No.96 1996年9月

都市と農山村の地域内コミュニケーションの実態

                                          第一経営経済研究部研究官   小原  宏

 今後の人口の高齢化、少子化などに伴って地域内でのコミュニケーションが変化していくことが考えられる。本稿では、郵政研究所が行った都市と農山村の地域内コミュニケーションに関するヒアリング調査及びアンケート調査の結果から、現在の地域内におけるコミュニケーションの実態について分析し、個人の属性を超えた類型化を行い、また、地域に永く存在する郵便局の特徴に着目して、地域内での人間関係・コミュニケーションを豊かにしていくための施策の方向性について検討した。
 まず、コミュニケーションを「目的」、「手段・方法」、「発・受信者」、「時間」、「空間」、「ボリューム」及び「地域」の7つの要素でとらえることとし、これらを「人と時間」、「人と手段」、「目的や役割」及び「地域特性」に関する問題意識に整理した。
 ヒアリング調査による分析結果からは、地域内での人々のコミュニケーションについて、各人ごとに異なる広がりを持っていること、人から情報を受け取り他の人に情報を伝えていくという「コミュニケーションの連鎖」があることが確認された。また、ヒアリング対象者のコミュニケーションの特徴から、それらのコミュニケーションを付合いの地盤の広がりに注目して「同居・近居家族完結型」、「別居家族重視型」、「近隣交流型」、「地域活動参加型」、「地域付合い重視型」、「旧交維持型」及び「目的交流型」の7つの類型に整理することができた。
 アンケート調査の分析結果を問題意識に照らすと、「人と時間に関する問題意識」からは都市のほうが深夜時間帯のコミュニケーションが多く、生活の深夜化が推測されること、「人と手段に関する問題意識」からは内容・相手との付合いの違いによって選択するコミュニケーションが変わること、「目的や役割に関する問題意識」からは家族構成や年代に大切にする付合いが特徴的な層があること、「地域特性に関する問題意識」からは豊かな人間関係のイメージについては大きな差異が認められないことなどが明らかとなった。
 さらに、ヒアリング及びアンケート調査の分析結果を踏まえて、個人の基本属性を超えた個人のコミュニケーションの背景となる要素によって、「定住型」、「地域活動型」及び「自宅周辺交流型」を構成要素とする類型T、U・Jターン型」、「回遊型」及び「社会・交流型」を構成要素とする類型U、「不参加型」及び「商業施設利用型」を構成要素とする類型Vの3つのタイプに整理した。
 また、3つの類型ごとに望む「人間関係を豊かにするために必要な援助」と地域に永くある郵便局の特徴とを考え合わせると、今後の地域における郵便局は「地域のサロンとしての存在」、「地域の人々(人材に関する情報)と場所を結ぶ存在」又は「地域のモニュメントとしての存在」として地域の実情にあわせてコミュニケーションの活性化に取り組んでいく方向が有効ではないかと考えられる。