月例経済概観


米国経済
総合指標でみる景気の現状

〇雇用者数の伸び・・・5月の非農業部門雇用者数は、前月比+29.6万人の増加


 《ポイント》
  • 5月の非農業部門雇用者数は、前月比+29.6万人の増加となった。5月分の公表に伴い、3月の増加数が−2.4万人から+8.2万人、4月が+26.2万人から+30.2万人へと上方修正され、合計では+14.6万人上方修正された。四半期ベースでみると、雇用者数の増加ペースは96年1−3月期以降20万人を上回る増加が続いているが、4−5月平均は+29.9万人と最近のトレンドを上回る結果となった。一方、失業率は4.3%と前月に続き70年2月(4.2%)以来約28年ぶりの低水準となった。
  • インフレ関連指標とされる時間当り平均賃金は、前月比+0.3%の12.73ドルと小幅上昇に留まったものの、前年同月比でみると+4.3%と4か月連続で4%台に乗せた。     

(出所:労働省 6月5日発表)



【解 説】

米国経済は拡大している。98年1−3月期の実質GDP(速報値、季節調整値)は前期比年率+4.8%と、97年1−3月期以降4四半期ぶりに年率4%を上回る高い伸びを記録した。

5月の製造業の景気実態を表すNAPM(全米購買部協会)景気総合指数は、51.4と24か月連続で景気拡大・縮小の分岐点である50を超えており製造業の景気拡大の持続を示唆している。

需要面では、5月の小売売上高は、自動車販売が好調で季節調整済み前月比+0.9%と7か月連続で増加した。設備投資の先行指標とされる4月の非軍需資本財受注(除く航空機)は、季節調整済み前月比−3.0%と5か月ぶりに減少したものの、前年同月比では+9.3%と水準としては依然高い状況にある。4月の住宅着工件数は季節調整済み前月比−2.3%と2か月連続で減少したものの、戸数でみると年率換算153.8万戸と8か月連続で150万戸を上回る水準を記録した。生産面では、4月の鉱工業生産指数は季節調整済み前月比+0.1%と2か月連続で増加した。  

3月の貿易・サービス収支(国際収支ベース、季節調整値)の赤字幅は、前月比+7.0%の130.3億ドルと4か月連続で増加し、現行統計開始(92年1月)以来の最大額を更新した。地域別貿易収支(通関ベース、原計数)では、対日貿易赤字が57.6億ドルとなり、貿易赤字全体に占める比率は35.6%と6か月連続で国別赤字トップとなった。

この間、物価面では、4月の生産者物価が季節調整済み前月比+0.2%と落着いた動きを示し、消費者物価も同+0.2%と安定的に推移している。

なお、5月19日のFOMC(連邦公開市場委員会)では政策金利の変更が見送られた。米国の政策金利は97年3月25日のFOMCで引上げられた後、9回連続で据え置きが続いている。

(6月12日記)

消  費

〇小売売上高…5月は、季節調整済み前月比+0.9%と7か月連続で増加

《ポイント》
  • 5月の小売売上高は、季節調整済み前月比+0.9%と7か月連続で増加した。
  • 内訳をみると、耐久財は自動車販売が好調で同+1.7%と2か月連続で増加した。
  • 食品、アパレルなどの非耐久財は同  +0.4%と5か月連続で増加した。
  • 4月の消費者信頼感指数は135.2と前月から2.0ポイント低下したものの、依然高水準で推移している。
(出所:商務省 6月11日発表) コンファレンスボード 5月26日発表)


 生     産

〇鉱工業生産指数…4月は、季節調整済み前月比+0.1%

《ポイント》
  • 4月の鉱工業生産指数は、季節調整済み前月比+0.1%と2か月連続で上昇した。業種別にみると、鉱業が同−0.2%と3か月連続で、公益事業が同−1.9%と2か月ぶりにそれぞれ低下したものの、全体の約87%を占める主力の製造業は同+0.3%と2か月ぶりに上昇した。前年比でみても+3.8%と堅調に推移している。
  • 鉱工業設備稼働率は、前月比−0.3%ポイント下落し81.9%となった。
(出所:FRB 5月15日発表)


物     価

〇物価指数…4月の生産者物価(最終財)は、季節調整済み前月比+0.2%、消費者物価は同+0.2%
《ポイント》
  • 4月の生産者物価(最終財)は、タバコ価格の上昇等から季節調整済み前月比 +0.2%と7か月ぶりに上昇したが、前年同月比では−1.2%と7か月連続でマイナスが続いている。
  • 4月の消費者物価は、季節調整済み前月比+0.2%となった。前年同月比でみても+1.4%と、昨年11月に10年10か月ぶりに2%を割り込んだ後も低下基調で推移している。
(出所:労働省 5月13、14日発表)