月例経済概観


日本経済
総合指標でみる景気の現状
○日銀短観(平成10年6月調査)・・・主要企業・製造業の業況判断は▲38と3月調査(▲31)から悪化


《ポイント》
  • 日銀短観(企業短期経済観測調査、6月調査)によると、主要企業・製造業の業況判断は、▲38と前回3月調査の▲31から更に悪化した。前回3月調査時の6月予測値は▲31であったが、実際はこれを下回った。先行き9月については▲34と小幅ながら改善を見込んでいる。
  • 主要企業・非製造業の業況判断は▲28と前回3月調査の▲30に比べると小幅改善した。先行き9月についても▲23と依然マイナスが続くものの、若干の改善が見込まれている。
  • 中小企業については、製造業の業況判断が▲49、非製造業についても▲42といずれも前回3月調査から悪化している。製造業の▲49は昭和50年5月調査以来、非製造業の▲42は中小企業・非製造業の統計開始(58年5月)以来最悪の水準である。先行き9月についても、製造業は▲53、非製造業は▲43とともに一段の悪化が見込まれている。 

(出所:日本銀行 6月29日発表)



 【解 説】

日本経済の現状をみると、個人消費が低調に推移し、設備投資が弱含み、住宅投資も低水準で推移するなど最終需要の停滞が続いている。また、その影響により、鉱工業生産が減少しているほか、雇用情勢も非常に厳しい状況が続いており、景気は後退している。

総合指標でみると、日銀短観(6月調査)は、企業の景況感が依然として冷え込んだ状況にあることを示す結果となった。また、景気動向指数は、4月の一致D.I.が10.0%と、景気判断の節目とされる50%を9か月連続で下回った。次回5月の一致D.I.も引き続き50%を下回る可能性が高いとみられる。

個々の項目をみると、需要面では5月の実質家計消費支出が前年同月比−0.6%と7か月連続のマイナスとなり、5月の新設住宅着工戸数が季節調整済み年率換算値で125.2万戸と依然低水準となったほか、設備投資の先行指標とされる4月の機械受注(船舶・電力を除く民需)が季節調整済み前月比−16.8%と引き続き弱含みの推移となった。一方、生産面では、5月の鉱工業生産指数が、高水準の在庫を背景に、季節調整済み前月比−2.0%と4か月連続で低下した。輸出入については、輸出がアジア経済減速の影響を受けて前年同月比−1.5%と2か月連続で前年比マイナスとなった一方、輸入も国内需要の不振から前年比二桁減が続いており、この結果5月の通関貿易黒字は、前年同月比+66.5%と14か月連続で前年同月の水準を上回った。雇用面では、5月の完全失業率が4月と同じ既往最悪の4.1%となるなど、雇用情勢は非常に厳しい状況が続いている。この間、物価面では、5月の全国消費者物価(生鮮食品を除く総合)は、前年同月比0.0%と引き続き安定している。また、6月の国内卸売物価は前年同月比−2.1%と、弱含みで推移している。 (7月10日記)



家計部門

○実質家計消費支出・・・・・5月は前年同月比−0.6%と7か月連続で減少

《ポイント》
  • 5月の実質家計消費支出は、10費目中5費目がプラス寄与となったものの、「住居」、「教育」、「食料」等5費目のマイナス寄与が大きく、前年同月比−0.6%と7か月連続で減少となった。
  • 大型小売店販売額(店舗調整済み)は、同 −0.9%と、2か月ぶりに減少した。
  • いずれも駆込み需要の反動で落ち込んだ前年同月の水準を更に下回った。
(出所:総 務 庁 7月2日発表       通商産業省 6月29日発表)


企業部門

○鉱工業生産・・・・・5月の鉱工業生産指数は前月比−2.0%と4か月連続の低下

《ポイント》
  • 出荷指数は前月比+0.2%と上昇した。在庫指数は同−1.7%と2か月ぶりで低下したものの、106.7と依然水準は高い。
  • 生産予測指数は、6月が前月比+1.8%、7月が同+0.3%と、このところの急速な低下が一服すると見込まれている。
  • 通産省は、「生産は低下傾向にあり、在庫、在庫率も高水準にあることから、今後の動向を注視していく必要がある。」との判断を示した。
(出所:通商産業省 6月29日発表)


海外部門

○通関貿易収支・・・・・・5月の通関貿易黒字は前年同月比+66.5%と14か月連続で増加
《ポイント》
  • 輸出は景気堅調な米国、EU向けが好調な伸びを維持したものの、景気減速の影響が顕著なアジア向けが減少したことから、前年同月比−1.5%と2か月連続のマイナスとなった。
  • 輸入は、内需の不振を反映して木材などの落込みが続いており、同−16.2%と4か月連続の二桁減となった。
  • この結果、通関貿易黒字は、1兆2,184億円、前年同月比では+66.5%と14か月連続で前年同月の水準を上回った。
(出所:大蔵省 6月29日発表)