郵政研究所研究叢書


第13号(日本評論社・1996.3.発行)

『No.20 ホワイトカラーの行動と選択−コミュニケーション・企業組織・オフィス立地』

日本評論社
編者 客員研究官  肥田野 登
著者 第一経営経済研究部


 本書は、ホワイトカラーの「コミュニケーション行動」を解明し、企業組織や、居住に対する選好から「オフィス立地」を分析することによって、高度情報社会のコミュニケーション・地域政策への知見を得ることを目的としている。
 本書では、その目的達成のために、まずホワイトカラーのコミュニケーション行動を東京とニューヨークのオフィスワーカーを対象に詳細に調査した。さらにその知見をもとにオフィスの立地分析を行った。特に個別企業の意思決定、それを取り巻く制度、ホワイトカラーのコミュニケーション行動といったこれまでとは異なるソフト面の要因について注目している。具体的には、ビジネスコミュニケーションを企業内と企業外に分け、その相互作用としてのオフィスの立地という視点を導入し、また、ホワイトカラーのコミュニケーション対象を居住地の人々や家族とのコミュニケーションまで広げて分析を行っている。
 本書の構成は、まず第1章でコミュニケーションという観点から、組織とホワイトカラーの関係、オフィス立地および居住選好の考え方を示した。その後は2部構成とし、第1部では、この考え方に基づきコミュニケーションの実態をビジネス、日米の雇用システムと行動、手段選択、手段選択行動と個人・組織の関係性および非ビジネス面といったように多角的に捉えて分析した。第2部では、これらから得た知見を基に、オフィス立地に注目し、今後の企業の本社の行方、組織の変化に伴うホワイトカラーの生活の変化について分析したのち、これらの結果を踏まえてコミュニケーション・地域政策への含意を述べた。さらに、本書で用いた選択モデルは必ずしも一般的な手法とはいえないことから、付論として「確率効用理論と選択モデル」についての概説を掲げた。
 本書は、これまで経営組織論、都市経済学、社会心理学などで個別になされてきたコミュニケーションに関する分析をホワイトカラーの行動と選択という点で捉えなおすという試みでもある。