郵政研究レビュー
(第8号 1998.7 発行)
『王朝モデルは成り立つか −マイクロデータによる分析−』
元特別研究官 麻生 良文
元研究官 神谷 佳孝
この研究ではアンケート調査を用いて遺産動機の種類や決定要因を探った。分析に用いた調査は1994年11月に行われた「家計における金融資産選択に関する調査 第4回(平成6年度)」(郵政研究所)である。分析の結果、以下の事柄が明らかになった。
1 利他主義的遺産動機や戦略的遺産動機を持つ家計は少ない。大半の人はライフサイクル的に行動している。
2 しかし、高齢者の資産の取崩しはほとんど観察されず、また個人の資産形成に占める相続の比重はきわめて高い。
3 高齢者の消費・貯蓄行動を説明する理論としては、寿命や病気の不確実性に備えるための予備的動機の貯蓄が重要であろう。
4 遺産動機と相続経験(及び予定)、持ち家の間には密接な関係がある。
5 遺産動機は資産保有高と正の相関を持っているが、所得とは関係がない。