(第5号 1994.3.発行)
特別研究官(東京工業大学教授) 肥田野 登 東京工業大学大学院 佐々木俊一既存のオフィス立地研究では、コミュニケーションを規定する要因をコスト面でしか捉えていないため、立地、コミュニケーションや、意思決定形態の相互作用をほとんど考慮してこなかった。そこで本研究では、管理者・従業員双方のオフィス立地―勤務形態に対する選好を立地都市・人事形態・勤務形態を要因とする非集計選択モデルにより推定し、都市規模といった要因以上に、人事異動・人事評価という人事形態が効用に影響を与えていることを明らかにした。また、個別の要因の分析から、社内でのコミュニケーション欲求度が低い勤務者は東京勤務を選好すること、本社勤務選好が人事評価の方法の影響を強く受けることを示した。
次に、オフィス立地―勤務形態選好と、コミュニケーションの手段選択のモデルを用いて、オフィス立地のシミュレーション分析を行った。その結果、人事形態を東京本社と地方支社で変化させることによって、支社オフィスの地方都市立地が可能となることを明らかにした。特に、従業員の選好を重視した場合、20万都市にも支社オフィスが立地することができることを示した。