米 国 経 済


景気の現状

〇雇用者数の伸び・・・8月の非農業部門雇用者数は、前月比+36.5万人の増加

(注)シャドーは景気後退期を示す。

《ポイント》
・8月の非農業部門雇用者数は、前月比+36.5万人と7月の同+6.8万人から伸び幅が拡大した。なお、GM社のストライキ(6月5日〜7月28日)の影響により7月の雇用者数の伸びは15.0万人押し下げられており、逆に8月はスト終結の影響でその分嵩上げされている。この影響を除くと7月、8月共に20万人強と堅調に推移していると考えられる。失業率は4.5%と、引き続き低水準で推移している。
・インフレ関連指標とされる時間当り平均賃金は、前月比+0.5%の12.86ドルと伸び率が拡大したほか、前年同月比でも+4.2%と7か月連続で4%台になるなど賃金上昇傾向が続いていることを示唆した。

(出所:労働省 9月4日発表)


【解 説】
米国経済は拡大しているものの、株価下落やGMストの影響などにより一部には弱い動きもみられる。 98年4−6月期の実質GDP(改定値、季節調整値)は前期比年率+1.6%と、1−3月期(同+5.5%)に比べ減速した。ただし、これには前期が好調だった反動やGMストの影響が考えられる。 また、NAPM(全米購買部協会)のアンケート調査に基づく8月の景気総合指数によると、製造業は49.4と3か月連続で景気拡大・縮小の分岐点である50を下回った。
需要面をみると、7月の小売売上高はGMストの影響などによる自動車販売の落ち込みなどから季節調整済み前月比−0.4%と9か月ぶりに減少した。7月の住宅着工件数は季節調整済み前月比+5.7%と高い伸びを示し、戸数でみても年率換算171.8万戸と11年ぶりの高い水準を記録した。設備投資の先行指標とされる7月の非軍需資本財受注(除く航空機)は、季節調整済み前月比−1.8%と3か月ぶりに減少に転じた。一方生産面をみると、7月の鉱工業生産指数は、GMストの影響などから季節調整済み前月比−0.6%と2か月連続で低下した。設備稼働率も低下傾向にある。
6月の貿易・サービス収支(国際収支ベース、季節調整値)の赤字幅は、前月比−8.9%の141.5億ドルと5か月ぶりに減少した。地域別貿易収支(通関ベース、原計数)では、対日貿易赤字が52.5億ドルとなり、貿易赤字全体に占める比率は25.9%と9か月連続で国別赤字トップとなった。
この間、物価面では、7月の生産者物価が季節調整済み前月比+0.2%と落着いた動きを示し、消費者物価も同+0.2%と安定的に推移している。 なお、8月18日のFOMC(連邦公開市場委員会)では政策金利の変更が見送られた。
(9月11日記)



家 計 部 門

〇小売売上高(7月)…自動車の落ち込みから季節調整済み前月比−0.4%と9か月ぶりの減少


《ポイント》
・内訳をみると、耐久財は前月比−1.4%と減少した。自動車販売がGMストの影響や販促キャンペーンの終了で落ち込んだ(同−3.0%)ことが響いた。
・食品、アパレルなどの非耐久財は同+0.5%と堅調に推移した。
・8月の消費者信頼感指数は133.1と、雇用面の不安感などを背景に2か月連続の低下となった。

(出所:商務省 8月13日発表 、コンファレンスボード 8月25日発表)



企 業 部 門

〇鉱工業生産指数(7月)…GMストの影響などから季節調整済み前月比−0.6%と2か月連続の低下

(注)シャドーは景気後退期を示す。

《ポイント》
・業種別にみると、全体の約86%を占める主力の製造業がGMストの影響を受け前月比−0.7%と2か月連続で低下した。自動車を除いたベースでも同+0.1%と、力強さには欠ける内容となった。また鉱業は同+0.4%と上昇、公益事業は同0.0%と横ばいとなった。なお、前年同月比では+1.8%と伸びが鈍化した。
・鉱工業設備稼働率は、前月比−0.7%ポイント低下し80.5%となった。

(出所:FRB 8月14日発表)



海 外 部 門

〇貿易・サービス収支(6月)…国際収支ベース・季調値の赤字は、141.5億ドルと減少


《ポイント》
・赤字額は、前月比−8.9%と5か月ぶりに減少した。これはアジア経済混乱などを背景とした原油価格下落など輸入コストの低下が主因とみられる。
・内訳をみると、サービス収支の黒字が前月比−3.9%と減少、貿易収支の赤字も同−7.4%と減少した。
・対日貿易赤字は前年同月比+27.4%増加し、赤字全体に占める割合も25.9%と9か月連続で国別トップとなった。

(出所:商務省 8月18日発表)