月例経済概観


金融市場
国内金利
  • 6月の短期金利は、上旬および中旬は安定的に推移したものの、下旬に入ると大手銀行の資金繰り悪化の噂などから金融不安再燃が懸念されて、金利上昇圧力が強まった。  無担保コール翌日物金利は、上旬および中旬は0.40-0.48%で安定的に推移した。下旬に入り金利が強含むと日銀は積み上を拡大したが、直接の誘導対象でないトムネ(翌日スタートの翌日物)の金利が1%前後まで急上昇するなどしたため、日銀は月末にかけて3兆円を超える大幅な緩め調節を実施し、翌日物金利は0.3%台に急低下した。
    (無担保コール翌日物加重平均金利:0.34% 6月30日現在)
  • CD3か月物金利は、上旬および中旬は0.53-0.56%で安定的に推移した。下旬に入ると出合いにくくなり、月末にかけては3か月ものが9月期末越えとなることもあって、大幅にレンジを上げて出合った。
    (CD3か月物金利:0.75% 6月30日現在)
  • 6月上旬の国債指標銘柄利回り(業者間)は、先物の限月交代絡みで買い進まれ一時史上最低となる1.115%まで達したが、その後先物中心に1.290%まで売られ、すぐに1.2%強まで買い戻されるなど、大きく上下した。中旬は、大口の先物売りと押し目買いなどによる荒い動きを経て、ムーディーズが日本国債を格下げとの噂、円の急騰、大手銀行の資金繰り悪化の噂から金融不安再燃が連想されたことなどから上昇し、一時1.315%に達した。下旬は新発長期国債入札が好調だったことなどから1.2%割れまで低下した後、短期金利の上昇を嫌気したことや恒久減税に絡む報道、株価の上昇などから上昇した。
    (国債指標銘柄業者間利回り終値:1.330% 6月30日現在)


国内株式


  • 6月上旬の株価は、大手証券と米国金融グループとの資本提携の報道等から一時15,700円台に乗せたが、一段の円安や金利低下、金融システム不安の再燃等を受け下落し概ね15,300-500円で推移した。
  • 中旬は、急速な円安進行やアジア株式市場の低迷等からアジア向け債権の不良化が懸念され15,000円を割り込み、さらに97年度GDPが戦後最悪のマイナス成長との発表や、大手銀行の資金繰り悪化の噂等から一時14,700円を下回り地合いが悪化した。その後、日米協調介入による円の急騰等をきっかけに15,000円台を回復した。
  • 下旬は、不良債権処理や金融業界再編の動きを見守りつつもみ合った。その後、円が介入前の水準に戻ると一時15,000円を割ったが、月末にかけ長銀と住友信託の合併報道、再度の円の上昇、恒久減税に前向きな要人発言等を受け15,800円台まで上昇した。

     (日経平均株価終値:15,830.27円 6月30日現在)



為  替
  • 6月上旬のドル・円相場は、日本の株価下落やG7蔵相代理会合(緊急通貨会議)開催との報道などから130円台後半で上下した後、140円台に上昇した。
  • 中旬は、「介入の効果は一時的」との米財務長官の発言などから協調介入警戒感が後退し144円台まで急騰、その後さらに年初来高値となる146.75円まで上昇した。しかしその後は利食い売り、米財務副長官来日との報道、2年10か月ぶりの日米協調介入などから連日乱高下を繰り返しつつレンジを急速に下げ、一時135円を割り込む局面もあった。
  • 下旬は、緊急通貨会議への失望感や日本の金融問題への懸念などから連日上昇し一時143.40円に達したが、恒久減税に前向きな要人発言等から急落した。

      (ドル・円レート東京終値:139.94/96円 6月30日)



米国金融
  • 6月上旬の長期金利(30年物国債利回り)は、ドル相場の上昇やアジア株の軟調等を受けた「質への逃避買い」から低下した。中旬も資金シフトが続き15日には30年債としての史上最低水準(5.579%)を更新した。下旬も為替動向に左右される中、ロシア市場の動揺等から「質への逃避買い」が入り低水準で推移した。
    (30年物国債利回り終値:5.624% 6月30日現在)
  • 6月上旬のNYダウは、インフレなき成長が続いているとの見方から9,000ドル台を回復した。中旬はアジア経済の減速に伴う米企業業績への不安が再燃し8,700ドル台へ低下した。下旬は第2四半期の企業業績が懸念されたほど悪くないとの期待感や四半期末を意識した買いが入って8,900ドル台へ上昇した。
    (NYダウ終値:8,952.02ドル 6月30日現在)


原  油


  • 6月上旬のWTI原油先物価格は、4日にサウジアラビア、ベネズエラ、メキシコが7月から日量45万バレルの追加減産を行うことで合意し15.12ドルまで上昇した。しかし、減産量が少なく、他の産油国の追随も少なかったことから、その後は13ドル台に下落した。
  • 中旬は、供給過剰懸念が続き、イラクに対する国連制裁が解除に向かうとの観測もあり86年7月以来の11.56ドルまで下落した。その後も、ロシアの輸出削減表明や米石油協会統計等での原油在庫減少から一時12.60ドルまで上昇した以外は、11ドル台で推移した。
  • 下旬は、24日のOPEC総会で7月から日量135万5千バレルの第2次減産が決まり14.60ドルまで上昇した。その後は、供給過剰は当面は解消されないとの見方もあり、14ドル台前半で推移した。

    (WTI原油期近物終値:14.18ドル 6月30日現在)