向を注視していく必要がある。」との判断を示した。
(出所:通商産業省 5月28日発表)


海外部門

○通関貿易収支・・・・・・4月の通関貿易黒字は前年同月比+51.7%と13か月連続で増加
《ポイント》
  • 輸出は景気堅調な米国、EU向けが好調な伸びを維持したものの、景気減速の影響が顕著なアジア向けが減少したことから、前年同月比−1.8%と33か月ぶりにマイナスとなった。
  • 輸入は、内需の不振を反映して木材などが落込み、同−13.7%と3か月連続の二桁減となった。
  • この結果、通関貿易収支は、1兆2,242億円となり、同+51.7%と13か月連続で前年同月の水準を上回った。
(出所:大蔵省 6月1日発表)