日 本 経 済

景 気 の 現 状

○国民所得統計速報・・・4-6月期の実質GDPは前期比−0.8%と3四半期連続のマイナス成長

実質GDP成長率(季調済み前期比、%)と需要項目別寄与度
平成
8年度
平成
9年度
9年度
7-9月

10-12月

1-3月
10年度
4-6月
実質国内総生産 前年比 3.2 ▼0.7 0.8 ▼0.4 ▼1.3 ▼0.8
国内民需寄与度 (3.7) (▼1.6) ()0.7 (▼0.9) (▼0.7) (▼1.5)
民間最終消費前年比 2.8 ▼1.1 1.7 ▼1.0 0.3 ▼0.8
民間住宅前年比 13.7 ▼21.1 ▼10.9 ▼4.2 1.7 ▼1.0
民間企業設備前年比 9.1 0.7 1.1 0.0 ▼5.2 ▼5.5
民間在庫寄与度 (▼0.1) (0.1) (0.0) (▼0.1) (▼0.0) (▼0.1)
公的需要寄与度 (▼0.2) (▼0.6) (0.1) (▼0.0) (▼0.2) (▼0.0)
政府最終消費前年比 1.0 ▼0.0 0.7 1.4 ▼0.6 ▼0.6
公的固定資本前年比 ▼2.7 ▼7.2 1.2 ▼1.8 ▼1.9 0.1
政府在庫寄与度 (▼0.0) (0.0) (▼0.0) (0.0) (0.0) (0.0)
外需寄与度 (▼0.4) (1.5) (▼0.1) (0.6) (▼0.4) (0.7)
輸出前年比 5.1 9.0 ▼1.5 2.7 ▼4.2 ▼0.4
輸入前年比 8.7 ▼2.9 ▼1.1 ▼1.7 ▼1.4 ▼6.8

実質GDP需要項目別伸び率(寄与度)の推移

《ポイント》
・「四半期別国民所得統計速報」によると、平成10年4−6月期の実質GDPは季節調整済み前期比−0.8%(年率−3.3%)と現行統計開始(昭和30年)以来初めて3四半期連続のマイナス成長となった。
・4−6月期の伸びを需要項目別の寄与度でみると、最大の需要項目である消費が2四半期ぶりにマイナス寄与となったほか、住宅投資や設備投資もマイナス寄与となり民間需要は前期比−1.5%ポイントとなった。また、公的需要も同−0.0%ポイントとなり、「内需」は−1.6%ポイントのマイナス寄与となった。一方、「外需」は、輸出の伸びが減少したものの、輸入の伸びがそれ以上に減少したため同+0.7%ポイントと2四半期ぶりにプラス寄与となった。

(出所:経済企画庁 9月11日発表)

【解 説】
日本経済の現状をみると、個人消費が低迷しているほか、住宅投資も低水準で推移し、設備投資の動きも鈍くなるなど最終需要の弱い状況が続いている。このため、鉱工業生産が減少傾向にあるほか、雇用情勢も極めて厳しい状況にあり、景気は後退局面が続いている。 総合指標でみると、4−6月期の実質GDPは、季節調整済み前期比−0.8%と現行統計開始(昭和30年)以来初めて3四半期連続で前期比マイナスとなった。また、6月の景気動向指数では、一致D.I.が30.0%と、景気判断の節目とされる50%を11か月連続で下回った。6月に実施された「法人企業動向調査」でも、国内景気の見通しの悪化が続くなど企業のマインドが冷え込んでいることが示唆された。 需要面では、7月の実質家計消費支出は前年同月比−3.4%と9か月連続のマイナスを記録した。7月の新設住宅着工戸数は季節調整済み年率換算値で110.0万戸と昭和58年5月(同101.9万戸)以来15年2か月ぶりの低水準となった。設備投資の先行指標とされる7月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は季節調整済み前月比−3.7%と2か月ぶりに減少に転じた。一方生産面では、7月の鉱工業生産指数は季節調整済み前月比−0.8%と2か月ぶりに低下した。また、7月の在庫率指数(=在庫/出荷)は、出荷指数、在庫指数が共に低下したため同0.0%と横ばいとなったが、水準でみると依然高水準が続いている。 7月の通関貿易黒字は、輸出が前年同月比+6.5%と2か月連続で増加した一方、輸入については、同−5.6%と7か月連続で減少したため同+56.4%と16か月連続で前年同月の水準を上回った。 雇用面では、7月の完全失業率は4.1%と既往最悪となった6月(4.3%)より僅かに改善したものの、就業者数が10万人減少したほか、7月の有効求人倍率も11か月連続悪化の0.50倍と既往最悪を更新するなど、雇用情勢は極めて厳しい状況が続いている。 この間、物価面では、7月の全国消費者物価(生鮮食品を除く総合)は、前年同月比−0.1%と安定している。また、7月の国内卸売物価は前年同月比−2.2%と、弱含みで推移している。

(9月11日記)



家 計 部 門

○実質家計消費支出・・・・・7月は前年同月比−3.4%と9か月連続で減少

(注)シャドーは景気後退期を示す。


《ポイント》
・7月の実質家計消費支出は、前年同月比 −3.4%と9か月連続で減少となった。費目別にみると、「家具・家事用品」がプラス寄与となったものの、「教育」等10費目中7費目がマイナス寄与となった。
・大型小売店販売額(店舗調整済み)は、同−3.9%と3か月連続で減少した。業態別には、百貨店が同−4.1%、スーパーも同−3.7%とそれぞれ3か月連続で減少した。

(出所:総 務 庁 9月3日発表 通商産業省 8月31日発表)



企 業 部 門

○鉱工業生産・・・・・7月の鉱工業生産指数は前月比−0.8%と2か月ぶりに低下

(注)シャドーは景気後退期を示す。10年8、9月の点は予測指数。
《ポイント》
・出荷指数は前月比−0.6%と低下した。在庫指数も同−0.8%と3か月連続で低下したものの、依然高水準にある。
・生産予測指数は、8月が前月比−0.4%、9月が同+2.5%と、このところの急激な低下が一服すると見込まれている。 ・通産省は、「生産は低下傾向」にあり、「在庫調整に進展がみられる」ものの、「在庫、在庫率も高水準」にあるとし、5、6月のの判断に在庫調整の進展を加えた。

(出所:通商産業省 8月31日発表)



海 外 部 門

○通関貿易収支・・・・・・7月の通関貿易黒字は前年同月比+56.4%と16か月連続で増加


《ポイント》
・輸出はアジア向けの減少が続いているものの、景気堅調な米国、EU向けが好調な伸びを維持していることにより、前年同月比+6.5%と2か月連続のプラスとなった。
・輸入は、内需の不振を反映して木材などの落込みが続いており、同−5.6%と7か月連続で前年同月を下回った。
・この結果、通関貿易黒字は、1兆3,127億円、前年同月比では+56.4%と16か月連続で前年同月の水準を上回った。

(出所:大蔵省 8月31日発表)