編著:橘木 俊詔(*1)、中馬 宏之(*2) 執筆:橘木 俊詔(*1)、中馬 宏之(*2)、八木 匡(*3) 筒井 義郎(*4)、伊藤 潔(*5)、古家 康博(*5) 高田 聖治(*5)、牧 寛久(*5)、井籐 徹也(*5) 浅野 皙(*6)、西垣 泰幸(*7)、福田 慎一(*8) 張 愛平(*9)
本書は、生命保険に関する諸事象を経済学的に分析、評価したものである。「日本人の保険好き」 はよく話題にされるが、その実態についてはよく解明されていない。日本人の生命保険需要はなぜ高 いのだろうか。我が国の生命保険会社の資産保有高も巨額になっている。生保会社の資産運用の実態 を解明することは生保会社の経営上のみならず、マクロ経済への影響も大きい。そして、生保会社の 数は二十数社と比較的少なく、産業組織論の立場からも生保を評価する必要がある。 本書は以上のような課題を中心において、生命保険の需要と資産の運用、生保会社の経営と産業組 織を経済学的に分析したものである。分析に際しては、経済理論と実証分析の調和を目指すとともに、 比較的厳格な手法を用いて生保の解明に努めた。 生命保険は「保険論」として商学、経営学の一分野として扱われてきたため、経済学的研究はさほ どみられなかった。しかも他の金融経済論、たとえば銀行を中心にした貸出市場、証券会社を中心に した資本市場等の分析に比して、やや目立たない存在であった。私たちは生命保険も立派な経済分析 の対象になりうると考え、本書で示されたような経済学的分析を試みた。それが成功しているかどう かは読者の判断に待つしかないが、本書を出発点として生命保険が本格的に経済分析の俎上にのるこ とを期待するものである。