郵政研究所月報 
1997.12

調査・研究


消費者金融会社の好業績とその背景






第二経営経済研究部研究員    石橋 尚平  




〔消費者金融会社の好業績と利鞘構造〕
 消費者金融会社(以下、「専業者」)の業績は依然好調である。大手5社(武富士、アコム、プロミス、アイフル、レイク)の平成9年度の決算でも、表(1)のように好調ぶりを示す数字が並んでいる。大手5社の合算値では、直近3年間でいずれも2桁の増収増益となっている。増収のみならず、大幅な増益基調が続いているという点で、不況下における当業界の好調ぶりが際立つ。
 消費者金融会社の高収益性は、グラフ(1)、(2)が示すような、当業界が享受している高い利ざや構造によるものである。営業収益に占める営業利益の比率は大手5社平均で30%台となっている。超低金利下において消費者金融会社の大手が資金調達能力を高めたことで、平均調達金利は順調に低下する一方、平均貸出金利は依然高止まっているため、大手5社の平均利鞘は20%を超えている。費用面に大きな変動がない限り、融資残高の伸びによる営業収益の増加により、利益も拡大するようになっているのである。営業費用も、人件費や広告宣伝費などを中心に二桁の伸びを示しているものの、金融費用の低下によって、収益で十分に吸収できる範囲に収まっている。


表(1) 消費者金融大手5社全体の直近財務・損益数値一覧
単位:百万円
6/3(5/11)
7/3
8/3
9/3
直近増減
営業収益
 営業貸付金利息
721,007
671,650
803,844
753,975
+11.5%
+12.3%
913,142
867,340
+13.6%
+15.0%
1,022,842
975,153
+12.0%
+12.4%
+109,700
+107,813
営業費用
 金融費用
 (平均調達金利)
 その他の営業費用
  うち広告宣伝費
  うち人件費
 貸倒償却額
527,772
176,465
5.7%
344,091
39,976
91,841
63,639
562,292
180,069
5.4%
376,189
43,544
101,759
59,903
+6.5%
+2.0%
 
+9.3%
+8.9%
+10.8%
▲5.9%
605,885
147,091
4.1%
455,322
50,725
113,122
73,380
+7.8%
▲18.3%
 
+21.0%
+16.5%
+11.2%
+22.5%
655,757
144,244
3.7%
507,035
56,207
123,464
86,197
+8.2%
▲1.9%
 
+11.4%
+10.8%
+9.1%
+17.5%
+49,872
▲2,847
▲0.4%
+51,713
+5,482
+10,342
+12,817
営業利益 193,232 241,552 +25.0% 307,255 +27.2% 367,083 +19.5% +59,828
経常利益 169,260 221,656 +31.0% 308,120 +39.0% 359,235 +16.6% +51,115
当期利益 72,450 103,550 +42.9% 125,130 +20.8% 155,518 +24,3% +30,388
総資産 3,923,464 4,276,858 +3.7% 4,789,376 +12.0% 5,261,467 +9.9% +472,091
営業貸付金残高 2,600,577 2,942,369 +5.7% 3,404,495 +15.7% 3,923,192 +15.2% +518,697
有利子負債 3,211,692 3,409,814 +2.2% 3,760,338 +10.3% 4,004,075 +6.5% +243,737
 損益の数値は対前年同期比、資産・負債残高は対前期比の伸び率・増減額
 武富士の平成5年度決算は11月〆
 各社決算短信より

グラフ(1) 消費者金融大手5社平均利鞘
各社決算短信より




グラフ(2) 消費者金融大手5社の利鞘推移
各社決算短信より


〔当業界の伸び〕
 次に当業界のこれまでの成長経緯を概観する意味で、当業界による消費者ローン残高(「日本の消費者信用統計」による推計)の伸びを示す表(2)、(3)およびグラフ(3)、(4)、(5)を見てみよう。80年代後半から、専業者による消費者ローン残高は急増し、88年から95年の7年間で同残高は実に2.5倍になっている。バブル経済の絶頂期から、バブル崩壊後の不況期を経ても当業界は「わが世の春」を謳歌しており、「儲けすぎ」とマスコミに叩かれることも多いが、後に詳述するように、専業者は過去の経験から与信能力を高め、以前とは違う健全な体質に転換している。
 70年代後半から80年代前半にかけて、専業者による消費者ローン残高は第一のピークを迎える。この時期の残高の増加はいわゆる「サラ金地獄」を社会問題化させ、マスコミの批判が高まることになった。当時、平均貸出金利は大手でも年率40%を超えており、現在の27%前後という数字に比べてもはるかに高利であった。しかもやみくもな残高拡大競争に走ったため、貸倒や債権の焦げつきが急増した。当時の経営指標等は、まだデータをシステム管理していなかった会社が多く、なかなか得ることができない。大手のプロミスは、社史編纂のために、当時の経営指標を整理しているので、同社の数値を例としてみてみよう。同社の昭和58年度(83年)決算での貸倒率(貸倒損失額÷営業貸付金平残)は前年度の1.5%から、一気に8.7%にまで跳ね上がっている(グラフ(8)参照)。
 社会問題化は、当業界を規制する83年11月の二つの法律の施行につながった。「貸金業の規制などに関する法律」ならびに「出資の受け入れ、預り金及び金利等の取締まりに関する法律の一部を改正する法律」である。両法は過酷な取り立てや、過剰融資、高金利の是正のため、取立行為の内容を規定したほか、登録制を導入、無担保ローンの貸出限度額を50万円とし、年40.004%を超える金利での貸出を刑事罰の対象とした。この二法の施行により、業界淘汰は加速した。施行前の83年10月に22万6千件を数えた業者数は、法施行後に一挙に4万件台に激減している。さらに、監督官庁である大蔵省は、金融機関に対して消費者金融会社への融資自粛を求める文書を出した。貸倒の増加に加え、金融機関からの融資引き締めによって、当業界は苦境に陥った。
 結局、これらの規制は業界の体質改善に大きく寄与した。経営体質の健全化は世間での認知を高めたし、低リスクでいかに収益を得るかという経営方針を確立させた。この時期に大手は積極的なリストラを行っており、バブル崩壊後の企業のリストラを一足早く済ませることとなった。グラフ(6)は、プロミスの従業員数ならびに店舗数の対前年度伸び率を示したもの(「プロミス30年史」ならびに「有価証券報告書」による)だが、規制強化を境にして従業員数を削減し店舗数を抑制していることがはっきりと分かる。
 この一足早いリストラは、バブル期以降の営業貸付金残高の拡大に寄与した。80年代末のバブル期に、積極的に業容や融資残高を拡大させた銀行や信販会社が、バブル崩壊後、バランスシートの傷みから、個人向け融資の拡大に慎重になったのを機に、当業界の台頭はますます顕著になった。現在でも都銀はカードローン拡販に依然消極的で、申込書は担当窓口にすらないありさまである。銀行のカードローンの金利は現在9%前後だが、系列保証会社に3〜4%の手数料をとられるため、人件費の高さも相まって、事業をやっていけるギリギリの水準であるらしい。信販会社も銀行同様に、大手のほとんどがバブル後遺症を抜け出せない上に、後述するある種の参入障壁や与信ノウハウの格差から、本格的な参入がいまだ立ち遅れている。
 両法施行後、専業者大手の貸出金利は段階的に引き下げられてきた。例えば、現在最も低いプロミスの無担保ローンの貸出上限金利は、グラフ(7)のように段階的に引き下げられている。

表(2) 信用供与業態別消費者ローン残高推移
(「日本の消費者信用統計」による推計)
単位:億円
80年 81年 82年 83年 84年 85年 86年 87年
消費者金融会社
シ  ェ  ア
17,053
32.8%
22,299
36.3%
27,796
37.5%
28,327
33.9%
21,896
24.8%
19,250
19.9%
19,481
17.3%
20,350
14.5%
民間金融機関
シ  ェ  ア
31,828
61.2%
34,764
56.5%
38,246
51.7%
42,958
51.4%
50,840
57.6%
58,605
60.6%
72,141
63.9%
96,768
68.8%
銀行系クレジット
シ  ェ  ア
1,369
2.6%
1,855
3.0%
2,267
3.1%
2,436
2.9%
2,738
3.1%
3,158
3.3%
3,673
3.3%
4,109
2.9%
信 販 会 社
シ  ェ  ア
1,588
3.1%
2,187
3.6%
4,478
6.0%
7,351
8.8%
9,905
11.2%
12,636
13.1%
14,047
12.4%
15,412
11.0%
その他業態
シ  ェ  ア
159
0.3%
404
0.7%
1,243
1.7%
2,528
3.0%
2,855
3.2%
3,136
3.2%
3,515
3.1
4,021
2.9%
消費者ローン残高総額 51,997 61,509 74,030 83,600 88,234 96,785 112,857 140,660

88年 89年 90年 91年 92年 93年 94年 95年
20,925
10.7%
24,879
9.5%
29,432
8.7%
,
33,435
9.0%
36,630
9.5%
39,970
10.5%
44,982
12.1%
52,082
14.0%
145,824
74.6%
206,448
77.0%
270,458
79.6%
301,101
80.7%
306,764
79.2%
296,395
78.0%
283,765
76.2%
272,482
73.2%
3,443
1.8%
4,693
1.8%
5,582
1.6%
5,951
1.6%
6,369
1.6%
6,439
1.7%
6,159
1.7%
6,434
1.7%
20,772
10.6%
26,302
9.8%
27,332
8.0%
25,614
6.9%
29,349
7.6%
29,290
7.7%
29,164
7.8%
31,807
8.5%
4,389
2.2%
5,703
2.1%
7,084
2.1%
7,177
1.9%
7,985
2.1%
8,083
2.1%
8,362
2.2%
9,212
2.5%
195,353 268,025 339,888 373,278 387,097 380,177 372,432 372,017



表(3) 信用供与業態別消費者ローン新規供与額推移
(「日本の消費者信用統計」による推計)
単位:億円
80年 81年 82年 83年 84年 85年 86年 87年
消費者金融会社
シ  ェ  ア
21,441
44.1%
28,239
45.8%
34,710
43.5%
36,823
41.1%
28,271
32.5%
24,856
26.2%
25,154
23.1%
26,722
19.4%
民間金融機関
シ  ェ  ア
17,691
36.4%
19,731
32.0%
26,540
33.2%
27,456
30.7%
30,820
35.4%
36,074
38.1%
44,831
41.1%
62,418
45.4%
銀行系クレジット
シ  ェ  ア
5,825
12.0%
7,592
12.3%
8,078
10.1%
9,935
11.1%
9,904
11.4%
11,169
11.8%
11,974
11.0%
13,627
9.9%
信 販 会 社
シ  ェ  ア
3,362
6.9%
5,234
8.5%
8,142
10.2%
11,339
12.7%
13,853
15.9%
17,718
18.7%
21,226
19.5%
27,539
20.0%
その他業態
シ  ェ  ア
324
0.7%
832
1.4%
2,400
3.0%
3,937
4.4%
4,167
4.8%
4,899
5.2%
5,826
5.3%
7,220
5.2%
消費者ローン残高総額 48,643 61,628 79,870 89,490 87,015 94,716 109,011 137,526

88年 89年 90年 91年 92年 93年 94年 95年
27,855
16.4%
32,960
15.6%
38,464
15.8%
43,695
18.4%
46,767
20.9%
50,425
25.9%
56,728
28.5%
66,103
31.3%
85,116
50.1%
101,363
48.0%
113,531
46.7%
98,719
41.7%
90,620
40.6%
66,696
34.3%
66,144
33.2%
63,037
29.9%
15,125
8.9%
17,542
8.3%
22,735
9.3%
25,045
10.6%
26,316
11.8%
26,256
13.5%
25,430
12.8%
26,803
12.7%
33,572
19.7%
48,426
22.9%
55,426
22.8%
55,016
23.2%
44,098
19.7%
35,367
18.2%
34,161
17.2%
37,003
17.5%
8,331
4.9%
10,803
5.1%
13,109
5.4%
14,401
6.1%
15,619
7.0%
15,756
8.1%
16,602
8.3%
17,960
8.5%
169,999 211,094 243,265 236,876 223,420 194,500 199,065 210,906
グラフ(3) 信用供与者別消費者ローン残高シェア推移
(「日本の消費者信用」推計)




グラフ(4) 信用供与者別消費者ローン残高シェア推移
(「日本の消費者信用」推計)


グラフ(5) 消費者金融会社による消費者ローン残高
「日本の消費者信用統計」による推計




グラフ(6) プロミス従業員数ならびに店舗数伸び率年度推移
「プロミス30年史」、「有価証券報告書」


グラフ(7) プロミス無担保ローン貸出上限金利推移




〔貸出金利のグレーゾーン〕
 現在専業者大手の貸出金利の上限はいずれも30%を切っている。他の業態の貸出金利と並べたのが表(4)である。業態間で貸出金利にかなりのばらつきがあることが分かる。銀行ローンが最も低いが、専業者の貸し出し金利を挟む格好で、信販会社や流通系クレジット会社の貸出金利が並んでいる。
 ここで注意しなければならないのは、当業界の無担保無保証での融資の実質金利は、刑事罰規定のある出資法(「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締まりに関する法律」)の上限である40.004%を下回ってはいるが、利息制限法に定める上限(元本10万円未満20.0%、10万円以上100万円未満の場合18.0%、100万円以上15.0%)を上回っているという点である。同法は「債務者が当該超過部分を任意に支払ったときは、その返還を請求することはできない」と規定しており、また、貸金業規制法(「貸金業の規制等に関する法律」)でも、同様の規定がなされている。
 すなわち、借手が納得ずくと推定されれば、利息制限法の上限を超える金利で融資を行っても違法ではないということであり、現状の消費者金融会社の貸出金利は、出資法ならびに利息制限法の間の、いわゆる「グレーゾーン」の中にあるということである。

表(4) 主要消費者ローン金利ランキング
社名(商品種類、支払い方法) 実質年利  

 
 
 
 
利息制限法

 
 
 
 
 
 
 
 
 
富士銀行(カードローン)
住友銀行(カードローン)
オリックス・クレジット(VIPローンカード)
ジャックス(カードローン、リボ)
ジャックス(キャッシング1回払い、リボ)

日本信販(カードローン)
プロミス(無担保ローン 上限金利)
武富士、アコム(無担保ローン 上限金利)
日本信販(キャッシング1回払い)
日本信販(キャッシングリボ)
アイフル、レイク(無担保ローン 上限金利)
クレディセゾン(キャッシング)
クレディア(中堅の専業者、無担保ローン 上限金利)
ライフ(キャッシング1回払い、リボ)
8.375%
9.150%
12.600%
17.400%
18.000%

24.600%
25.550%
27.375%
27.600%
29.160%
29.200%
29.600%
29.870%
36.000%
97年4月時点


〔働かない金利の選好〕
 表(4)にみるように、大手の間にも上限金利(年利)の格差は存在する。プロミスの上限金利は25.55%だが、武富士ならびにアコムは27.375%、アイフルならびにレイクは29.200%となっている。さらに中堅のクレディアは29.87%となっている。会社の規模が小さくなっていくにしたがって、出資法が規定する上限の40.004%に限りなく近くなっていく傾向にある。
 しかし、これらの金利の格差があるにも関わらず、利用者の合理的な金利選好が働き、少しでも上限金利が低い会社のローンに顧客が集中するというようなことはみられない。プロミスでも、95年10月に他社に先駆けて貸出金利を大きく引き下げた時にも、営業貸付金残高が爆発的に伸びるような効果が得られたわけではないと語っている。短期の少額利用であれば、利用者は金利の高低ではなく、親近感と信頼感があり、ネットワークなどの利便性に優れた業者を恣意的に選んでいるとのことである。
 信販業界大手のジャックスは、97年2月にキャッシング金利を30.0%(1回払い)ならびに24.3%(リボ払い)から、18.0%に大幅に引き下げた。同社はほとんどの専業者と同様、バブル経済時に不動産担保融資などの業務拡大を行わなかった点で、他の信販会社とは異なる身軽さを有しており、他の信販大手にこの動きに追随する構えはない。
 同社の使途自由の無担保ローンはすでに17.4%となっているので、この引き下げによって、全商品が利息制限法の上限を下回る水準になった。同社のこの引き下げは、消費者金融業界の高金利の社会的批判の矛先が向いてきたことを感じとった上で先手を打ったものと受け止められている。確かに、グレーゾーン問題からの脱却という意味では、専業者を意識した措置であると言える。
 しかし、これまでのところ金利引き下げ後9カ月ばかりの間をみる限りでは、このジャックスの措置が消費者ローン残高のシェアに大きく影響を与えたということはないようである。平成10年度中間期決算でも、専業社大手3社(武富士、アコム、プロミス)営業貸付金残高の合計額は前期比+7.3%と、前中間期の+8.7%に比べ幾分鈍化したものの、堅調な増加を続けている。大手信販会社も収益性の高いキャッシング部門に注力して取扱残高を伸ばしてはいるものの、結果として消費者ローン残高のシェアを浸食するほどの動きは伝えられていない。
 ただし、信販会社のターゲットは、専業者が対象とする本来のローン需要者ではなく、ショッピング利用層の補完的なローン需要者であり、マーケティング上、性質が少し異なることにも留意する必要がある。つまり、両業態間には、ある程度の棲み分けがみられるわけだ。しかし、一応のところ、現状では7%以上もの貸出金利差をもってしても利用者の業態間での金利選好の動きはあまり見られないと言えるだろう。

〔高金利の借入需要の謎〕
 ここで我々は2つの疑問にぶつかる。一つは、何故バブル崩壊後の不況期にも消費者ローン残高が増加し続けたのかということ。そして、もう一つはなぜ貸出金利が相対的に高い専業者による消費者ローン残高が拡大し続けているのかということである。
 まず、第一の疑問から考えてみよう。ミルトン・フリードマンは消費者行動を恒常所得仮説(permanentincome hypothesis)で説明している。この仮説はアーヴィング・フィッシャーの消費者理論やライフサイクル仮説に従って、消費が現在所得にのみ依存するのではないと論じたものである。ライフ・サイクル仮説が人々の生涯の規則的なパターンに従うことを強調しているのに対し、恒常所得仮説は所得の不規則的で一時的な変化を強調している。フリードマンは、所得を恒常所得と変動所得に分けて考えた。前者は人々が将来にわたって続くと予想する所得の部分であり、後者は人々が永続的でないと予想する所得の部分である。この場合、消費者は所得の一時的な変化に対して消費を均等にするために貯蓄や借入を行うから、消費は主として恒常所得に依存する。つまり、将来を考える消費者は、現在所得だけでなく将来受け取ると期待する所得にも依拠して消費を決定するのである。
 勤労者世帯の消費支出は94年にようやく前年を割り込んだが、バブル崩壊からかなりの年月を経てのことだ。不況期に入っても個人消費が景気の下支え役を果たし、景気がよくなるまでの間、借金で生活レベルを保とうとする消費者が消費者ローン残高の増加に寄与したということが推論される。消費者は実態よりもかなり楽観的な景気観測をなかなか捨てきれなかったのである。
 94年ならびに95年度の経済白書も、この個人消費の下支えについて、ラチェット効果(所得の伸びが低下する過程では消費水準をあまり落とさないようにしようとする力が働く効果)ならびに、ピグー効果(物価の下落が資産の実質価値を増加させて消費を刺激する効果)を指摘している。
 (5)は、プロミスが作成したもので、景況と専業者の業績との関係がまとめられている。これによると、景気の低迷期に、個人消費には「従来の生活水準を維持したい」という力が働くが、「過大な出費は抑えられ」、資金繰りの悪化から「専業者の貸倒リスクは高くなる」とされている。しかし実際には、雇用環境の悪化や可処分所得の低下までにはタイムラグがあり、上述のような効果もみられるため、景気拡大期のような「小口ローンへのニーズの拡大」というメリットを専業者は享受していたと考えられる。
 もう一つの疑問については、金利選好という個人の合理的な行動を前提として考えている限りは、いつまでもパラドクスのままである。依然けっして低くはない貸出金利での専業者からの借入を消費者が選好する理由を説明するには、他の要因を加味しなければならない。
 それは非常に単純なことで、専業者の提供する借入の利便性が、金利差以上に強く消費者に訴求しているということである。そしてこの訴求力は、個人消費が冷え込んでからも、消費者の小口の借入需要を換起し続け、現在に至っている。

表(5) 景況と業績の関係(プロミス作成)
プロミスの業績は景気の影響を受けるものの、比較的安定した利益を上げることができる構造となっている
 ○景気回復局面−市中金利は反転するものの、消費マインドの向上により小口ローンへのニーズが増し、貸倒も逓減化傾向
 ○景気低迷期−市中金利は低位で推移するが、借り控えによりローンニーズが相対的に下がる一方、貸倒リスクも高くなる
  ≪景気低迷期≫ ≪景気上昇期≫
●雇用環境 求人の減少や早期退職、子社会への配置転換等のリストラが実施される 求人の増加や雇用の安定が見られる
●給与所得の動向 残業代・ボーナスが減少する
配置転換等により基本給自体が減少する
失業により案定収入の途が断たれる
残業代ボーナスが増加する
昇給幅が増える
●消費性向 従来の生活水準を維持したいという欲望は強いが、過大な出費は抑える傾向 消費マインドが向上き、買替需要やレジャー関連の出費が増加する
●借入金への依存スタイル 生活資金の補填といった目的のローン需要も発生する ローンの有効利用で旅行・レジャー・趣味等の充実を先取りしようという気運が高まる
●借入額の多寡 必要最低限にとどまりがち 給与所得増加を見込む為、借入単価は上昇傾向
●当社の営業業績への影響 所得の逼迫により一部の顧客の資金繰りが悪化し、貸倒償却が増加する 新規契約数の増加、再利用・追加利用の増加、利用単価アップにより貸付金残高の伸長幅が増大し、営業収益(貸付金利息)が拡大する残業代の回復等より顧客の資金繰りが好転し、貸倒償却が漸減する
●調達コストへの影響 市中金利が低下し、借入金の変動金利部分や新規調達にメリットを受け、金融費用が減少する 市中金利が上昇し、借入金の変動金利部分や新規調達に影響を受け、金融費用が増加する
●現状への認識
 今後の展望
現状は自動契約機の増設や営業時間の拡大等により顧客層を拡大し、口座数・貸付金銭高とも順調に伸長している 市中金利の上昇が緩やかなものであれば、新規顧客の増加や既存客の追加利用の増加等による営業収益の自然増で、調達コストの上昇のかなりの部分を吸収できる


〔無人契約機の導入〕
 消費者金融会社の営業貸付金残高急増の背景として、無人契約機(以下、無人機)導入による利便性の向上を指摘することができる。
 現在、アコムではローンの新規契約分の74%もが無人機によるものだという。大手5社の有人店舗数は96年度で2,545店から2,583店の微増であるのに対し、無人機設置台数は1,240台から3,092台にまで倍以上に増加している。H9/3期末時点の数字で見ると、有人店舗1店につき、1.2台の無人機が設置されている計算になる。装置産業化する中で現在の無人機の設置は、今や他社に新規顧客を奪われないための防衛手段となっている感もある。 無人機は20〜30代の男性を中心とした新規利用者の獲得効果も高い。潜在的で良質な顧客の掘り起こしに寄与していると言える。
 図(1)、(2)、(3)が示すように、無人機といっても実際にはISDN回線を利用した対面与信であり、貸倒件数は無人機による契約の方が少ないというデータもある。平成9年2月に発足した消費者金融5社連絡会の報告によると、無人機の顧客で昨年1年間に自己破産を申請した人の割合は0.29%で、一方、店頭で契約した顧客では0.99%になるという。店員がモニター画面越しに顧客を観察しているため、実は従来の店舗以上に顧客の観察や融資の拒絶も容易になり、貸倒の抑制効果は高い。平均契約率では、大手の場合、無人機でも店頭の場合でも70%程度で違いはない。ただし、中堅業者の場合では、総じて店頭の場合よりも無人機の場合の方が10%程度高いと言われている。
 さらに出店コスト抑制のメリットもある。日本経済新聞記事(97. 5. 27付)によると、アコムの場合、無人機1台の設置費用は、内装や店舗賃貸の敷金・保証金も含め2,040万円にとどまるということである。最近は大手では遠隔操作による複数台の集中管理方式を取り入れているので、人件費の圧縮がさらに可能になっている。


表(6) 専業者大手5社無人契約機設置台数
単位:台
社名・名称 H7/3末 H8/3末 H9/3末
武富士「¥enむすび」
アコム「むじんくん」
プロミス「いらっしゃいまし〜ん」
アイフル「お自動さん」
レイク「ひとりででき太」
-
36
20
2
-
260
351
273
326
30
651
785
695
647
314
5  社  合  計 58 1,240 3,092
各社決算短信


〔銀行との利便性比較〕
 従来の有人店舗でのサービスも他業態に比べ利便性が高い。ここで銀行とのサービスの違いをまとめてみよう。まず顧客は広告の少ない銀行よりも、マス媒体や繁華街の駅前の看板などで名前を認知した専業者にひかれる。大手の専業者の店舗数は、有人店舗だけでも大手上位都銀の店舗数をすでに凌駕しており、立地も駅前等の好条件にある。また早く閉まる店でも夜の6時までテラー(窓口)業務を行っている。新規融資受付は夜の8時までという店(無人機も含む)が多い。仕事の後に立ち寄ることも可能である。銀行の場合は店舗は午後3時までで、手続きの面倒さや借りにくい雰囲気があるため、銀行から借り入れることのできる優良な顧客が敬遠する可能性がある。
 また、融資実行までのスピードについても格段の違いがある。専業者では店頭で新規の融資を申し込んでから、審査・融資実行に至るまでの時間は30〜40分ですむのに対し、銀行のカード・ローンの場合、審査からカードの郵送までに1週間から10日はかかる。しかも審査は保証会社によるため、融資が実行されるかどうか、店頭でははっきりとしない。これでは顧客には面倒という意識が先立ってしまう。
 さらに、返済方法についても専業者では、ATMの稼働時間も24時間のところがあり、月々の返済はミニマム・ペイメント方式で自由に返済することが可能である。一方、銀行のローンの大半は毎月一定額の自動振替で、ATMによる任意返済はまだ一部にとどまる。
 以上のように専業者と銀行の利便性格差は明確であり、顧客への訴求力の大きな差は金利格差をものともしない。専業者は、銀行や信販会社が十分に掘り起こしえなかった需要を、利便性で訴求することで掘り起こしているのだ。あるいはこのように表現することもできよう。ヘッジ・ファンドが市場の非合理性を逆手にとって金利裁定(アービトラージ)を行うように、超低金利という順風を受けて、専業者も日本経済の歪みが是正される間、ビジネス・チャンスを的確にとらえて、高い収益を確保しているのだと。

図(1) 自動契約機外観図
月刊クレジットエイジ’97年9月号



(操作の手順)
1.着席案内のガイド音声
2.足元のセンサー感知(契約業務開始)
3.CRT画面ドアロックをガイド→タッチパネル
4.申込書ストッカー開く→入会申込書(契約説明書)取り出しガイド
5.情報センター利用同意確認画面
6.免許証、保険証等本人確認書類を「入力/回収口」にセット→CCDカメラで確認
7.申込書に住所、氏名、生年月日、勤務先記入
  1枚目「入力/回収口」セット確認取り入れ
  2枚目顧客控え
8.タッチパネル入力(コンピューター与信必要情報)
9.待ち時間
  画面┌契約内容、返済システム(パンフレットを参照)
    └商品案内
10.顧客情報の補足確認、契約内容の補足説明、質問応答
11.タッチパネル入力
  借入希望、年収、現在の借入額、暗証番号
12.契約書プリントアウト
  サイン→CCDカメラ 確認−取り込み


図(2) 自動契約機の仕組みとシステム
自動契約機はマルチメディア技術の活用により、最先端の遠隔医療や遠隔双方向テレビ教育等と無人機を近隣の集中化店舗(管理支店)において遠隔操作することにより、通常の有名店舗での契約業務(対面契約)と同様に契約締結が可能なシステムである。


自動契約機のシステム概略図(アコム(株)むじんくんの場合)
月刊クレジットエイジ'97年9月号


●通常無人コーナー(店舗)は、ATMコーナー、待合スペース、無人機ブースの3つのスペースで構成されており、その広さは概ね、5〜10坪程度である。
●無人コーナーは防犯上の観点より複数(@〜C)の監視モニターを設置している他、非常用インターフォン(A)の併設等セキュリティー面についての万全の配慮をしている。
●また、無人機ブースの入り口はドアロック等の設備となっており、顧客のプライバシー保護をはかっている。利用中、中からは常に外に出られるが、外からは中に入ることは出来ない。



図(3) 自動契約機による契約処理
月刊クレジットエイジ'97年9月号


●無人コーナーは近隣の管理支店(有名店舗)とISDN回線(INSNET64)で結ばれており、管理支店の社員が無人機の遠隔操作をすることにより契約業務を行う。
なお、申込から契約における各段階において顧客への申込内容の確認や顧客からの質問等は常に対応できる様になっている。従って、いわゆる“コンピューターのみによる自動契約システム”ではない。
●通常の新規契約にかかる所要時間は約30分程度である。有人店舗における同所要時間は約30〜40分となっており、自動契約機はこれに比べ10分程度短くなる。主な理由は、申込手続きの一部を記入式からタッチパネルによる入力方法に変更することにより、顧客の申込書等の記入時間を短縮したことによるものである。
●申込審査については、有人店舗の店頭契約と同様の審査と作業を行っており、与信基準等についても全く同一となっている。
●また審査時、本人確認カメラにて顧客画像(顔)チェックを行い名義貸し等の排除をしている。


〔業態間のヒエラルヒとシェアの変化〕
 消費者ローンを業務とする業態には、専業者の他、銀行、信販、銀行系クレジット、流通系クレジットなどがあるが、これらの業態間にはある種のヒエラルヒが存在する。つまり、銀行で融資を受けることができない消費者は、信販会社等ないし専業者を利用し、その限度額を超過する場合等には、さらに融資審査の甘い下位の専業者を利用するということが一般的にみられる。勿論例外も数多くあろうが、専業者は銀行では借入しえない人々や、信販会社を本来利用する層をすくい上げているということは一般論として言えよう。
 野村総研は当業界の2000年までの専業者の平均成長率を8.7%と推計している。この試算は専業者が年収200〜600万円の低所得層を顧客の主体としており、潜在的な顧客がまだ1,800万人前後いるということに拠っている。この推計はかなりラフだが、重要なのは、専業者が中低所得者層という市場を抑えているという事実である。

〔信用リスクの管理〕
 というのは、中低所得者層の需要をすくい上げていく上で、信用リスクの管理が非常に重要になってくるからである。
 当業界のリスク管理の上でまず触れなくてはならないのは、全国信用情報センター連合会(以下、一般的な略称に従い「全情連」)の存在である。全情連は、全国各地の専業者を主たる会員として設立され33(8地域)の個人信用情報センターによって構成されていたが、平成9年8月に一元化され、全国レベルで統一された。このシステム統一によって、会員会社約4,500社、約1万店舗、約1,200万人分の信用情報が専用回線で全国どこからでも瞬時に照会できるようになった。例えば沖縄の顧客が北海道の専業者の店舗に来店して融資を申し込んでも、全国的な情報検索により、簡単にその顧客の信用情報が得られるようになったのである。
 わが国には他に主な信用情報機関が3つある。これらはそれぞれ銀行、信販会社、外資系を会員としている。全情連を含めたこれら4つの信用情報機関は、縦割り組織であり他の業態に関して排他的であると言ってよい。現在のところ情報の完全共有化は行われていないので、銀行や信販会社が全情連のデータを用いることはできない現状にある。通産・大蔵両省は、多重債務者発生防止策として、個人信用情報の交流を促しているが、まだ情報の共有に関しては、いわゆるブラック情報(個人の過去の延滞・事故情報)だけにとどまっている。
 しかも、これらの信用情報機関のうち、全情連は最も精度の高い情報を提供している。例えば、他の信用情報センターでは情報を名寄せすることができず、情報登録も任意である上に、月次ベースでしか情報が更新されないが。一方、全情連が提供する情報では、名寄せは勿論、日々信用情報が更新されている。情報取り扱いに関しての規約に違反があった場合、照会停止や退会などの厳しいペナルティが課されている。さらに極めつけは、専業者間では全件取引が登録されているため、ホワイト情報(個人の貸付残高の情報)も共有されているということである。すなわち、顧客が他の専業者からいくらの残高があるかがすぐに分かるようになっているのである。他の3つの信用情報機関では、この非常に重要な情報が提供されない。したがって他業態では同業他社からの借入残高という重要な情報を与信判断に活かすことができないという現状にある。
 全情連を通じて専業者が共有する情報の内容の一例を示したのが図(4)である(この紙片は端末から打ち出される形でのデータのサンプルの一つで、実際には例えば与信者のコードナンバーなど、もっと多くの情報をアクセスすることが可能)。このように専業者は個人の生年月日、性別、氏名、顧客コード、住所、電話番号、勤務先、専業者間でのホワイト情報ならびにブラック情報を名寄せで得ることができる。
他の業態が強く要望しても、現状では全情連が提供する精度の高い情報を、他の業態はアクセスすることができない(早い段階で加盟した信販会社のアプラスだけが例外。ただし信販業務には用いることができない)。
 全情連へのアクセス権は他の業態からの強固な参入障壁になっている。

図(4) 店の端末から打ち出される「個人信用データ」の見本(プロミス提供)

基本パターン

【照会解答レシート(基本パターン)】……出力が可能な項目を網羅したパターンです。


〔与信のノウハウとスコアリング〕
 この情報の精度に加え、専業者にはこれまでの経験で培ってきた高度な与信ノウハウという強みがある。これは「企業努力と学習効果の表れであり、創業以来の地道な蓄積によるシステム化、マニュアル化の一貫」である。銀行や信販会社等が新規参入のために容易に真似ることができないソフトの蓄積であると言えよう。
 ノウハウは顧客を見抜く勘や経験則のようなものから、与信のスコアリング・システムまで多岐に及ぶ。前者の場合、ベテランの店長になれば、店には行ってきた客の服装や挙動から返済してくれる客かどうかを見抜く炯眼を身につけているということだ。
 また、大手の場合はこうしたアナログ的な勘や経験則に加え、スコアリング・システムを導入し、与信に役立てている。勿論、このシステムを利用する際には、前述した全情連が提供する個人の信用データも用いられる。
 例えばプロミスでは自動与信システムとして、過去の顧客も含め400万人以上のデータをもとに、新規顧客を属性などから32グループに分類、さらに地域区分や他社利用件数により、1,280通りに類型化した上で、自動的に与信枠を決定するようにしている。同社がこの自動与信システムを導入したのは83年のこと。従来の勘や経験則がモノをいうノウハウだけでは、店舗拡大のスピードに人材育成が追いつかなかったことから、個々の判断の誤差を極小化し、誰でも容易にスピーディに、かつ正確に与信判断が下せる手法を必要としたのが、このシステム開発の契機であったという。
 プロミスの80年代以降の貸倒償却額ならびに貸倒率の推移はグラフ(8)が示す通りである。前述した「サラ金地獄」が社会問題化した時期に、貸倒率(貸倒償却率÷営業貸付金平残)は9%に近い高率に達したが、90年代に入ってからは3%以下の水準に抑えられている。大手5社の平均値でみても、グラフ(9)が示すように、直近8期において貸倒率はいずれも2.5%以下の水準に抑えられている。




グラフ(8) プロミスの貸倒償却額ならびに貸倒率の年度推移
同社は88年度決算までは12月〆であったが89年度より3月〆に変更している。
上記のグラフでは3ヶ月の変則決算であった89/3期の数値を表示していない。
プロミス決算報告、「プロミス30年史」、「有価証券報告書」


グラフ(9) 消費者金融大手貸倒損失推移
各社決算短信




グラフ(10) 自己破産申立件数(最高裁判所による)


〔貸倒率の錯覚とマクロでの指標〕
 しかし、現在抑制されている貸倒率には注意する必要がある。というのは、貸倒率は分母である営業貸付金残高が急拡大している時は小さく見えるからである。事実、「サラ金地獄」が社会問題化した頃の、貸倒率は前年に比べ急激に伸びた。前出のプロミスの場合、83年度に8.7%に急伸する前の年度は1.5%に抑制されていたのである。
 当業界の経験則では、営業貸付金の急増から1〜2年のタイムラグを経て貸倒の増加が顕著になるとされている。その経験則が現在もあてはまるのだとしたら、現在堅調に増加している営業貸付金残高の増加が、ある臨界点を超えると1〜2年後に貸倒が急増するということになる。問題はその臨界点がどこにあるのかはっきりとしておらず、誰もが手さぐりの状況だということだ。
 グラフ(10)にみるように、自然人の自己破産申立件数は顕著に増加している。一時期4万件で頭打ちになったとみられたが。96年は5万6千件に達し、97年もこの調子では6万件を軽く超えて7万件近くに達する可能性がある。実質的に破産状況に陥っている人は150万人いると推計する弁護士もいる。
 バブル時代には所謂「クレジット・カード破産」が多かったが、現在では中高年の自己破産が多いと言われている。バブル期に組んだ「ゆとり返済」型住宅ローンでの返済額がここ数年で増加したり、不動産価格が下落して物件の売却ではローンを完済できなくなっている人が増加しているからである。最近でも中高年を対象としたリストラの動きは続いているし、金融機関やゼネコン等の相次ぐ経営破綻も懸念される。
 自己破産の増加について、専業者が批判の的になることもあるが、実態はよくわからない。住宅ローン等の利払いを目的とした資金繰りのために消費者金融会社が利用されるという指摘も一理あるが、多重債務の状況においては、額の多寡で犯人探しはできないのである。
 グラフ(11)が示すように、日本の個人の可処分所得に占める消費者信用残高の比率は、頭打ちとなったものの、バブル期にすでにアメリカの同比率を凌駕した後、20%を超えて高止まりの状態が続いている。一方、日本よりもクレジット社会が成熟している米国では、景気が加熱し過ぎると、同比率は20%近くに達して、貸倒が増えて消費者信用会社が与信を厳格にするため、自然と調整作用が働く。 ただし、この比率を比較するには統計上の値の違いをあらかじめ調整する必要がある。日本の消費者信用残高には、金融機関の預金担保貸付(約20兆円)や非割賦のショッピング(約2兆円)が含まれている。これを控除して調整すると、95年の日本の同値は15.9%となり、同年のアメリカの同値の19.3%を下回る(グラフ(12)参照)。この調整を行うと、クレジット社会が成熟していない日本ではバブル経済を境に急激に同値が上昇してきたという事実は変わらないが、同値は20%という一つの臨界点をまだ超えておらず、直近ではむしろ低下していることになる。
 それに日本が世界でも類を見ない所得格差の小さい家計構造であるのに対し、アメリカの所得格差はかなり大きいという点も考慮に入れる必要がある。金融資産でみると、日本の家計全体の20%を占める一番所得の低いグループの平均金融資産でも約600万円であるのに対し、米国民の80%は、12,000ドル(約150万円)となっている。米国の金融資産は一部の上位所得層の試算が多くを占めており、米国民の大部分は所得、ストックともかなり厳しい状況にあるということである。したがって、調整後の同数値についても、この点について斟酌する必要があるだろう。

グラフ(11) 可処分所得に占める消費者信用平均残高の比率




グラフ(12) 可処分所得に占める消費者信用平均残高の比率(調整後)


〔社会批判への対応〕
 専業者が恐れているのは、マスコミの批判などから、今まで築き上げてきた社会的認知が損ねられることである。それは過去の轍を再び踏むということであるため、大手を中心に広報活動に力を入れている姿がみられる。今年2月には「消費者金融5社連絡会」が、武富士、アコム、プロミス、アイフル、三洋信販の5社によって設立された。これは無人機の増設をはじめとする消費者金融の過剰融資が自己破産者の温床となっているという市民団体の批判に配慮したものである。6月にはレイクも正式に参加し「消費者金融連絡会」と改称している。
 同連絡会は、下記の5項目に及ぶ営業活動の改善策を発表している。

(1) 消費者啓発活動の推進
(2) カウンセリング機能整備
(3) 与信業務の一層の厳格化
(4) 広告表現の見直し
(5) ディスクロージャーの実施

 特に(3)では、専業者からの他社借入件数を原則3社以内とし(例外的に厳格な総合判断がなされる場合は4社まで)、途上与信の精度向上のために、既契約者の照会を3カ月ごとに行う(新規顧客については3カ月間照会を毎月行う)こととしている。
 前述の通り、専業者の間ではホワイト情報が共有されているため、専業者は契約者の他社借入件数を全情連を通じ知ることができる。大手の新規顧客における他社借入件数はもともと高くない。アコムから得られたデータでは、新規顧客の他社借入件数の内訳はグラフ(13)が示すようになっており、0社(同社を初めて利用する顧客)が過半数を占めている。
 ただし、前述のヒエラルヒは専業者大手‐中小の間にも存在しており、下位の専業者になればなるほど、一般的に他社借入件数は増える傾向にある。グラフ(14)は、営業貸付金残高による会社規模ごとでの他社借入件数を示しているが、会社規模が小さくなるほど概ね同件数は増加する傾向が明らかである(「平成7年版貸金業白書」より、欄外の数字は「6件以上」を「6件」として算出した各帯グラフの件数の加重平均)。

グラフ(13) アコムの新規与信時他社借入割合



グラフ(14) 他社借入件数

「平成7年版 貸金業白書」より

〔与信能力の限界〕
 大手が与信を拒絶したようなリスクの高い多重債務者が、複数の中小の専業者から借入を行うことはよくありうることである。中小の専業者は大手以上に、他社借入件数の制限を、需要見通しと貸倒の動向から慎重に考慮しなければならない。営業貸付金残高の競争が過熱して、割りを喰うのは相対的に債権の質の劣る中堅以下の企業なのである。
 また、専業者間でホワイト情報は共有されてはいるが、他業態との間ではブラック情報しか共有されていない現状、仮に他社借入件数の比較的少ない顧客であると判断しても、実際は他業態からの借り入れによってすでに多重債務者になっている顧客であるケースも考えられる。
 専業者が他の業態に比べ、相対的に高い審査能力を有していても、全体の消費者ローン残高が、消費者の支払い能力を上回ってしまって、多重債務者が急激に増加するような事態になった場合、この相対的な優位性もあっけなく消失してしまうのである。
 一つ懸念されるのは、グラフ(15)が示すように、全情連保有データ件数(3月末時点)と当業界消費者ローン残高(暦年ベース)推移を比較した場合、後者の急激な伸びに比べ、前者がそれほど伸びていないということである。後者は85年から95年までの10年間で4倍弱に増えたが、前者の同期間の伸び率は51.5%にとどまる。つまり、営業貸付金残高は急激に伸びたが、口座数の拡大は実はそれほど進んでいない可能性がある。ただし、全情連が保有するデータは、現在最長5年以内にとどめられており、保有期間はこれまでも短縮されてきたので、データの消去も進んだということもあり、留意しておく必要がある。
 また96年3月末時点の全情連が保有するデータ件数(顧客数ベース)は1,226万件であるが、このうち実際に残高のある顧客の数は当然その数よりも少ない。大手から中小まで専業者の財務担当者にヒアリングしてみたところ、実際に残高のある顧客数は600〜900万人と推定にばらつきがあった。全情連を構成する33の信用情報センターの一つで、首都圏の情報を管理する日本データバンクによれば、約800万人ということであった。もともとデータ件数と実際の利用者数に乖離がある上に、消費者ローン残高の伸びほどには、実際に残高のある顧客数は伸びていないという恐れは払拭しきれないであろう。
 ここで、大手5社の無担保ローンの、件数と残高の推移を比較してみよう。表07が示すように、直近4期でみてみると(武富士のみ平成5年度決算は11月〆)、いずれの期においても、残高の伸びが口座数の伸びを上回っていることが分かる。したがって、一件当たりの残高は増加を続けている。H9/3末の同残高は391千円/件にまで至った。個社別でみると、業界首位の武富士の同残高は442千円/件とガイドで示されている簡易審査における上限額の50万円に最も近づいている。
 無人機の導入によって新規顧客の開拓が進んでいる一方で、契約者の借入残高が限度額に近い水準にまで膨らんでおり、貸倒リスクが高まっている可能性がある。

グラフ(15) 全情連保有データ件数推移

専業者による消費者ローン残高(左目盛)と全情連保有データ件数(右目盛)推移
「日本の消費者信用統計」「金融局統計年報」



〔損益分岐点の高さ〕
 専業者は現在、高い利鞘を確保しているものの、一度、貸出金利の引き下げ競争の激化、調達金利の上昇、貸倒の増加という逆風にさらされた場合、収益性は脆さを露呈する。
 表(8)、(9)は、H9/3期の決算数値をベースに、営業利益がゼロになってしまう、貸出金利(以下、損益分岐点)を求めたものである。有担保ローンも含むもの(表(8))と、無担保ローンのみ(表(9))の二つを計算している。後者の方は、営業収益全体に占める無担保ローンの金利収入の比率で、営業利益を按分して求めた数字を、無担保ローンによる営業利益の数値として想定しており、厳密な損益分岐点とは言えないが、現在大手の営業収益の大半は無担保ローンによるものなので、それほどズレた数字がでるわけではない。また、後者で武富士とレイクの損益分岐点を求めていないのは、両者の財務諸表に営業収益の区分が記載されていないからである。
 これらの表によると、損益分岐点は、有担保ローンを含めた場合でも、無担保ローンのみの場合でも、かなり各社とも高いことに気づく。特に無担保ローンの場合は18%前後で大手3社の営業利益が吹き飛んでしまうことになり、現状では利息制限法が規定する金利(18%)以下に平均貸出金利を引き下げることは事実上不可能であることを示している。
 また、表10に見るように、H9/3期決算数値をベースに、平均貸出金利が23%まで低下し、平均調達金利が6%、貸倒償却率が5%にまでそれぞれ上昇すると想定した場合(H9/3期の決算での大手5社平均はそれぞれ26.6%、3.7%、2.4%)、営業赤字に陥る大手もでてくる。
 前出の表(5)(プロミス作成による景況と専業者の業績との関係)にしたがって、調達金利と貸倒率には負の相関関係がある。すなわち景気回復局面においては、調達金利は上昇するが、同時に貸倒率が低下するのだとすれば、このシミュレーションは非現実的なものでしかないだろう。しかし、前述したように、全体の消費者ローン残高が臨界点を越えてしまって、多重債務者や自己破産の急増が、金利の上昇と同時に起こらないとは限らない。 専業者の収益力の脆弱さは、@現在本業に特化している専業者の粗利はほぼ利鞘そのものであること、A営業チャンネル拡大に伴う販管費や減価償却費の増加で金融費用以外のコストが増加していることによる。専業者の財務担当者に今後の貸出金利についてヒアリングしたところ、貸出金利の設定を細かくしながら優良顧客の囲い込みを行うとする一方で、当面現状の金利で据え置く方針という回答が多かったのは、こうした弱点があるからである。

表(7) 一件当無担保ローン残高
単位:千円 
H6/3(H5/11) H7/3 H8/3 H9/3
大手5社無担保ローン残高
同前年度伸び率
23,608億円
+9.7%
27,314億円
+15.7%
32,039億円
+17.3%
37,124億円
+15.9%
大手5社無担保ローン口座数
同前年度伸び率
6,536千件
+7.0%
7,269千件
+11.6%
8,407千件
+15.2%
9,495千件
+12.9%
一件当無担保ローン残高
同前年度伸び率
361千円
+2.6%
374千円
+3.6%
381千円
+1.8%
391千円
+2.6%

 武富士はH6/3期以前の会計年度が11月〆
 各社決算短信より



表(8) H9/3期の損益分岐点(含む有担保ローン)
会社名 営業貸付(含有担保ローン) 営業利益 営業利益ゼロ
の貸付利回り
貸付金利息 貸付金平残 貸付金利回り
武富士
アコム
プロミス
アイフル
レイク
268,920
237,715
191,400
142,663
134,455
984,318
907,771
733,133
528,643
509,980
27.3%
26.2%
26.1%
27.0%
26.4%
130,863
87,577
68,595
50,646
29,402
14.0%
16.5%
16.8%
17.4%
20.6%
各社決算短信 


表(9) H9/3期損益分岐点(無担保ローンのみ)
会社名 無担保ローン 無担保ローンでの収益
比で按分した営業利益
営業利益ゼロ
の貸付利回り
無担保ローン
営業収益比
無担保ローン
営業貸付残高比
貸付金利息 貸付金平残 貸付金利回り
アコム
プロミス
アイフル
230,764
190,545
133,675
843,334
722,872
473,678
27.4%
26.4%
28.2%
80,560
65,715
45,334
17.8%
17.3%
18.6%
92.0%
95.8%
89.5%
86.6%
92.2%
80.1%
各社決算短信 
表10 H9/3期の専業者大手の実績数値と営業収益のシミュレーション
単位:百万円 
H9/3/期の平均
貸出金利(実績)
H9/3/期の平均
調達金利(実績)
H9/3/期の
貸倒率(実績)
H9/3/期の営
業利益(実績)
↓平均貸出金利23%
↑平均調達金利5%
↑貸倒率5%
↓平均貸出金利23%
↑平均調達金利6%
↑貸倒率5%
武富士
アコム
プロミス
アイフル
レイク
27.3%
26.2%
26.1%
27.0%
26.4%
3.5%
3.7%
3.5%
3.6%
4.2%
2.3%
2.3%
2.4%
2.7%
2.2%
130,863
87,577
68,595
50,646
29,402
39,005
3,333
9,045
3,029
▲9,869
29,714
▲5,647
2,306
▲2,485
▲18,166
各社決算短信 


〔まとめ〕
 専業者は、(1)貸付残高の順調な拡大、(2)利鞘の高さ、(3)超低金利によって、現在高い収益性を享受している。(1)は提供する利便性が、消費者の潜在的な需要を掘り起こしたことから実現したと言える。これは(2)とも関わっており、他業態に比べ相対的に高い貸出金利であっても、利便性で訴求することによって消費者ローンの需要を掘り起こすことに成功しているのである。
 貸出金利の高さから、金利の選考が働かない消費者の非合理的な行動に疑問を感じさせることは否めないが、専業者が提供する高い利便性の対価がこの高い貸出金利であると考えた場合、専業者は金利選好上の非合理性を逆手にとって、ビジネスチャンスを巧く活用していると考えられる。
 70年代後半から80年代前半にかけて、「サラ金地獄」が社会問題化し、やみくもな融資残高競争の果てに貸倒が増加したことに加え、法的規制や金融機関の融資引き締めが強化されたことから、業界での淘汰が進み、専業者は厳しい冬の時代を迎えた。しかし、その間に専業者は業務の改善とリストラを進め、バブル末期から崩壊後にかけて飛躍的に拡大するための経営体質を涵養した。
 専業者のビジネスにはある種の参入障壁も働いている。高い精度の信用情報のデータベースを独占的に確保し、与信のノウハウを培ってきたことで、他の業態の追随を許さない強みを有しているのである。大手は与信のスコアリング・システムも開発しており、中低所得層を顧客とする中心としながらも、貸倒率を低く保っている。
 しかし、貸倒の低減に相対的な優位性を確保していても、マクロ的な経済事象の影響は避けられない。自己破産申立件数が増加し、個人の信用残高の比率が急増に増加するなかで、今後営業貸付金残高の伸びにどこでブレーキをかけるべきか、定量的に明示された指標はないのである。
 また、意外と専業者の収益構造は脆く、金利の上昇や、貸付金利の引き下げ競争や、貸倒償負担の増大に対する耐久力は小さい。さらに、マスコミの批判など世論に影響を受けやすいということは、以前の「サラ金地獄」の社会問題化の際にすでに明らかになっている。 ビジネスチャンスがある種の非合理性を逆手にとっての裁定のようなものであるなら、非合理性はいつしか是正されて、ビジネスチャンスは消失してしまう宿命にある。今後、専業者の個社ごとの対応力が問われることとなるだろう。

 以上 



参考文献一覧
○統計、白書等
 ・『日本の消費者信用統計97年版』 通商産業省産業政策局、取引信用室監修 社団法人 日本クレジット協会
 ・『平成7年版 貸金業白書』 社団法人 全国貸金業協会連合会
 ・『消費者金融白書』〜消費者金融専業界の現状把握および10年後の予測と課題〜
 ・『消費者信用白書(クレジット白書)〜岐路に立つクレジット業界の新たな発展への課題』 社団法人 日本クレジット産業協会
 ・『1994年度版 経済白書(厳しい調整を経て新たなフロンティアへ)』 経済企画庁
 ・『1995年度版 経済白書(日本経済のダイナミズムの復活をめざして)』 経済企画庁
 ・『銀行局金融年報』昭和51年度版〜平成8年度版大蔵省銀行局
 ・『プロミス30年史』 プロミス且ミ史編纂プロジェクト

○書籍
 ・Milton Friedman (1957) 'A Theory of the Consumption Function', Princeton University Press
 ・西村隆男(1997)『クレジットカウンセリング 多重債務者の生活債権と消費者教育』、東洋経済新報社
 ・E・M・ルイス著 木下恭輔監修 アコム
 ・プロジェクトチーム訳(1997)『クレジット・スコアリング入門』、社団法人金融財政事情研究会
 ・鈴木久清(1995)『クレジット社会 虚像と実像』、新日本出版社
 ・竹内宏(1983)『続・路地裏の経済学』、新潮文庫
 ・植田蒼(1990)『クレジットの知識』、日経文庫

○報告書、アナリスト・レポート等
 ・消費者金融5社連絡会(97. 2. 7)『消費者金融業界関連の課題に対する対応』
 ・Aiful Topics(94. 7. 25)『消費者金融市場 今後の予想 H6. 7. 25』、アイフル株式会社
 ・大和総研(96. 8) 『大和投資資料〜消費者金融業界の持続的成長のために』
 ・野村総研(96. 8. 27) 『消費者金融業界レポート』

○雑誌
 ・月刊『消費者信用』
  97. 3 「大手消費者金融会社が『5社連絡会』を設置」
 ・月刊『クレジット・エイジ』
  97. 1 「日本信販が無担保ローンの無人契約機に進出」
  97. 5 「ジャックスのキャッシングレート引き下げの真意と波紋」 藤森正敏
       「自動契約機、平均与信額約17万円」
  97. 9 「機械を通して対面、適正な審査システム」
  97. 10 「情報一元化実現で新時代へ」
 ・週刊『金融財政事情』 社団法人 金融財政事情研究会
  96. 10. 14 「消費者金融会社に学ぶ」
 ・週刊『日経ビジネス』 日本経済新聞社
  95. 12. 11 「強い銀行へ5つの教訓 なぜ消費者金融会社に負けたのか」
 ・週刊『AERA』94. 9. 19 「サラ金の高笑いが聞こえる」 朝日新聞社
 ・月刊『金融ビジネス』 東洋経済新報社
  96. 11 「どこまで続く急成長 消費者金融のナゾ」
  97. 7 「相次ぐ『自粛』の舞台裏 残る『天敵』はマスコミのみ」
  97. 9 「競争の激化が明暗を拡大する」
 ・週刊『エコノミスト』 毎日新聞社
  96. 7. 30 「消費者金融・商工ローンへの追い風が逆風に変わる日」 中森貴和
 ・日経金融新聞
  97. 6. 11 「消費者金融専業の拡大」 石井裕之(富士総研)

○情報収拾のためにヒアリングを行った会社・団体
 ・消費者金融会社 アコム梶Aプロミス梶A潟激Cク、コーエークレジット梶Aワールド・ワイナンス
 ・格付機関    ムーディーズ・ジャパン、日本公社債研究所
 ・情報提供    朝日生命保険相互会社財務部ならびに財務審査部



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